寺子屋ぶろぐ

日記から身近な法律問題の解説まで。

自筆証書遺言の身だしなみ③(思いを遺す)

2010年04月22日 | 自筆証書遺言
遺言書と聞いて最初に思い浮かぶのは、“遺産の相続”ではないでしょうか。

しかし、遺言に関する本を読むと、必ずしもそれのみではない事に気づかされます。

つまり、遺言書に記載できる事は、財産に限りません。
自分のこれまでの人生で経験してきた事や次世代に伝えたいメッセージ等を形にする手段としても使えます。

この部分は、“付言事項”と言われます。
具体的には、財産に関する記載の後に書かれる事が多いです。
この付言事項には、いろいろな思いを記載して構いません。

したがって、前回、遺言の内容を相続人の方々と共有した方が良いと記載しましたが、仮にそれが難しいのであれば、付言事項を活用する事をお勧めします。

例えば…。

付言事項

私は、これまで生きてきた証を遺産という形で君たちに残せた事で、自分なりに責任は果たせたと思っている。
しかし、私は、君たちと共に多くの時間を過ごせた事に、それ以上の喜びを感じている。そして、これから先、君たち一人ひとりの胸の中で生き続ける事が出来ることをとても幸せに思う。
君たちが、つらい時や苦しい時、必ず側に寄り添っている。
だから、どんな事があっても、自分を信じて頑張ってほしい。
永い間、ありがとう。

…ちょっとクサイですね。

財産と絡めて描く事も有用だと思います。
どうしてその様に分配しようと思ったのかという理由の記載です。

付言事項

私はこれまで、あまり家庭を顧みずに生きてきた。
自分の会社を切り盛りするのに必死だった。
しかし、幸せだった。
その様に生きられたのも、妻である○○のお陰だと、深く感謝している。
君はどんな時でも、家族に明るい笑顔を振りまいてくれた。
その笑顔に、私はどれだけ助けられただろう。
君に遺したもので、君のこれからの人生を楽しんで欲しい。
面と向かっては言えなかったが、ありがとう。
子どもたちよ。多くの財産を長男である△△に遺した事に不満があるかも知れない。しかし、△△には会社を継ぐ者として背負うべき責任がある。それは、従業員の生活を守る責任はもちろん、経営者として社会的に背負うべき重いものだ。
だから、理解してほしい。
皆が、これまでと同じように健やかに過ごせる事を祈っている。

どうでしょうか。
付言事項に記載する内容は、自由です。
思いをきちんと伝えるために活用してみませんか。

…「自筆証書遺言の身だしなみ④-1(遺言したほうが…)」につづく。

2 コメント

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Unknown (那須の温もり屋)
2010-04-22 20:15:06
なかなか泣かせますね。
大いに参考になります。「付言事項」ネ!
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那須の温もり屋さんへ。 (寺子屋)
2010-04-23 23:08:25
コメント有難うございます。
無い知恵を絞って考えてみました。
付言事項は、結構、重要だと思います。
照れ臭い位が丁度いいかも知れませんね。
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