ああ風邪っぽい。と思っていたらノロウィルスらしい。「気持ちが悪い」と胃の辺りを押さえる夢を見ていたら、きたきたきたきた、突発的な嘔吐感。感、で治まらなかった。そこから先、あんまり眠った感じがしない。
風邪といったらあれですよ、早めに布団に入って、で、寝転んでも手元が明るいようにスタンドの角度を調節して、(必要ならば延長コードをひっぱりだして、)万全の大勢で、本!ですよ。
というわけで読んだメモ。
2月13日
川は静かに流れ/ジョン・ハート、東野さやか=訳
カバーデザイン/水戸部功 ハヤカワ・ミステリ文庫HM331-2
2009年2月15日発行 2009年3月25日3刷 早川書房 576p
2008年度アメリカ探偵作家クラブ賞最優秀長篇賞受賞、というのはあまり気にせず読んだ。チャイルド44が面白かったので、思い切って買って読んでみよう海外作家ミステリーシリーズ第2弾。普段は図書館で借りてます。
過去の事件以来、父親に勘当され、相続するはずだった農地もほぼ放棄させられる形で故郷を去ったアダム。再びその地に立ったとき、おぞましい事件が起こる。美しい幼馴染、義母との確執、父との対立。別れたままの恋人は警察官。発電所の建設をめぐり対立する人々、ただ川だけが変わらずにそこに流れている。
いわゆるミステリーなのだが、あまり推理がどうのという観点では読まなかった。なので推理小説としてどうかというのは正直どうでもいい(というと乱暴か?)。なにより感じたのは、スケールが違いすぎると言うこと。日本で言うなら北海道か?自分の敷地内に広大な農地が広がってたり、かつて先住民が殺されて投げ込まれた谷があったり。土地開発をめぐる騒動も、動くケタが違う。広い。広すぎる。いや日本が小さすぎるのか。故に田舎の度合いも半端ではないが。
2月14日
ダフニスとクロエー/ロンゴス作、松平千秋 訳
岩波文庫 32-112-1
1987年3月16日 第1刷発行 株式会社岩波書店 211p
いきなり何故?という古典。2世紀末~3世紀初め頃のギリシアで書かれたとされる物語。古典にもほどがある!のだが、先日聞いたアンドレ・プレヴィンのCDを探したとき、Rapsodie Espagnoleが収録されているのが、同じくラヴェルのDaphnis Et Chloeしか見当たらなかったから、である。
そういや、ダフニスとクロエはタイトルしか知らないなぁと思ったので探してみると、もう古すぎて古書扱い。しかも純愛ものときている。
どちらも高貴な身分と思しき装束と品物と共に野に捨て置かれたみなしご、山羊に乳を貰っていたところを拾われた二人。山羊を飼って仲良く暮らす幼馴染は、人も少なく穏やかで平和なギリシアの島で暮らす。やがて二人は美少年(ダフニス)・美少女(クロエ)に成長する。互いへ恋心を寄せる男女は多かったが、二人はピュアすぎて、他人が自分たちにどんな気持ちをよせどんな事をしたいと望んでいるかもわからない。(ちなみにダフニスは男に言い寄られたりもするが全くの鈍ちんである)
あんまりにピュアすぎて、キスを覚え抱き合う事を覚えても、二人で横になってそこから先どうしたらよいかも判らない。そんなダフニスに横恋慕する人妻が思い余って「人間の男と女の愛し合い方」を教えると、クロエともしてみようと喜ぶが、「私は人妻だから大丈夫だけど、クロエは痛がったり血を流したりするかもしれない」と告げられると、「クロエが嫌がるようなことはできないし血が流れるなんて!」と怖気づいて、自分たちはそんな事しなくてもこのままでいい、と思いなおしてしまったり。
なんて、今時想像もできないぐらいのピュアっぷり。いっそすがすがしい。時々はこういうのを読まないとダメだなぁとむしろ思う。
豆知識。
牛はよく泳ぐ。実は泳ぎが達者である。牛の渡し、という意味がボスポロス bosporos。ボスフォラス Bosphoros海峡の語源らしい。綴りのちょっとした違いで「牛の渡し」が「牛を渡す」や「牛が渡る」になってしまったりする、と。Ox=牛、 ford=(浅瀬を)渡る、で、Oxfordも同じとか。なるほど。
2月16日
青い目の犬/ガルシア=マルケス、井上義一 訳
1990年10月25日 第1刷発行 1990年12月3日 第2刷 発行
株式会社福武書店 160p
マルケスの短編集。壁、床、いたるところに「青い目の犬」と書き散らさずにはいられない女。死んだ自分を感じ続け、死に逝く自分を感じ続け、棺の中で腐敗する自分を感じ続ける男。部屋の隅で鳴き続けるコオロギ。死と幻想の匂いがまとわりつく短編集。
2月16日
喋る馬 柴田元幸翻訳叢書/バーナード・マラマッド
カバー装画/手リサ ブックデザイン/緑川晶
2009年10月14日 第1刷発行
株式会社スイッチ・パブリッシング
柴田元幸ブランドを冠するだけで、一体どれだけ売れるのか。そう思わずにはいられない。実際、図書館でもずっと予約待ち状態だった。かく言う私も柴田モンキーマジックにすっかり「やられて」いる。こちらも短編集。いたるところに亡命ユダヤ人とそれをとりまく人々がちりばめられている。作者は 1914年にユダヤ系ロシア移民の子として生まれている。なるほど。
そして1952年、「ナチュラル」で作家デビュー。あれ?と思ったら、あのロバート・レッドフォード主演の映画「ナチュラル」の原作者だった。早川書房版では「奇跡のルーキー」で発刊されていた。おお。レッドフォードは「コンドル」で初めて出会って以来、「ナチュラル」が2本目だった気がする。漁るように彼が出ている映画を見た。やっぱり、思わぬものが思わぬところで繋がっている。
この短編集も不思議で、ちょっとイヤな気分になって、そしてニヤリとするような話が詰まっている。タイトルに選ばれている「喋る馬」は最たるもの。サーカスで主人と組んで、気付けばアブラモウィッツは「喋る馬」として舞台に立っていた。いつから?どうして?自分は馬なのか、人間なのか。人間の思考を持ち、人のように喋る馬。
このスイッチ・パブリッシングの翻訳小説シリーズでは、最近文芸誌でも流行の和文フォントを使っている。正直私はあまり好みではないのだが、デザイン誌でもよくとりあげられていて、こうして手に取る単行本でも増えてきている。なかなか美しい(且つ好みにあう)書体というのには出会えない。 美しいけれども癖があったり、ちょっと好みじゃなかったり。でも、こうして読んでいるとそれなりに違和感無くなってきたり。
本日深夜、NHK「完テツ女」。徹夜で働く女性を追うドキュメントらしい。明日は私も貫テツの日(予定)だよ!
風邪といったらあれですよ、早めに布団に入って、で、寝転んでも手元が明るいようにスタンドの角度を調節して、(必要ならば延長コードをひっぱりだして、)万全の大勢で、本!ですよ。
というわけで読んだメモ。
2月13日
川は静かに流れ/ジョン・ハート、東野さやか=訳
カバーデザイン/水戸部功 ハヤカワ・ミステリ文庫HM331-2
2009年2月15日発行 2009年3月25日3刷 早川書房 576p
2008年度アメリカ探偵作家クラブ賞最優秀長篇賞受賞、というのはあまり気にせず読んだ。チャイルド44が面白かったので、思い切って買って読んでみよう海外作家ミステリーシリーズ第2弾。普段は図書館で借りてます。
過去の事件以来、父親に勘当され、相続するはずだった農地もほぼ放棄させられる形で故郷を去ったアダム。再びその地に立ったとき、おぞましい事件が起こる。美しい幼馴染、義母との確執、父との対立。別れたままの恋人は警察官。発電所の建設をめぐり対立する人々、ただ川だけが変わらずにそこに流れている。
いわゆるミステリーなのだが、あまり推理がどうのという観点では読まなかった。なので推理小説としてどうかというのは正直どうでもいい(というと乱暴か?)。なにより感じたのは、スケールが違いすぎると言うこと。日本で言うなら北海道か?自分の敷地内に広大な農地が広がってたり、かつて先住民が殺されて投げ込まれた谷があったり。土地開発をめぐる騒動も、動くケタが違う。広い。広すぎる。いや日本が小さすぎるのか。故に田舎の度合いも半端ではないが。
2月14日
ダフニスとクロエー/ロンゴス作、松平千秋 訳
岩波文庫 32-112-1
1987年3月16日 第1刷発行 株式会社岩波書店 211p
いきなり何故?という古典。2世紀末~3世紀初め頃のギリシアで書かれたとされる物語。古典にもほどがある!のだが、先日聞いたアンドレ・プレヴィンのCDを探したとき、Rapsodie Espagnoleが収録されているのが、同じくラヴェルのDaphnis Et Chloeしか見当たらなかったから、である。
そういや、ダフニスとクロエはタイトルしか知らないなぁと思ったので探してみると、もう古すぎて古書扱い。しかも純愛ものときている。
どちらも高貴な身分と思しき装束と品物と共に野に捨て置かれたみなしご、山羊に乳を貰っていたところを拾われた二人。山羊を飼って仲良く暮らす幼馴染は、人も少なく穏やかで平和なギリシアの島で暮らす。やがて二人は美少年(ダフニス)・美少女(クロエ)に成長する。互いへ恋心を寄せる男女は多かったが、二人はピュアすぎて、他人が自分たちにどんな気持ちをよせどんな事をしたいと望んでいるかもわからない。(ちなみにダフニスは男に言い寄られたりもするが全くの鈍ちんである)
あんまりにピュアすぎて、キスを覚え抱き合う事を覚えても、二人で横になってそこから先どうしたらよいかも判らない。そんなダフニスに横恋慕する人妻が思い余って「人間の男と女の愛し合い方」を教えると、クロエともしてみようと喜ぶが、「私は人妻だから大丈夫だけど、クロエは痛がったり血を流したりするかもしれない」と告げられると、「クロエが嫌がるようなことはできないし血が流れるなんて!」と怖気づいて、自分たちはそんな事しなくてもこのままでいい、と思いなおしてしまったり。
なんて、今時想像もできないぐらいのピュアっぷり。いっそすがすがしい。時々はこういうのを読まないとダメだなぁとむしろ思う。
豆知識。
牛はよく泳ぐ。実は泳ぎが達者である。牛の渡し、という意味がボスポロス bosporos。ボスフォラス Bosphoros海峡の語源らしい。綴りのちょっとした違いで「牛の渡し」が「牛を渡す」や「牛が渡る」になってしまったりする、と。Ox=牛、 ford=(浅瀬を)渡る、で、Oxfordも同じとか。なるほど。
2月16日
青い目の犬/ガルシア=マルケス、井上義一 訳
1990年10月25日 第1刷発行 1990年12月3日 第2刷 発行
株式会社福武書店 160p
マルケスの短編集。壁、床、いたるところに「青い目の犬」と書き散らさずにはいられない女。死んだ自分を感じ続け、死に逝く自分を感じ続け、棺の中で腐敗する自分を感じ続ける男。部屋の隅で鳴き続けるコオロギ。死と幻想の匂いがまとわりつく短編集。
2月16日
喋る馬 柴田元幸翻訳叢書/バーナード・マラマッド
カバー装画/手リサ ブックデザイン/緑川晶
2009年10月14日 第1刷発行
株式会社スイッチ・パブリッシング
柴田元幸ブランドを冠するだけで、一体どれだけ売れるのか。そう思わずにはいられない。実際、図書館でもずっと予約待ち状態だった。かく言う私も柴田モンキーマジックにすっかり「やられて」いる。こちらも短編集。いたるところに亡命ユダヤ人とそれをとりまく人々がちりばめられている。作者は 1914年にユダヤ系ロシア移民の子として生まれている。なるほど。
そして1952年、「ナチュラル」で作家デビュー。あれ?と思ったら、あのロバート・レッドフォード主演の映画「ナチュラル」の原作者だった。早川書房版では「奇跡のルーキー」で発刊されていた。おお。レッドフォードは「コンドル」で初めて出会って以来、「ナチュラル」が2本目だった気がする。漁るように彼が出ている映画を見た。やっぱり、思わぬものが思わぬところで繋がっている。
この短編集も不思議で、ちょっとイヤな気分になって、そしてニヤリとするような話が詰まっている。タイトルに選ばれている「喋る馬」は最たるもの。サーカスで主人と組んで、気付けばアブラモウィッツは「喋る馬」として舞台に立っていた。いつから?どうして?自分は馬なのか、人間なのか。人間の思考を持ち、人のように喋る馬。
このスイッチ・パブリッシングの翻訳小説シリーズでは、最近文芸誌でも流行の和文フォントを使っている。正直私はあまり好みではないのだが、デザイン誌でもよくとりあげられていて、こうして手に取る単行本でも増えてきている。なかなか美しい(且つ好みにあう)書体というのには出会えない。 美しいけれども癖があったり、ちょっと好みじゃなかったり。でも、こうして読んでいるとそれなりに違和感無くなってきたり。
本日深夜、NHK「完テツ女」。徹夜で働く女性を追うドキュメントらしい。明日は私も貫テツの日(予定)だよ!