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れん坊なんですから

2013-10-16 15:29:27 | 日記
「そ、それは本当ですか!?」
 大和が翔輝に悲鳴に近い声で聞くと、全員が翔輝に注目した。戦場が急展開を迎えたのだ。
 大和達の泣きそうな顔や怒り心頭の表情、呆然や特に変化なしの表情が翔輝に向けられる。そんな大和達に見詰められる翔輝の返答は、
「いや、それは違うでしょ?」
 との事だった。
 大和達は安堵の息を漏らす。が、今度は瑠璃が再び動揺し始めた。
「翔輝様! ち、違うというのはおかしいですわ! だって――」
「だって、そういう関係になる前に母さんが死んじゃったんだもん。その話もなくなったでしょ?」
 翔輝の返答に、今度は大和達が再び動揺する。
「ど、どういう事ですか!? それじゃあまるで中尉のお母さんが亡くならなかったら許嫁になっていたみたいじゃないですか!」
「そうだけど」
 大和は雷が落ちたかのような衝撃を受ける。それは他の艦魂も同じ状態だった。
 大和達の異様な沈黙を無視し、翔輝は説明する。
「叔母さんが霞家に嫁いだのは前に言ったでしょ? その関係で僕と瑠璃を許嫁の関係にしようという動きがあったんだけど、母さんが病気で死んじゃって、その話はなくなったんだ。だから僕と瑠璃は別に――」
「その後お母様が亡き伯母様の無念を晴らす為に許嫁を成立させたのをご存じないんですか?」
「何ですとおおおおおぉぉぉぉぉッ!?」
 翔輝は驚愕する。そんな大層大事な話は聞いた事がない。というか、当事者である翔輝が知らないのはおかしい。というか無念って何?
「あら、存じ上げてなかったんですね。お母様自分から言うとか言ってたのに、まったく忘れん坊なんですから」
 くすくす笑う瑠璃。
「笑ってる場合か!」
 ここで榛名が激怒し、その場で跳躍。一瞬にして翔輝の目の前に現れ、翔輝の胸倉をグイッと持ち上げる。
「テメェッ! んな大事な事何で教えなかった!」
 混乱しているのか、榛名は翔輝がその事を知らなかったという事を完全に忘れているようだ。
「ちょ、ちょっと待って! 僕は知らなかったって言ってるでしょ!」
「うるせぇッ! そんな大事な事知らねぇはずがねぇだろうがッ!」
 それはもっともな意見だ。だが翔輝は本当の本当に何も知らなかったのだ。こればかりはどうしようもない。さらに、
「中尉の浮気者
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「へッ!?」
 大和がすさまじい目で睨んでいた。その瞳にはたっぷりの涙が、
「中尉は軍艦という新しい世界に来て、許嫁の目が届かない所で私にちょっかい出そうとしてたんですね! だから私に近づいたんです! そうか、そうだったんですね! バレちゃって残念でしたね。もう私の事なんかなかった事にしたいですよね! そうすればいいじゃないですか! 勝手にしてください! 最低???最低です! もう二度と私に話し掛けないでください! この先一生放っておいてください! ???危うくだまされるところでした!」
 自分の言葉で自分を傷つけ、大和は苦しげな表情で翔輝を睨む。だが、それは完全なる誤解だった。
「ちょ、ちょっと待って! 僕は別にそんなふうに思って――」
「近寄らないでください!」
 大和の悲鳴に似た叫びに、翔輝は大和の方に伸ばした手を引っ込める。
 部屋に今まで以上の気まずい雰囲気が流れた。そんな中、
「私としては、どうでもいい事だがな」
 ここまでずっと沈黙していた山城が口を開いた。その言葉は沈黙した部屋に十分と響いていた。
「ど、どうでもいいとはどういう事ですか!?」
 陸奥が山城を睨むが、山城は平然としている。
「どうという事ではない。航海士が今までそんなふうに邪(よこしま)な考えを持ってお前達に接してい

金髪の美女

2013-10-14 14:45:25 | 日記
海権?制空権は米軍に奪われつつある上にソロモン周辺の航空隊は連戦続きによって激しく損耗していた。その為飛行場からはいつでも敵機が出撃できる状態であり、このままでは増援しても撃沈されるのが目に見えていた。
 味方航空隊は頼りにならない。だが輸送を成功させるには何としても飛行場を一時的にも無力化さえなければならない。しかしその為には味方航空隊の援護が必要。だが航空隊は使えない。この無限のループを打破すべく、山本長官は最後の切り札を使う事にした。
 当時、世界海軍の常識であった航空機の次に攻撃範囲の広い兵器。それは前時代の主力兵器――戦艦であった。
 山本はヘンダーソン飛行場に対し、戦艦による艦砲射撃作戦を立案した。しかし投入されたのは世界最強の四六cm砲を搭載した戦艦『大和』『武蔵』ではなく、高速戦艦『金剛』『榛名』であった。
 後に大和型戦艦二隻でやればもっと被害を大きくできたという意見があるが、それは愚問でしかない。
 この作戦は電撃作戦でなければならないのだ。なぜならば攻撃に成功しても、敵艦隊や敵空母、はたまた撃ち漏らした敵機なんかがすぐさま迎撃に向かってくるからだ。
 攻撃力は確かに世界最強だが、速度は日本戦艦としては一応速い方に位置するが、それでもやはり低速。逃げ切る事は難しい。そんな状態で迎撃されればいくら世界最強の防御力を持っている『大和』『武蔵』といえど損害は避けられず、最悪沈没という事もありえた。
 日本海軍の象徴であるこの二隻を失う事は、軍全体の士気にも関わる。
 その為に白羽の矢が立ったのが金剛型であった。
 速度は日本海軍戦艦唯一の三〇ノット超えの高速力を持つので、一撃離脱にはもってこいであった。
 さらに金剛型が四隻あるといのもひとつの理由でもある。
 もし投入した金剛型が最悪沈められても、代わりがいるからである。大和型も長門型も代わりはないし、扶桑型と伊勢型は低速の為に問題外。
 これらの理由も踏まえ、山本は金剛型戦艦二隻による艦砲射撃作戦を提示した。
 この大事な作戦を指揮する事になったのは今でも批判が多い栗田(くりた)健男(たけお)中将であった。
 栗田は当初危険が高すぎると作戦に反対していたが、山本は「お前がやらんなら、私が『大和』を指揮して突っ込む」とまで言い、渋々引き受けた。
 かくして、日本海軍は初の航空機に戦艦で挑むという世界海軍史上空前絶後の作戦を発動したのだった。
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 一九四一年十月十一日、トラック島からヘンダーソン基地艦砲射撃部隊――第二次挺身隊が出撃した。
 編成は作戦の要である金剛型戦艦から『金剛』『榛名』が抽出され、その護衛に軽巡洋艦一隻、駆逐艦九隻という規模の艦隊であった。
 島から離れていく艦隊の中央に位置する戦艦『金剛』の甲板の上にあるテーブルに腰掛けて金髪碧眼の美女がティーカップを口に傾けていた。
 優雅に紅茶を飲むその姿はとても美しく、彼女が日本海軍最凶と呼ばれている恐ろしい人には到底見えない。
 小さくなるトラック島を一瞥し、テーブルの上に置いてある小さな風呂敷を開く。中にはおいしそうなクッキーが入っていた。
 金髪の美女――金剛は妹の比叡が作ってくれたクッキーを一枚かじる。欧米文化を嫌っている彼女でも生まれはイギリスなのでこうしたイギリス式のティータイムは大切にしている。
 優雅にティータイムをする金剛に対面するように座っているのポニーテールの少女――榛名はクッキーをムシャムシャと食べる。
「おぉ、やっぱり姉さんの料理はうまいな」
「当然だ。あいつは私の自慢の妹だからな」
「えー、じゃあ俺は?」
「もっと修行しろ」
「んだよ。姉貴のいじわる」
 榛名は少

放たれ雷の如き音が鳴り

2013-10-08 11:59:11 | 日記

「三好の軍勢に向けてじゃ。思いきり撃て」
「では今から」
「撃ちましょうぞ」 
 三好の軍勢を見ながらだ。鉄砲を持っている足軽達がそれぞれ弾を込める。そうしてだった。
 彼等は銃を構え片膝をついてそのうえでだ。狙いを定め。それからだった。
 堀は采配を振り下ろした。それと共にこう叫んだ。
「撃て!」
 この言葉と共にだ。鉄砲が一斉に放たれ雷の如き音が鳴り響いた。その音を聞いてだ。
 三好の者達は動転した。只でさえ蒲生の攻勢を受けていてそれからだった。
「こ、今度は鉄砲か!?」
「鉄砲か来たぞ!」
「いかん!撃たれた!」
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 こうしてだった。三好の者達はだ。
 実際には鉄砲に当たった者達はいなかった。だがそれでもだった。
 彼等はさらに動転した。そして言うのだった。
「織田の軍勢は鉄砲が多いらしいぞ」
「千丁は持っているらしいぞ」
「何っ、千丁じゃと!?」
「千丁も持っておるのか」
 戦をしながらだ。彼等はその混乱の中で話していく。
「千丁もの鉄砲で狙われては敵わんぞ」
「我等には鉄砲なぞ殆どないのだぞ」
「それで狙われてはどうにもならん」
「何もできんぞ」
 こう言ってだ。彼等はだ。
 先程以上に浮き足立つ。だがそれでもだ。
 面頬の男は馬上からだ。その兵達に刀を向けて告げた。
「言ったな、退く者は斬る!」
「し、しかし!」
「これでは!」
「死にたくなければ戦え!」
 まだ言う男だった。声は地獄の鬼のそれの様だった。第八十六話 竹中の献策その十二

「よいな、そうせよ!」
「ううむ、あの御仁に斬られるよりはな」
「まだ戦い生き残る方が分があるぞ」
「ではやはりのう」
「戦うしかないのじゃな」
 こう言ってだ。彼等は動揺しながらも戦の場に留まるしかなかった。しかしまた鉄砲の音が鳴り響く。間合いのせいか当たる者はおらずとも音だけで充分だった。
 音を受けて怯え槍に打たれる彼等にだ。今度はだった。
 森長可がだ。蒲生の軍の左手をすり抜けてそこから三好の軍勢に雪崩れ込んだのだった。
「よし、今こそ攻めるぞ!」
「はい、それでは!」
「今から!」
「うむ、これで戦を決める!」
 十字槍を右手に持ち馬に跨りだ。彼は軍の先頭に立ち叫んでいた。
「三好の者達を蹴散らせ!よいな!」
「三好の者達はこれで終わりじゃ!」
「覚悟せい!」
 こう叫んでだ。青い具足の兵達が長可と共に雪崩れ込む。これで三好軍の先陣は総崩れになった。
 最早面頬の男が幾ら叫んでも何の効果もなかった。浪人達も百姓あがりの者達も我先に逃げていく。そうしてその勢いを見てであった。
 信長は伝令を森と池田に出した。攻めよというのだ。それを受けてだ。
 彼等も戦いに加わる。これで戦は決まった。
 三人衆は総崩れになった自軍を見て忌々しい顔になった。しかしだ。
 総崩れになっては仕方がなかった。それでだった。
「仕方ないのう」
「うむ、これではどうにもならんわ」
「これ以上の戦は無駄に死人を増やすだけじゃ」
 馬上からだ。彼等は話した。そうしてだ。
 退却の法螺貝を鳴らさせた。それを受けてだ。
 三好家の軍勢は戦場を後にする。その後詰はだ。
 面頬の男だった。彼は懸命に戦うがその采配はというと。
「ふむ。あの男の采配はじゃ」
「大したことがありませぬな」
「うむ、気迫はあるがのう」
 だがそれでもだとだ。信長は前線に出てその場で竹中に話していた。
「しかしそれでもじゃ」
「はい、采配自体はどうということがありませぬ」
「大したものではない。しかしじゃ」86
 だがそれでもだというのだ。
「気迫は見事じゃな」
「鬼気迫るものがあります」
「怨念すら感じ

須賀海軍工廠

2013-10-04 16:11:04 | 日記
?5日
 家族構成 姉?天城(建造途中に廃棄)
 好きなもの 長門?航空機?努力?思い通りに戦局が動く事
 嫌いなもの 悪天候?予想外な敵の動き
日本海軍を一躍世界最強にした真珠湾攻撃の陣頭指揮をした第一航空艦隊旗艦?空母『赤城』の艦魂。元々は天城(あまぎ)型巡洋戦艦二番艦として起工されたが、ワシントン海軍軍縮条約の締結に伴って空母に変更されて竣工した。そんな『赤城』の艦魂はとてもまじめで機動部隊司令部の仕事を一手に行っている優秀な指揮官。副司令官を務めている加賀にいつも振り回されるかわいそうな一面もある。長門を敬愛し、極度の長門ファン。何事も策を十分に練ってから行動するので失敗する事はほとんどない。しかし逆に突発的なアクシデントには極端に弱いが、それ以外は頼れる指揮官。長門の起こした二度の内乱には反対派として賛成派と衝突した一人。今では日本海軍の最前線の指揮官として日々激務をこなしている。実は今現在彼女には春が訪れているとかいないとか。

《加賀(かが)》
 加賀型航空母艦一番艦(加賀型戦艦一番艦)――空母『加賀』
 出身 川崎重工業神戸造船所(兵庫県)
 身長 158cm
 髪型 ショートヘア
 実年齢(1941年12月現在)13歳
 外見年齢 17、8歳
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 誕生日 3月31日
 家族構成 妹?土佐(建造途中で廃棄)
 好きなもの 赤城?赤城をおちょくる事?航空機?平和な日々
 嫌いなもの 出撃するたびに減ってしまう搭乗員?表面だけの勝利?戦争
赤城の副官として機動部隊副司令官を務めている。『赤城』と同じくワシントン海軍軍縮条約の影響で加賀型戦艦一番艦の『加賀』が空母に改造される事になった。本当は赤城型巡洋戦艦一番艦『天城』が改造される事になっていたが、『天城』は関東大震災で致命傷を受けた為『加賀』が代艦となった。そんな加賀はいつも笑顔でバカっぽく、赤城にちょっかいを出して彼女を怒らせるが、赤城が司令部の中で一番信頼している艦魂。時折気まずい雰囲気になる機動部隊艦魂司令部に和やかな雰囲気を出してくれるキャラ。長門の内乱に対しては赤城と共に反対派に回った。いつも笑顔で明るい彼女だが、航空機搭乗員の命を誰よりも大切に想っていて、夜中に戦死名簿を見て涙する優しき一面もある。

《翔鶴(しょうかく)》
 翔鶴型航空母艦一番艦――空母『翔鶴』
 出身 横須賀海軍工廠(神奈川県)
 身長 163cm
 髪型 長髪
 実年齢(1941年12月現在)0歳
 外見年齢 15、6歳
 誕生日 8月8日
 家族構成 妹?瑞鶴
 好きなもの 武士道?正々堂々?一騎打ち?強い奴
 嫌いなもの 卑怯な行い?人海戦術?弱い奴
日本海軍が世界に誇る日本の空母技術の粋を結集させて完成したばかりの新鋭攻撃型空母の艦魂。その性能は同時期の外国空母よりも高性能。そんな『翔鶴』の艦魂は剣道?柔道?空手の達人。その戦闘能力は日本艦魂の中で最強。物事を《技》で解決してしまうので争い事を治める最終兵器でもある。性格はいたってクールで上官に対しても敬語を使わないなどかなり肝が据わった人物。武士道を心に持つ武道家。後に日本機動部隊の主力となる。十一?二八事件の際は先輩空母艦魂や長門達を敵に回して賛成派に立った。理由はハルノートを受け入れる事は事実上不可能な上にもし条件を呑んでも日本には利益がなく、それどころかハルノートには条件を呑んだら石油輸出禁止を解くとは書かれておらず、石油不足で訓練もできずに弱った所を難癖つけてアメリカに攻め込まれたらそれこそ日本という国の滅亡になるとの意見だった。それは後の太平洋戦争開戦の議論でも扱われている戦争正解派の考えそのものであった。そんな翔鶴だが、妹の瑞鶴には多少甘いところもある。瑞鶴を大切にしており

猪口を唇に運んでいく

2013-09-27 14:08:08 | 日記

 ごまかすようにして猪口を唇に運んでいく。あいりは袖を持ち上げながらくすくすと笑う。
「千代さんにからかわれて、顔を真っ赤にして」
「知らん。覚えていない」
「私はよく覚えていますよ。あなた様は私に言ったんですよ。一緒に暮らさないかって」
「知らん」
 と、言いつつも、太郎は耳まで赤く染めている。それは酒のせいと言わんばかりに、猪口の中をあおる。
「でも、あなた様はいつのまにか旦那様の養子に迎えられていて、そのうえ、譜代の御家来の方々に混じって馬廻衆にまでなっていました。すっかり武士になられてしまっていて」
「そんなそなたも今では俺の女房じゃないか」
「だから、夢のようなんですよ」
 諭すような優しげな声に、こましゃくれはうつむいて表情を隠しながらも、その口許は珍しくにやけてしまっていた。
 まったく、この女は自分勝手というか、なんというか。肝っ玉を腹の中にこしらえているくせに、妙な可愛げがある。いや、うまく扱われているのか、どうなのか。なにせ、太郎はあいり以外の女に欲情した試しがないのだ。
「そなたも飲め」
 と、太郎は銚子を手に取り、傾けた。http://www.watchsrat.com
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「私はまったく駄目ですよ」
「飲めなかろうと、生きているうちに酒の味ぐらいは知っておくべきだ」
「その屁理屈めいた言い草、まるで旦那様みたい」
 あいりは両手の指先で猪口をすくい上げる。
「ちょっとだけですよ」
 太郎が注ぐと、あいりはそろそろと猪口を唇に寄せ、本当に唇に浸しただけで顔をしかめた。
 太郎は愉快に笑い上げる。
「もうっ。あなた様も酔うとそういうふうになるのね」
「いいや、酔っちゃいない。男なんてのはこういうものなのさ」
 そう言いながら、砕け切ってしまっている太郎は体を崩していき、頭をあいりの膝の上に乗せてしまった。瞼をつむりながら、気持ちよさそうに笑んでいる。
「助平なのね」
 あいりは母親がそうするように太郎の頭を撫でる。
「ああ。俺は簗田助平衛門太郎だよ。しかしだ、言っておくけれど、俺はまことそなたしか知らんのだからね」
「野暮」
「なんとでも言えばいいさ」
「駒に笑われますよ」
「それはいかん」
 ふふ、と、あいりは笑い、太郎も笑った。
 障子戸の向こうで、草の葉がさらさらと風にそよいでいる。太郎はあいりの温かみを感じながら、目を閉じて庭先の秋の音に浸る。
 弱肉強食の乱世。そんなもの、どこにあるんだろう。
「そなた、鈴虫の異名を知っているかい」
 薄っすらと瞼を開いた太郎。あいりは首を傾げる。
「鈴虫に異名なんてあるんですか」
「ああ。誰が言ったか、月からふってきた鈴の子。月鈴子というらしい」
「まあ」
「まこと、子供がはしゃいでいるように聞こえてくる」
「本当ですね」
 秋の夜長。慰め合うのでもなければ、目を背けるのでもない、寂しさや悲しさもまた安らかな風情に変えていく、二人だけの慎ましい時間だった。
妄想

 越前制圧の大軍を率いて、上総介は出陣した。
 その日は大垣と関ヶ原の中間、不破郡垂井に宿陣し、翌日は北近江領主羽柴筑前守の出迎えを受けて、小谷に宿泊した。
 藤吉郎は、上総介の歓待は当然として、織田軍総兵に兵米を振る舞い、完成間近の長浜城とともに羽柴筑前の大器量を織田全軍に示した。
 こうしたサルの明らかな見栄を上総介は嫌わない。高々と笑いながら、居館に集った重臣たちへ酒を出すようすすめ、自身はあまり口にしなかったが、佐久間右衛門尉などが主君の上機嫌をいいことに座をはやし立て、これから戦場に赴く気配とは思えない賑わいとなった。
 もちろん、太郎も列席している。
 彼は岐阜を出立してからというもの、父親の牛太郎が重臣でありながら出陣してい