悠々自適

日常の雑感をそれとなく

374 天皇陛下のお田植

2024-05-17 22:30:23 | 思うこと
天皇陛下が5月14日、皇居にある水田で恒例のお田植えをされました。先月、自ら種もみを蒔かれたウルチ米とモチ米の苗を合わせて20株植えられました。秋に収穫される米は、11月に皇居で行われる新嘗祭などで使われることになっています。

日本書紀に出て来る神話では、自らが高天原で稲作をされた天照大神が、天孫降臨をされて天皇家の始祖となられた孫の邇邇芸命(ににぎのみこと)に高天原で作った神聖な稲穂を授け、「人々の ”命の糧” として米を作りなさい」と命じられ、これが日本の稲作の始まりとされています。歴代天皇は自ら稲作をされ、第26代継体天皇は「天皇自ら耕作し、皇后自ら養蚕する詔(みことのり)」を出されています。

百人一首の天智天皇の歌「秋の田の かりほの庵の 苫をあらみ 我ころも手は 露にぬれつつ」は小学生の時に覚えた好きな歌ですが、なぜ天智天皇が田んぼの中の仮小屋にいるのか分かりませんでした。大和の国では、天皇自らが稲作をされた歴史を知った時、この歌の謎が解けました。天智天皇は稲刈りをされたのです。しかし残念ながら、皇室が盤石になって来ると天皇の稲作は行われなくなり、天皇が稲作をされたのは天智天皇までで、その再開は、農業振興などを目的にして行われるようになった昭和2年の昭和天皇の田植えと稲刈りを待たねばなりません。

我が国は神様自らが働かれ、その子孫である天皇も働かれると言う国であり、労働は尊いという国柄があります。そんな国は世界では珍しく、ほとんどの国では労働は下賤と考えられ、王侯貴族は労働をしないのが高貴であると考えられて来ました。ルイ14世が麦蒔きや麦刈りをしたとか、エリザベス女王が牛や羊の世話をしたと言う話は聞いた事がありません。

50年ぐらい前の話ですが、自動車部品が故障した時、設計課長が自動車の下に潜り込んで原因を調べました。それを見た台湾から来ていた自動車部品メーカーの研修生が驚いて、こう言いました。「現場で手を汚して調べるのは担当者で、課長は事務所で報告を受けるのではないですか」。日本では実態把握のため、現場現物主義が重要視されていますが、それだけではなく、労働を蔑視せず、労働は尊い物であり、上に立ってもこれを実践すべしとの考えが伝統となっています。天皇陛下のお田植えは日本国民に労働の大切さを分からせてくれる素晴らしい行事だと思います。

373 移動手段の便利さ

2024-05-05 22:15:11 | 思うこと
前回「車の便利さ」について書きましたが、家内との対話も書いたので原稿を家内に

見せました。すると家内から「赤穂浪士の江戸から赤穂への移動費用は人力と車では

雲泥の差があると書いてあるけど、どれぐらいの差になるの?」との質問がありました。


江戸-赤穂 620キロを25馬力の出力の車を使って時速40キロで走れば、半日ちょっとの時間で

ガソリン代は4000円と試算しましたが、人力の場合、25馬力相当の250人が引っ張っても

時速40キロは出ません。しかし、仮に出たとしたら、620キロ÷時速40キロ=15.5時間、

250人が引っ張る人件費がかかります。時給1500円なら、1500円×250人×15.5時間=581万円

の費用になります。


5年前に新潮新書の「忠臣蔵の決算書」が映画化されて人気を呼んだ時、江戸ー赤穂への早駕籠の

費用は出てなかったので、私なりの費用を試算してみたら次の様になりました。「忠臣蔵の決算書」

での浪士の討ち入り費用(大石内蔵助の決算資料ベース)は691両=8297万円となっていたので、1両

12万円、1文30円換算)で試算しました。


元禄時代の町駕籠は1里(4キロ)400文=1万2千円だったので、江戸―赤穂(620キロ)は15.5両、186万円

になります。前後4人先導1人の5人を要する早駕籠が徹夜で走るので普通の駕籠の3倍かかったとすれば、

赤穂への早駕籠代は46.5両、558万円になります。


5年前試算した江戸―赤穂の早駕籠代558万円と、今回試算した人力250人引っ張り移動費581万円が似た値に

なったのは、仮定条件に因る所が多いとは言え、面白いです。


JR普通電車で東京から赤穂に行く時間と料金を調べたら、東京始発:5時20分、赤穂着:16時5分、乗換6回、

乗車時間10.7時間、料金10010円でした。全国一日乗り放題5回の青春十八きっぷ12050円を使えば、たった

2400円で東京から赤穂に行けます。赤穂浪士早駕籠の使者は4日半何も食べず駕籠に揺られて死にそうになり

ましたが、電車の中は冷暖房完備で飲み食い自由。大石内蔵助がこの事を知ったら腰を抜かすだろうと思います。