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【現代思想とジャーナリスト精神】

【孫崎享のつぶやき】2023-05-26 07:09

青灯社原稿;考える視点:レーガンのゴルバチョフへの問い「地球が火星人の侵攻を受けたら、ソ連とアメリカはどう対応するか」、このエピソード、スミソニアン・マガジンが2015年に繰り返す。何故?今日のウクライナ戦争のそもそものスタートは2014年。



レーガンのゴルバチョフへの問い「地球が火星人の侵攻を受けたら、ソ連とアメリカはどう対応するか

2009年4月24日クリスチャン・サイエンスモニター紙は「レーガンとゴルバチョフはUFOと戦うことに合意(Reagan and Gorbachev agreed to fight UFOs)」という記事を掲載し、その中でゴルバチョフの次の言葉を紹介している。

「(ジュネーブ会談の際、二人のリーダーが会談の場所から席を外し近くの小屋に向かって歩いた。その時)レーガンが、突然、自分に“米国が宇宙からの誰かに突然攻撃されたら貴方はどうするか。貴方は私を助けるか”と問うたので、自分(ゴルバチョフ)は“(自分が助けることに)何の疑問もない”と答えた。そしてレーガンは“われわれも(そう)するよ”と述べた。」

素晴らしい会話と思う。対立はある。しかし対立よりもっと重要な問題で協力しあうことを確認しあったのだ。それは「平和を維持する事、互いに核兵器を使わない事」であったのであろう。レーガンは大統領として名優であったが、どこかに脚本家がいた。

この問いは2015年になっても繰り返されている。スミソニアン・マガジンが「レーガンとゴルバチョフが宇宙人の攻撃の時には冷戦を一時中断に合意」(Reagan and Gorbachev Agreed to Pause the Cold War in Case of an Alien Invasion Reagan and Gorbachev Agreed to Pause the Cold War in Case of an Alien Invasionと報じた。

宇宙人との闘いでなくてもよい。戦争をするよりは協力することの価値は必ず存在する。
今から顧みると、2015年スミソニアン・マガジンがこれを報じたのは意義がある。2014年ウクライナで「マイダン革命」が起こる。これを契機にウクライナの中立的な政権が、反露、親西欧路線を出し、米国政府が支援した。今日のウクライナ戦争の源流ともいえる。

2014年キッシンジャーは下記の警告をしている。

・ウクライナは西側に参加するか東側に参加するかの決戦場とされてきた。

・ウクライナが生き残り繫栄するとすれば、いずれかに対峙し、いずれかのサイドにつく前哨になるべきではない。それは両者のブリッジとして機能すべきである。

・ロシアにとってウクライナは決して単なる外国ではない。ロシアの歴史はキエフ大公国(Kievan-Rus)で始まる。ロシアの宗教はそこから拡大。ウクライナは何世紀もロシアの一部。ソルゼニーツェン等もウクライナは、露の歴史、そして露の一部とみなしている。

・ウクライナ人は複雑な歴史を持ち、多国語的構成を持つ国に住む。西部は1939年にソ連に組み入れられた。
西部は大部分カトリックで東部はロシア正教。西部は大部分ウクライナ語を話し、東部は大部分ロシア語。ウクライナの一方が他方を支配しようとすると内乱か分裂になる。

・ウクライナは独立し23年である。それ以前は14世紀から何らかの外国支配。ウクライナ人が妥協の技術、更には歴史的視野を学んでこなかったとしても驚きではない。

・ロシアは自分を孤立化する事なしに軍事的解決を課すことはできない。

・ウクライナは経済、及び政治的同盟を選ぶ権利を持つべきだ。だがウクライナはNATOに参加すべきではない。

スミソニアン・マガジンが「レーガンとゴルバチョフが宇宙人の攻撃の時には冷戦を一時中断に合意」の記事は偶然、2009年の史実を思い出して書いたのではないだろう。
筆者は今日の「ウクライナ戦争」のきな臭さをキッシンジャーと同じくかぎ取っていたのだ。その時期に「米ロの協調が重要でないですか」を間接的に主張する論文となっている。


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