卵巣腫瘍という病気、私が初めて漠然と名前を知ったのは、25年位前、
「サザンオールスターズの原由子が卵巣腫瘍で摘出手術」という記事を見たのが最初だった。
新しいところでは、2002年5月に、「宇多田ヒカルさんが卵巣腫瘍で手術を受け、その後の薬の副作用で体調が思わしくないので休養」というニュースが流れた。
卵巣は、アーモンド粒~親指の第一関節まで位の大きさの臓器で、右と左の両方に1個ずつあります。そして、実は卵巣は体のなかでもっとも腫瘍ができやすい臓器です。
卵巣腫瘍は大きく分けて、良性のことが多い「卵巣のう腫」と悪性の事が多い「充実性腫瘍」があります。卵巣の腫瘍のうち約9割が「卵巣のう腫」で残りの1割が充実性腫瘍です。
充実性腫瘍の代表例がいわゆる「卵巣がん」です。イメージとしては固いしこりのような感じです。症状としては小さいうちは無症状で、こぶしより大きくなると、固いしこりが下腹部にできたり、腰痛、下腹部痛、生理不順、場合によっては、腹水(おなかに水が溜まる事)が起こります。
卵巣のう腫は、卵巣の中に分泌液がたまって腫れてしまうもので、ぶよぶよした水風船みたいなものです。たまる液体の種類によって「皮様のう腫」「偽ムチンのう腫」「しょう液性のう腫」の3種類に分けられます。
1.皮様のう腫は溜まる液体の中に髪の毛や、歯、筋肉などが含まれています。
2.偽ムチンのう腫はねばねばした液体がたまるのう腫で、更年期の女性にできることが多いものです。
これは人間の体にできる腫瘍のなかでもっとも大きくなるもので、人の頭くらいの大きさになることもあります。
3.しょう液性のう腫は卵巣のう腫のなかで一番頻度が高く、水みたいなさらさらした液が袋の中にたまります。10代から30代の若い女性に最も多く見られます。
20年前に私は一度卵巣のう腫の開腹手術をしていますが、
3.の「しょう液性のう腫」でもずっと無症状で、見つかった時は赤ちゃんの頭大なので即刻手術と言われました
今回診断書などを見ると、上記のどれにも属さない「チョコレートのう腫」となっています。
これは、卵巣の中に子宮内膜症ができて、それが産生する月経血が子宮のなかにたまって袋状になったものです。チョコレートのう腫の場合、原因が子宮内膜症なので、普通の卵巣のう腫に見られないようなひどい月経痛がでたりすることも多いようです。
私も、出産後すっきりさわやかだった月経痛が1年前位から再発し、毎回バファリンのお世話になる程でした。
症状が表れるのは、のう腫がこぶし程に大きくなってからです。のう腫が周囲の膀胱や尿管を圧迫すれば頻尿、腸が圧迫されれば便秘が起こります。月経時以外の腰痛、腹痛も起こることもあります。おなかがなんとなく膨らむ、不正出血がある、水っぽいおりものがある、という症状がでるひともいるようです。
私の場合は、月経痛以外に、お腹の張りと腰の鈍痛はいつもありました。
水状のおりものの量も確かに多かったとリュープリン治療中に確信しました。
(リュープリン治療中は殆どおりものがないので)
茎捻転(ケイネンテン)といって、のう腫の根元がねじれた場合は緊急事態です。かなりの激痛があり、吐き気、出血を伴い、感染を伴えば発熱します。まれにショックで意識不明になってしまうこともあるそうです。しかも、放置しておくと卵巣に血が行かなくなり、腐ってしまうので、すぐに緊急手術になってしいます。茎捻転はどのサイズののう腫でも起こりますが、ある程度以上の大きさ(5~7cm以上)になると起こりやすくなるそうです。
卵巣のう腫の診断は、径膣超音波(エコー)で大きさ・性状はすぐ診断できます。
腫れていることが分かれば、血液検査やCT、MRIなどで腫瘍が良性か悪性かを診断します。
一般的な治療方法は、のう腫が小さいうち経過観察。増大傾向のあるものについては、手術摘出が基本となるよう。大きいものであれば、茎捻転の可能性を考慮してすぐに手術となることが多い。根治はやはり手術のようです。
手術には、開腹手術と腹腔鏡による手術とがあります。
また、手術法には主に3つあって、病巣だけを摘出する「のう腫核出術」、病巣のある卵巣を摘出する「卵巣摘出術」、卵管と卵巣をまとめて摘出する「附属器摘出術」です。その時々の状況によって術式は選ばれます。
ちなみに卵巣は2つあるので、1個摘出しても、残った卵巣が正常に働けば問題はありません。(ただし、若いうちに卵巣を片方なくすと閉経が早まることはあります。)
次回は私が診断された「チョコレートのう腫」について、書こうと思います。