皆さん、こんにちは。
今回は、前回の続き。
「移乗動作について ~ボディメカニクス的視点に基づく移乗動作~【実践編】」をお話しします。
はじめに、前回の【知識編】のおさらい。
「ボディメカニクス」とは、日本語では「身体力学」のことで、力学の原理を人の体に当てはめて考えることで、介護の労力を少なくするために、理にかなった動作をしましょう、ということです。
力学の基礎知識ですが、
・重力、重心
・支持基底面と安定性:(安定=倒れにくい、不安定=動かしやすい)
・力(大きさ・向き・かける位置と距離)
・てこの原理
があります。 *詳細は、先週のブログをご覧ください。
前回の【知識編】をふまえて、
①支持基底面を広くとり、
②重心を低くする
③患者と介助者の重心を近づける
④重心の移動をスムーズに
⑤小さく、まとめる(摩擦を減らす)
⑥てこの原理を応用する
⑦大きな筋群を利用する
まず、介助者は、前後左右に足幅を広げ、支持基底面を広くして安定した姿勢を取ります。
また、重心を低くすると安定し、力を出しやすいため、腰を落として膝を曲げます。
次に、患者さんと介助者の重心を近づけます。
近づけることで介助しやすくなり、患者さんと介助者の重心が近いことで、移動がしやすく、余分な力がいらなくなります。
次に、重心の移動についてです。
介助者は、移動方向に自分の足先を向けておき、介助者の重心移動で患者を動かします。
このとき自分の体をひねらないようにします。
そして、患者さんを持ち上げずに、できるだけ水平に滑らせるように移動します。
介助者は患者さんの動きと力の方向にあわせることも大切です。
「車イスに移りますね」などと声掛けして協力動作をしてもらうようにします。
患者さんの体を小さくまとめることも大切です。
患者さんの手を胸元で組んでもらったり、膝を曲げたりして四肢をなるべく体幹に近づけます。
小さくまとめると、ベッドとの接触面が減るため、摩擦が減少し、患者さんを動かしやすくなります。
てこの原理を応用します。
患者さんを持ち上げず、支点をつくることで、てこの原理が使え、小さな力で介助することができます。
最後に、介助者の体の負担を減らすために、介助の際はできるだけ大きな筋群を使うようにします。
大腿部、臀部などの大きな筋肉を使い、上腕だけなど、小さな筋に緊張を集中させないようにします。
以上が、移乗の際のボディメカニクスの7つの原則となります。
ボディメカニクスを活用することで、介助者と患者さん、双方の負担を減らしていきましょう!
[参考文献]
・小川鑛一・北村京子共著「介護のためのボディメカニクス」東京電機大学出版局
・田中義行監修「写真でわかる移乗・移動ケア」ナツメ社
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【注意】
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