源氏物語の男たち(13) 光源氏

2009-11-23 08:52:52 | 雑記帖
光源氏は物語の中心に居ながら、彼の個性がはっきり見えません。
彼を凝視するとその姿はどんどん透けていって、他の登場人物が浮き彫りになってくるのです。

源氏物語本編は雲隠の巻のあとも「紅梅「竹河」と続きます。
しかし、光源氏が登場しないうえに、宇治十条の登場人物である匂宮と薫がすでに青年として登場していることもあって、
私はこの二巻については宇治十条への橋渡し、プロローグとして位置づけています。

さて、光源氏はどんな男だったのか。
ええとですね、ビジュアルにイメージしようとするとマルサの女の監督:伊丹十三の姿が浮かんでまいります。
この記事をお読みのほとんどの方はご存じないでしょうが、伊丹十三監督がまだ俳優だった頃、民放のTVドラマで源氏物語が取り上げられました。
その時に光源氏を演じたのがこの人だったのです。

『源氏物語』(1965-66年、MBS、全26回、監修:市川崑、主演:伊丹十三)〈1966年度 アメリカ・エミー賞受賞〉
そうそう、これです。
市川崑監督の演出はとても洒落ていて、それでいて滑稽味のある仕上がりになっていました。
伊丹十三演じる光源氏は貴族というよりはエリートサラリーマンに似ていた。 課長 島耕作ぽい。
その後に光源氏を演じた沢田研二、東山紀之、天海祐希が持つ艶(つや)がないのが特徴でした。

市川崑監督は、源氏物語の主役は(光源氏ではなくて)各巻に登場する女性たちだと考えて、あのドラマの演出をしたのだと思います。
光源氏=物語の狂言回しですね。
だから伊丹源氏は舞台セットの中をせかせかと歩き回っていたのでしょう。

~~~~~~
「若菜(上・下)」については、光源氏が藤壺の宮と不義の子を設けた仕返し、あるいは因果応報として、
柏木と女三宮の密通により生まれた薫を我が子として育てなければならない悲哀を演出した巻だとされています。
まさにその通りでございますが、光源氏が主人公として登場したのは若菜の巻が最初でした。
それからもうひとりの主人公は紫の上ですね。

女三宮の登場により自分の存在意義を見失った紫の上は、若菜の巻の中で急速に憔悴してゆきます。
あの時代、上流貴族は家柄や資産を重視して縁組みをしていましたから、恋愛から正式な結婚に繋がることはほとんどなかったでしょう。
紫の上は正妻不在という環境での第一夫人であって、しょせんは愛人でした。
恋愛至上主義のお伽噺が(当時の)現実世界と歩調を合わせたのが若菜の巻でした。

女三宮は自分の意志で行動する女性に成長し、一方の紫の上はこの世への未練がなくなってどんどん昇華していきます。
光源氏は二人の女性から見放されたこと(出家、死)によって、ひとりこの世に取り残される主人公になりました。

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7 コメント

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全部見ています (mokuren)
2009-11-23 11:54:38
伊丹十三から 天海祐希まで・・

伊丹十三のは どこでいつ見たのだろうか・・
と今思い出しています その時の芸名と。
遠い昔のことなのに すごく心に残っています
市川崑監督だったからでしょうかね・・

デュエットさんの源氏物語 全部通して読ませていただきます
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Unknown (hiromi)
2009-11-23 12:00:06
沢田さんの源氏物語みています。
妖艶さと艶っぽさがあってよかったと思います。それにしても、沢田さん、自分のブログ見たりするのでしょうか。ブログを作れる皆さんがうらやましかったりして…11月と12月は
舞台でがんばっている!来年1月は、ワイルドワンズとバンドをくむそうですよ。
楽しみですね。
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☆木蓮さん (デュエット)
2009-11-26 01:52:04
伊丹一三でした。
途中から十三に変えたんですね。

あれが最初のビジュアル源氏だったので、基準になってしまったのかも。(笑)
紫の上は富士真奈美さんでした。
なかなかいい感じでしたよ。
六条御息所はもちろん岸田今日子です。

いつも読んで下ってありがとうございます。
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☆hiromiさん (デュエット)
2009-11-26 01:52:24
私は今のジュリーのほうが好きかもしれません。
若い頃はがんばりすぎで痛々しく感じました。

ジュリーの源氏物語は一部しか見ていないです。
流し目が良かったでしょう?(^^)
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源氏は (てぃーぽっと)
2009-11-27 11:24:09
こんにちは。ご無沙汰しました。

源氏はタイプじゃないです。口がうますぎて信用できない(笑)。
間違えてしまったときもすかさず「以前から好きだった」としゃあしゃあと言うし。。。

伊丹さんのはさすがに知りません。
でもかっこいい人でしたね。亡くなったときとてもショックでした。

加藤和彦さんが亡くなったのもとてもショックです。。。
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☆てぃーぽっとさん (デュエット)
2009-11-28 01:59:58
こちらこそご無沙汰しています。
12/30本番というプロジェクトの歯車をやっているため、徹夜するというほどでもないのですがそれなりに忙しくしています。

伊丹さんの源氏はかなりコミカルで・・・あれが源氏のベースになっている私はどうなんでしょうね。(笑)
源氏物語の中でどの男がいいかなぁ・・・と思うと、これは!というのがいません。
いい女はたくさんいるのにね。

加藤和彦さん。
ティーポットさんよりも年齢が近いこともあって、加藤さんの気持ちが分かるような気がします。
mixiの日記には書いたのですけれど、もし安井かずみさんが健在だったら、楽に生きられたと思うんですよ。
還暦過ぎというのは男性は難しい年齢のようです。
そこを精神的に乗り越えると今の時代ですから20年近くの穏やかな日が過ごせるのですが。
残念です。
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加藤和彦さん (てぃーぽっと)
2009-12-04 11:58:43
加藤さんのアルバムは何枚か持っています。いちばん好きなのは「それから先のことは」で、安井かずみさんと結婚した頃。
この後「あの頃マリーローランサン」などのソロアルバムを出していて、あまり知られていないのかも知れませんがこの時代の曲が私は大好きです。
加藤さんにとって安井さんと一緒に生きた時代がいちばん幸せだったのかも知れませんね。
また、すごい才能をもった人なので人より20年早く生きていたようにも思います。
時々テレビからコマーシャルなどで聞かれたあの独特な声が聞かれなくなって、とても寂しいです
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