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【現代思想とジャーナリスト精神】

感慨深い吉野源太郎氏の対談


                 櫻井 智志


 小学校四年の時に読んだ『君たちはどういきるか』。私にとり生涯もっとも感銘した愛読書である。吉野源三郎氏は、寡作で自らは編集者に徹した。吉野氏の著作はほとんど読んだ。

 氏のご子息が「吉野源太郎」氏であることは知っていたが、「文藝春秋」三月号ではじめて肉声に接する思いがした。貴重な機会を得ることができた。御尊父が吉野源太郎氏に遺した教え。


「記者に大事なのは、敵の言葉で語ることだ」。ご子息はこれを「批判する相手の言葉を使って客観的な真実の所在を語り、社会の問題点をえぐるような記事を書けという意味だと理解」なされた。

 私は今まで読売・朝日・毎日・東京の各新聞を購読してきたが、日本経済新聞を購読した事がなく、スタンドでたまに購読したに過ぎない。いわば岩波書店とは対極の日経新聞論説委員としてご活躍されていたのだ。遺訓をしっかりと自らのものとし たご子息の生き方も見事なものだ。

 池上彰氏も第一級のジャーナリストである。池上氏を相手として行われた対談は、吉野源三郎の生涯を見事に浮き彫りにしている。

 陸軍少尉の吉野源三郎氏は治安維持法違反で投獄され、厳しい軍事法廷に立たされる。その逸話も、吉野氏の人物像を明らかにしていて感銘深い。拷問で仲間を裏切りそうなことを危惧し自死を試みる。一命を救った軍医は、人格者で未来を見据え生きる希望を取り戻させる。

人間到たる処青山有り。




写真:毎日新聞社の吉野源三郎氏写真

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