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シンボルの散歩道<9>

2008-07-30 12:07:10 | シンボルの散歩道
■花がシンボル

 ロンドンの花屋で「薔薇二輪6Pence、百合
三輪9Penceを買う。素敵に高いことなり。」
と、漱石が日記に書いたのが1901年5月4日の
 英国留学中のことです。
 明治男の漱石先生が、友人が来訪するとい
うので、部屋を飾ろうと花を買い、活けたと
思ったら何だかシャレているなぁ、格好いい
なぁと思ったことがあります。その友人とは
「味の素」の発見者池田菊苗氏のことです。
 
 その話を華道家や現代美術作家の集まりの
席で話題にしたら、明治の男性は花を活ける
のは当たり前だったし、嗜みだったと聞いて
ちょっと驚きました。
 婆娑羅大名と言われた佐々木道誉の観桜の
パフォーマンスは有名ですし、戦国の武将達
と花との結びつきなど、聞きかじった話も結
構あり、現代の日本の伝統文化の有り様まで
会話が広がりました。

 そんな会話の中「オフィスに花瓶ある?」
と質問され、「ないな~」と答えながら、な
ぜかちょっと気恥ずかしい気分になりました。
「オフィスに花があると、きっと雰囲気が変
わるよ」「一輪挿しを全員のデスクにおいた
らいいと思うよ」とか、そんな話が妙に刺激
的でした。

 その話を聞いた翌週からです。毎週月曜の
朝、花を買うのが習慣になり、もう一年半近
くになります。花屋が朝10時に開くのを待っ
て、いつも最初の客になります。出社して各
自の一輪挿しに活ける15分くらいの時間がま
た格別なのです。

 日本の伝統と言われる生け花を、未だ活け
たこともなかった自分がちょっと悔しく、か
といって一人習いに行くのも億劫でした。思
い立って友人の現代美術作家で華道家に講師
をお願いし、オフィスの仲間を募り、会議室
で「生け花初体験」を開催しました。
 そのことが、知人が主宰している企業研究
会にまで波及し、おじさんたちも熱心に「活
け花体験」。
 実践して初めて気がつくことって確かにあ
ります。何事もやってみるべし初体験です。

 昨今何かと語られる「もてなし」。この言
葉に含まれるシンボリックな行為のひとつが
「花」を活けることだったような気がします。
花に託したメッセージは時と場を得てその人
の心を確かに伝えることと思います。
 友人が来訪する時、どんな花を選ぼうか?
と悩んでみるのも一興かと思いますが、如何。
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