引き続き日本漢方臨床医会の動画配信から、
long-covid で一番多い訴えである疲労感・倦怠感を取り上げます。
当院は小児科ですが、
COVID-19罹患後、半年にわたり、
倦怠感、頭痛、咽頭痛が続いた患者さんを経験しました。
しかし西洋医学では、頭痛に解熱鎮痛剤を処方するくらいで、
対応ができないのが現状です。
以前から漢方薬を使用してきたわたしにとっては、
long-covid の諸症状に対する方剤が用意されているので、
治療薬に困ることがありません。
▢ COVID-19後遺症としての疲労感・倦怠感
・診断時から退院時まで:80%
・診断後3ヶ月:20%
・診断後6ヶ月:20%
▢ 筋痛性脳脊髄炎/慢性疲労症候群(ME/CFS)
・長期間疲労感が続き、全身の脱力、少し動いただけで寝込んでしまう(post-exertional malaise)、不眠、記憶障害、集中力障害など多彩な症状により、日常生活が送れなくなる。
・ブレインフォグ(集中力低下、記銘力低下、読字障害、処理能力低下)
・原因は不明だが、風邪症状に続いて起こることがあるので、ういるすかんせんが原因になると考えられている。
・治療法が確立していないため、治療に難渋する。
<参考>
▢ 新型コロナウイルス感染症と筋痛性脳脊髄炎/慢性疲労症候群(long-covid とME/CFS)
(NPO法人「筋痛性脳脊髄炎の会」)
▢ 疲労倦怠感の漢方治療
・気虚(気の不足)・血虚(血の不足)を補う(=補剤)
【気虚】
・根元の気が全身的に不足している状態。
・元気が出ない、気力がない、体がだるい、疲れやすい、食欲・意欲がない。
・日中の眠気(特に食後)
(方剤)人参湯、六君子湯、四君子湯、補中益気湯、小建中湯
【血虚】
・血液が栄養を運べなくなる
・爪がもろい、貧血、集中力低下
・こむら返り、過少月経
・皮膚のかさつき、白髪、脱毛。
(方剤)四物湯、芎帰膠艾湯
気虚+血虚 → 十全大補湯、人参養栄湯
気虚<血虚 → 大防風湯(痛みを目標)
▢ 三大補剤
【補中益気湯】気虚に対する補気
【十全大補湯】気血両虚に対する補気・補血
【人参養栄湯】十全大補湯のバリエーション:+遠志(中枢へ作用)+五味子(呼吸器に作用)
▢ long-covid における自律神経異常(腹部動悸)
・ブレインフォグの主座が視床下部のミクログリアとマスト細胞の相互の活性化により種々のサイトカインが放出され、認知機能の低下をもたらすという報告がある。
・さらに、長引く倦怠感で回復の道筋が見えないストレスで、交感神経の亢進状態が続く可能性もある。
・腹部動悸が著明であれば、まずは自律神経のバランスを整える。
(方剤)柴胡加竜骨牡蛎湯、桂枝加竜骨牡蛎湯
抑肝散、抑肝散加陳皮半夏