チンギスハーンの染色体 2008-05-07 | Weblog なによりも驚かされるのは、現在、チンギスハーンの染色体を受けついでいる男性の数である。サンプルが採取された十六の地域で、その染色体の数は平均して全男性の八パーセントから見つかっている。その割合を全地域に適用すれば、いまチンギスハーンの染色体をからだに秘めている男性の数は、千六百万にものぼることになる。 「アダムの呪い」 ブライアント・サイクス
前提の数が多い情報素 2008-03-20 | Weblog そして一つの学習項目の理解は, その学習項目に含まれるすべての情報素を誤りなく理解したときに初めて達成されるとする直列モデルを提案し, このモデルに基づいて知識の複雑さと学習の困難さとを定量的に関連づける. 次にC言語用の教材を用いた学習実験によって提案モデルを検証し, その妥当性を示す. また実験結果から, 前提の数が多い情報素が数多く存在するほど埋解が困難になることを示す. http://ci.nii.ac.jp/naid/110003227169/ 例題中心学習における教材の知識構造の複雑さと理解の困難さとの関係 桑原恒夫 NTTアクセス網研究所
二月の十四日 2008-02-15 | Weblog 「あんた、二月の十四日はどうしたの。嘘つき。ずいぶん待ったわよ。もうあんたの言うことなんか、あてにしないからいい。」 二月の十四日は鳥追い祭がある。雪国らしい子供の年中行事である。 ---川端康成 「雪国」
女ばう達 2008-01-08 | Weblog 女ばう達、さぶらふかぎりは参る。わかう、きたなげなき女ども五、六十ばかりも、はかまといふものいとしろうきせて、白き笠どもきせて、はぐろめ黒らかに、べにあかうけさうをさせて、つゞけたてたり。田あるじといふおきな、いとあやしききぬ、きやれたる大がささゝせて、ひもときてあしだはきたり。あやしきさましたるをんなども、くろかいねりきせて、はうにといふもの、むらはけけしやうして、それも、かささゝせてあしだはかせたり。 ---「嬉遊笑覧(三)」岩波文庫
地球離れの思想 2008-01-08 | Weblog そして、サイド3が新興のサイドとして建設される頃から (これ以後のサイド4、5、6の建設は加速度的にすすむわけだ)、二つのサイドから地球離れの思想が芽生えはじめたのである。 ---「機動戦士ガンダムI」 富野由悠季
国家を編集する 2008-01-06 | Weblog 「お菓子を包んでいます。これから電報を打たなければなりません」 なるほどなるほどと思う。「国家を編集するんだね」 「あなたは逃げ出さないでください」 糸を紡ぐようにもうひとつの論理による筋道立った会話が次つぎと繰り出されていく。これは非常に重要な話なのだと理解でき納得できるのだ。 「合掌してください」 映画館の前だ。合掌するというのが映画を見ようということなのだとすぐに翻訳できる。ああ。この国のことばがわかりはじめたぞ。しかし映画館の中でやっているのは紙芝居なのだ。 「ことばはみんな商号だったようだね」 ---「ヨッパ谷への下降」 筒井康隆
女のサムライ 2007-12-03 | Weblog しかし、石岡瑛子の女性的な外見にだまされてはいけない。「20歳のとき、私の中には大望をいだいた女のサムライがいた」 と石岡は言う。 「今でもいるけど」 この内なるサムライのおかげで、石岡は世界的なデザイナーになれたのかもしれない。 ---「ニューズウィーク日本版」(2006.6.28)
秋の暮のことにて 2007-11-19 | Weblog 秋の暮のことにて木の葉は散り尽し山もあらわなり。向うの峯より何百とも知れぬ狼此方へ群れて走りくるを見て恐ろしさに堪えず、樹の梢に上りてありしに、その樹の下を夥(おびただ)しき足音して走り過ぎ北の方へ行けり。そのころより遠野郷には狼甚だ少なくなれりとのことなり。 ---「遠野物語」柳田国男
はじめが『ど』 2007-11-15 | Weblog 「ぼくは、はじめが『ど』で、終わりが『つ』のものを見つけたよ。そしてね、まん中に、『う』や『く』があるの。でも、それ以上はいえないや」 ---ヤンソン「ムーミン谷の彗星」
ミララ、ミーララ 2007-11-15 | Weblog ミララ、ミーララ、ムイ・フィフィ ワチャラ、ワーチャラ、ムイ・フィフィ ミララ、ミララ、ミララ、ミララ、ミララ、ムイ・フィフィ ワチャラ、ワーチャラ、ムイ・フィフィ 「ムイ・フィフィ」 (ライ・クーダー『チャヴェス・ラヴィーン』)
立体的な三目ならべ 2007-11-10 | Weblog 「ところで、”幼体超空間”というのはどういう意味ですか?」 「単なる報告書ですよ。”超空間”というのは、三次元よりも高次の空間を示す数学用語で――立体的な三目ならべみたいなものといえばいいんですかね。食性、行動、睡眠など、動物のすべての習性を表現するために、その動物を高次空間のなかに展開してしまうんです。古生物学者のなかには、動物の習性を環境的超空間でのできごとと呼ぶ者もいますよ。ですから”幼体超空間”というのは、恐竜の幼体の習性のことだと思ってください。ちょっとばかりきどった表現ですがね」 ---「ジュラシック・パーク」 クライトン/酒井昭伸訳
十四匹の猫 2007-11-07 | Weblog 十月十四日、最終攻撃が開始された。九百基の大砲が、市中に向けてたえまなく砲弾を打ちこんできた。夏家の人々は何日か前に大急ぎで掘っておいた防空壕に避難したが、夏先生だけは家を離れようとしなかった。先生は自室の窓際にあるカンに坐って、静かに仏様に祈っていた。あるとき、十四匹の猫が先生の座っている部屋に駆けこんできたことがある。「猫が隠れようとするのは、縁起の良い場所じゃ」と、先生はうれしそうに言った。先生の部屋には、一発の弾丸(たま)も飛んでこなかった。猫たちも、みな無事だった。 ---「ワイルド・スワン」ユン・チアン/土屋京子訳