櫻井郁也ダンスブログ Dance and Art by Sakurai Ikuya/CROSS SECTION

◉新作ダンス公演2024年7/13〜14 ◉コンテンポラリーダンス、舞踏、オイリュトミー

言葉の相と(オイリュトミー断想)

2023-06-09 | ダンスノート(からだ、くらし)

いま進めている新作と直接の関係が起こるかどうかはまるでわからないが、ひとり稽古のなかで、尊敬するひとの小説を少し踊った。そしてその柔らかな響きと、その奥にあるシンとした涼しさをあらためて愉しんだ。

このひとの言葉にだいぶ長く親しんできたが、踊ることで少しでも読み進めようとすると、目で読んでもわからないことが、やはり味わえる。覚え呟くだけでも目読とは違ってくる。記憶し、声にだし、さらに踊る、となるともっと違ってくる。言葉というものは、やはり分厚い。そう思う。

言葉を考える、言葉を書く、言う、話す、語る。それぞれ言葉の味わいが違う。

自分自身のことでも、レッスンで出せる言葉と、このブログに直接書き込む言葉と、ひとりつけているノートに書く言葉と、ひとり稽古のなかで出てくる言葉と、それぞれやはり違う次元が広がっている。やはり言葉というものには、手によってこそ活かされてゆく側面や、息によってこそ活かされてゆく側面が、それぞれあるのだろうか。

書かれた言葉を目で読むのではなく声に出して読んでいるだけでも言葉の相は変わってゆくし、誰かが読んでくれたりすると、さらに言葉は広く深くなってゆく。

肉体の奥に隠されている言葉や、魂の内海にあそぶ言葉のない言葉をも、となれば、もっと広がってゆく。それぞれの次元の差異は、振り返ってみると非常に面白い。広がりの彼方に、深まりの底なき底に、何があるのか。

そういうことに敏感になったのは、やはり現代ダンスと並行してオイリュトミーをやってきたからなのかしらと、たまに思う。

オイリュトミーはきちんと聴くということから始まる舞踊だ。言語の音声や音楽の楽音をエネルギーと捉え、法則性を持った全身運動で可視化する。踊る、ということと、聴く、ということ、そして解析する、ということが、結び付き、アウフヘーベンされて、時空に刻印されてゆく。ひたすら聴くことから、感受してゆくことから、生まれてくるモーションやタイムやスペースがあるのだ。

自分の気持ちを他人に表すためのメソッドではなく、他人の気持ちを聴きとり味わおうとするためのメソッド、それを基盤に表象され変化変容してゆこうとする踊り。このオイリュトミー(Eu+Rhythmos/ῥυθμός)なるものを起草したR.シュタイナーは認識についての考えを極めた人だが、認識は革命に通じてゆくのかと連想させられるような凄みを、その思想はもっている。関わりつつ、世界の革命を謳う前に自己自身を革命すべきではないか、己の世界をこそ変え続け刷新してゆこうとすべきではないか、という思いも湧いた。シュタイナーの感性をまるごと反映しているのがこの舞踊方法と僕は思い、ダンスと並行してオイリュトミーを稽古し続けてきた。そしてこの踊りを通じて様々な人と出会った。もう40年経つから、僕のダンス作品ダンス公演ダンスレッスンにも、少しくらいは影響し始めていると嬉しいが、、、。

踊ることによって何かを主張するのではなく、踊ることによって何かを受容し理解しようとする。表現のための踊りでなく、受容のための踊り。これは非常に未来的な気がしてきたのである。幾分ヘーゲルくさいかもしれないが、相互受容への道筋を探る行為として踊りというものが古来あったのではないかなあと思うことも、あった。

心も体も澄まして言葉や音楽に触れそして揺振し、響きを心身の奥深くまで入れてゆこうとする。

踊りによって自己の内面を表出するだけではなく、踊ることによって他者が発する響きに参入し理解しようとする。響きの受容によって「ひと」を全身全霊で想像し認識しようとしてゆく。

未来において最も深刻に要請されるのは理解や認識であるのではないかという予感を、この踊りは孕んでいる。僕はそう思う。

自分を表現することも大切なのだが、自分の外のどこかに表れている何かを積極的に汲み取ろうとしたり、他者の声を積極的に感じ取ろうとしたりすることが、もっと大事になってくる未来というものが「やがて来る」という予感を僕はこの踊りを稽古するたび、抱く。抱きながら踊り、踊りながら、私たちの未来は理解をめぐる時代になるのではないか、ならざるを得ないのでは、、、、など、妄想する。

 

 

 

 

 

 

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コンテンポラリーダンス、舞踏、オイリュトミー

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