倒産回避コンサルタントからの救命ロープ

倒産回避コンサルタント・中逵努のブログです。
恩師村松謙一弁護士ご本人のブログではないことを予めご了解ください。

経営危機からの脱出法

2009年02月05日 | 企業再建について
コラムの著作権は村松弁護士本人に帰属します。
このブログ以外での引用等は固くお断りいたします。


日刊帝国ニュース 1999年11月29日
弁護士ウォッチング  弁護士 村松謙一

経営危機からの脱出方

アンテナを張り巡らしていながらも、それでも取引先の
倒産に遭遇してしまい、債権回収の努力をしても、
相当額の売掛金が焦げ付いてしまい、資金面から連鎖倒産の
危険にさらされた場合は、どのようにしてその危険を
回避するのか?

1)手形割引の買戻し要求対策
取引金融機関からの「割引手形の買戻し要求」に対しては、
前述した通りであり、(前項を参照されたい)本項では、
それ以外の対処方法を説明する。

2)預金の取り崩し
積立預金の引き出しや定期預金の解約をお願いしても、
金融機関が色々な理由をつけて応じてくれないと
あきらめ顔の経営者がなんと多いことか。

定期預金など担保に差し出していればいざしらず、
事実上の「にらみ預金、拘束預金」の額は、
独占禁止法上も違法として禁止されており、
ましてや、その預金が資金繰りに使えないために、
自己の振出手形の決済資金が不足して手形不渡り
倒産にてもなれば、当該拘束銀行の責任問題に
発展しよう。

加えて、銀行法第1条で規定される銀行の「公共性」
や中小企業に対する健全育成の使命など銀行法の
趣旨にも反し、権利濫用による不法行為の場合も
あろう。

従って、経営者としては、取引先の不慮の倒産
のため、資金繰りが予定に反して不足してしまった
事情、及びこのままでは手形不渡り、もしくは
信用不安が生じてしまう事情等を資料持参で
説明し、「預金の開放」を強く要求する必要が
ある。

毎月の積立協力預金等も事情を説明して一時停止し、
取り崩させていただくべきである。企業にとって、
銀行預金とは、まさに不慮の場合の資金繰りの
ための予備金のようなものだからである。
これまで誠実に返済を履行していながら、それでも
預金を開放していただけなければ、
その場で弁護士事務所か金融庁へ
電話するくらいの熱意が必要である。


3)借入金の返済一時停止(緊急避難的措置)
この点も前述したところなので、前項(8月23日号)
を参照されたい。

4)専門弁護士への相談
もし、売掛金の引っかりが月商の0.5ヶ月分以上に
及んだら、直ちに専門家に駆け込むべし。
それ以外でも、後述する法的手続きを選択する
場合はもちろんのこと、銀行に対し、預金の取り崩し、
返済の一時停止要請、買戻し交渉等は、対取引銀行
のみの問題にとどまらず、すべての金融機関に
少なからず影響するところであり、既に信用の失墜
した会社経営者自身がいくら頭を下げてお願いしても、
金融機関としてもすぐに「はい、わかりました」と
いうわけにはいかないのである。

そこには、
①公平、公正なる処置(弁済、情報開示)がなされて
いるか
②会社側の責任の取り方は適正か
③会社側に再建の見通しはあるか
④返済の約束が必ず実行される保証はあるか

等の判断がなされてはじめて、再建に協力すべきか
否かを決断するのであり、高度に専門性、経験等が
要求されるからである。
残念ながら、これらを判断するにも、当該会社
自身では説得力が希薄すぎるのである。

また、判断のためには、資料と時間が必要と
されるが、少なくとも、専門弁護士の過去の
会社再建の体験を調査すれば、本当にその会社の
再建計画や約束事が実行されているかはわかるもの
である。
普段から顧問弁護士に会社の決算書等の資料を
提出する等、顧問弁護士との付き合い方を検討
しておく必要がある。

5)法的手続きの検討(特に2000年4月より
施行される民事再生法の新設の意義)
せっかく会社が営業利益を計上しており黒字
体質であるのに、取引先の倒産を引き金に
自己の会社まで潰してしまうのは、誠に惜しい
ものである。
(但し、会社の売上高の50%以上が、当該
倒産企業(破産の場合)に依存していた場合は、
今後の会社の売上高が半減するだけに、法的
再建は困難なことが多いが)
現在、法が予定する再建手続きとしては、
①会社更生法②和議③商法上の整理の3つの
類型がある。

なお、和議手続きについては、2000年4月より
より簡便な「民事再生法」が施行され、和議法は
全面廃止される予定である。

ここで注意すべきは、経営者が残るか否かという
区別でいえば、会社更生法は、経営者の交替が
前提であり、民事再生法(旧和議)は、経営者の
続投が前提である。

従って、経営者の熱意、人格、発想、行動力、
人望にもよるが、経営者の求心力が会社再建の
重要な要素と見られる企業であるならば、
以下の民事再生法が最も適切となろう。
企業の再建に数多く関与していると、まさに
「企業は人なり」の言葉がつくづく実感される
ものである。

~この項つづく~


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厳しい経済環境だからこそ今一度このメッセージを

2009年01月29日 | 企業再建について
コラムの著作権は村松弁護士本人に帰属します。
このブログ以外での引用等は固くお断りいたします。


日刊帝国ニュース 1999年11月15日
弁護士ウォッチング  弁護士 村松謙一

金融機関よ、モラルを回復せよ

銀行法第1条は、「この法律は、銀行の業務の公共性に
かんがみ、信用を維持し、預金者等の保護を確保すると
ともに、金融の円滑を図るため、銀行の業務の健全かつ
適切な運用を期し、もって国民経済の健全な発展に
資することを目的とすることを銀行の第一の使命と
することを明確に謳っている。

然るに、最近の金融機関のモラルの低下は甚だしいものが
ある。最近、とかく話題の商工ローンに対する融資も
然り。商工ローンの取立てが弱者たる借り手、保証人の
社会的生命を抹殺しかねない状態にあったことは、
貸し手たる金融機関の耳にも当然入っていたはずである。
社会的弱者を救済することこそ、公共性質を有する
金融機関の使命だったはずではないか。

もちろん、適正かつ取引先企業の経営を圧迫しないような
配慮をもって取引を継続している良心的銀行も数多く
見られるものの、一部の心無い金融機関(担当者)の
違法・不当とも思える行いが、時には人の命を奪って
いる現実から、決して目をそらしてはならない。

例えば、最近私は、そんな相談を受けた。
関西に本店を置く都市銀行の若きエリート社員であり
ながら、取引先の企業の資金繰りが悪化して、返済が
滞りがちになるや、60歳を越えている当該企業の
社長に対し、「数億円の生命保険を掛けて下さい。
加えて、死亡時の生命保険の請求権に、当銀行を
質権者とする質権を設定させてもらいます。
毎月の生命保険の掛け金を滞ることなく、必ず
生命保険会社に支払ってください。」

なんのことはない、社長の命と引き換えに借金の
返済を迫るのと何ら変わらないのではないか。
ここでは「人の命」と「お金」が全く同じ価値と
みなされているのである。

今日の大学や一流企業では、「お金」は「命」よりも
重いとでも教えているのだろうか。
ただでさえ当該会社は、毎月の資金繰りが苦しいのに
更に加えて毎月50万円に近い生命保険の掛け金を
払うのも相当にしんどいはずである。
これは、住宅ローンを組むにあたり、団体信用保険の
生命保険をセットすることとは全く次元が異なるので
ある。

この場合は、残された妻子の生活のために、住宅ローン
負債を帳消しにする目的があるが、前述のそれは、
この観点は全くなく、単に一企業としての「貸金回収
目的」以外のなにものでもないからである。
そこには、残された者の生活の安定を願う気持ちは
これっぽっちも見られないのである。

私は、件の相談者にこう回答した。
「今日のその筋の人でも、病気で寝ているご老人の
ふとんまではがして持ってはいかないですよ。
生命保険を盾に取るなんて、早く死んでくれた方が
助かると言っているのと同じじゃないですか。
そのような人の命をおもちゃにしているような
金融機関の指示に従う必要は一切ありません。
毎月の50万円の生命保険の掛け金は直ちに
やめて下さい。生命保険会社から解約されたって
いいじゃないですか。
毎月5万円前後の生命保険に掛け直して、自分の
老後か、奥さん、お子さん達の生活資金にして
あげて下さい」

会社再建のために金融機関と数多く交渉していると、
金融機関のモラルの低下というだけですまされない
犯罪行為すれすれの対応が目につくこともしばしばで
ある。

借り手側にあたる経営者の方々も、人間として問題に
なる行為には、絶対に目をつぶらないで欲しい。
返済が滞ったら、直ちに悪人になると誰が決めたの
だろうか。
一生懸命に返済しようとする姿勢こそが、人間として
一番大切なものではないだろうか。

このことだけは忘れないで欲しい。
どんなに大きな借金でも、マイナスにはならないと
いうことを。例えば、資産が10億円、それに対し、
借金が100億円あったとする。
単純に考えれば<10-100=マイナス90億円>
となりそうだが、法律上は、免責なり、償却なり、
放棄なりの手続きで、結局、借金はゼロとなって
しまうのである。
マイナスからでなく、ゼロからもう一度出発できる
のである。資産のない人からの回収は、コストのみ
かかるだけでどんなに優秀な弁護士でも不可能
なのである。

これに対し、失ってしまった命は、二度と再び元には
戻らないということを、決して忘れないで欲しい。
残された遺族の悲しみも永久に消えはしない。

追加担保の要求に対して

経営が悪化し、資金繰りが苦しくなって、金融機関に
条件変更のお願いをすると、中には、「親会社や
スポンサー会社の側で、担保を提供して欲しい。
そうでなければ、条件変更は受け入れなれない」と
木で鼻をくくった対応を示す金融機関があった。
金融機関としては、決していやがらせのつもりでは
なく、内部のマニュアルに書いてある当然の行為と
認識してのことであろう。

それはそれで理解できるのであるが、ちょっと
待って欲しい。
破産法第375条に「過怠破産罪」という規定がある。
この規定に違反すると、「5年以下の懲役または
30万円以下の罰金」という恐ろしい規定である。

その中の第3項に、「破産の原因たる事実あることを
知るに拘らず或る債権者に特別の利益を与うる目的を
もってなしたる担保の供与又は債務の消滅に関する
行為にして、債務者の義務に属せず又は、その方法
若しくは時期が債務者の義務に属せざるもの」と
規定され、当該企業の破産宣告が確定した時は、
5年以下の懲役等が待っているのである。

これは、破産状態時のような経営危機時、混乱時
には、全債権者のために公平・公正性が強く要求され、
そのうちの一債権者にのみ有利となるような抜け駆け的
担保設定や偏頗(へんぱ)返済などを禁止して財産の
散逸を防止し、全債権者に公正性を確保するための
規定である。

もう一度、当該金融機関にこの規定の存在を申し出て、
当該金融機関の申し出がこの規定に違反していないか
どうか、抜け駆け的担保設定ではないか、抜け駆け的
弁済(但し、本旨弁済は除く)ではないかなどと、
金融機関担当者、支店長と十分に協議した上で、
担保設定を考えてみて欲しい。

私の経験では、金融機関の要求のうち、義務なき
行為が見つかり、この規定の存在を金融機関の
支店長によく説明したところ、その後は、担保の
話はなくなって、スムーズに条件変更の話が
まとまった例もないわけではないことも付言
しておこう。


追記
金融機関には最後まで返済を続けた挙句、資金繰りが
行き詰まり破綻する企業が続出しています。
返済低減を金融機関にお願いするためには、経費
削減などの企業努力をしても、この程度の返済しか
できないという数値化した資料の提出が不可欠です。
逆に言えば、数値化された計画を出さずに、口頭で
お願いしますというような返済猶予を求めても、
金融機関としては協力のしようが無いというのが
実情です。
端的に言えば、金融機関との交渉は、言葉ではなく
数字で行わなければなりません。
金融機関への返済さえ低減できれば、息を吹き返す
中小零細企業はたくさんあります。
そのような企業の再建を精一杯応援しますので、
どんな些細なことでもお気軽にご相談ください。

無料相談はメールでお願いします。
メールアドレス: consul-n@goo.jp
中逵(なかつじ)努








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連鎖倒産回避方法9

2009年01月23日 | 企業再建について
緊急報告
恩師の村松謙一弁護士が出演された
「プロフェッショナル 仕事の流儀」が
1月27日にNHKで再放送決定! 
~どん底の会社よ、よみがえれ~
末期ガン企業をも救う再建弁護士の人間愛溢れるドキュメント


コラムの著作権は村松弁護士本人に帰属します。
このブログ以外での引用等は固くお断りいたします。


日刊帝国ニュース 1999年10月18日
弁護士ウォッチング  弁護士 村松謙一

「債権譲渡の対抗要件に関する民法特例法」
2)この特例のメリット
従来から債権保全の一つとして、取引先が持つ第三者に
対する売掛金につき、予め債権譲渡契約を締結し、
更に対抗要件として、取引先より債権譲渡通知書を
徴収していたが、この通知書を第三債務者宛に
発送しなければ、債権者間の対抗要件具備とはいえず、
かといって、右の通知書を発送してしまえば、取引先の
信用力が低下し、逆に取引先の経営危機の引き金を
引く事態も予想されるため、この債権譲渡通知書は、
債権者にとり、逆に困った存在であった。

実際、会社更生事件において、通知書の発送なき債権者の
対抗要件否認の事例が相次いでだされている。
この点、この特例を使えば、第三債務者に知れることなく、
債権者として取引先の第三債務者に対する売掛金の
対抗要件を具備できるメリットがあるのである。

3)この特例の活用方法
①具体的には、げんざいのところ、取り扱い登記所と
しては、東京法務局に限定されており、債権譲渡登記
(法5条)質権設定登記(法10条)等については、
譲渡人及び譲受人(或いは、質権設定者、及び質権者)
の双方申請によることになっている。

注釈:債権譲渡に関しては本コラムが執筆された当時から
さらに合理的なシステムへと進化しています。
平成17年10月3日に「債権譲渡の対抗要件に関する
民法の特例等に関する法律の一部を改正する法律」
(平成16年法律148号)が施行され,債権譲渡登記制度に
ついては,企業が有する資産を有効に活用し,更なる資金調達の
円滑化・多様化を図るため,債務者が特定していない将来債権の
譲渡についても登記によって第三者に対する対抗要件を備える
ことが可能となりました。

詳細については、下記法務省のHPをご覧ください。

債権譲渡登記制度について
http://www.moj.go.jp/MINJI/minji13.html#2

②提出書類としては、登記申請書及び法務省令で定める
構造の磁気ディスクによって行わなければならない。
(令7条1項)

③申請書には、登記の目的、申請人の住所・氏名
(代理人も同じ)、手数料、年月日、登記所の
表示を記載する必要があり、磁気ディスクには、
更に債権譲渡当事者の数、債権譲渡に係る債権
(質権の目的とされた債権)の個数、登記の存続
期間(原則として、50年以内)等を記録しなければ
ならない。
特に、将来債権については、債権の発生年月日を
始期及び終期で表示する必要があり、債権額に
ついては、登記申請時における見積額を記載する
ことになる。

④申請のための添付書類としては、譲受人は、住民票
(個人)或いは資格証明書(法人)、譲渡人は、
資格証明書及び印鑑証明書(但し、3ヶ月以内のもの)
が必要である。
これらの登記制度を大いに活用して、売掛金の
焦げ付きによる連鎖倒産をガードすべく心掛けて
もらいたい。

倒産回避に向けて全力でアドバイス差し上げますので
ご相談はメールにてお願いします。
連絡先
consul-n@goo.jp

中逵 努(なかつじ つとむ)

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私の実体験 

2009年01月19日 | 私の体験
緊急報告
恩師の村松謙一弁護士が出演された
「プロフェッショナル 仕事の流儀」が
1月27日にNHKで再放送決定! 
~どん底の会社よ、よみがえれ~
末期ガン企業をも救う再建弁護士の人間愛溢れるドキュメント


コラムの著作権は村松弁護士本人に帰属します。
このブログ以外での引用等は固くお断りいたします。



私の体験
サンデー毎日 2005.8.14号
再建専門弁護士・村松謙一弁護士の特集記事
会社、蘇生します -「再建」弁護士が行く -
第3回 会社清算の経験を「第二の人生」に生かす
ノンフィクション作家 石村博子氏著

再建指導弁護士・村松謙一氏は、危機に陥った
会社を甦らせるのは、何としても立ち直ろうとする
経営者の熱意であるという。どん底をかいくぐった
元経営者が、今度は危機にある会社を救う側に立つ。
人生をリセットした彼が伝えるものは「諦めるな、
私はここにいる」という伴走者としての呼びかけ
である。

 午前10時、店が開くのとほとんど同時に、2台の
トラックが横付けになり、男たちが入ってきた。
 大阪市西成区にある酒専門の大型ディスカウント
ショップ・オーナー中逵努さんに、消費税滞納による
差押が告げられる。弁解する間もあらばこそ、8人の
国税庁の税務官たちは整然と数珠つなぎとなり、
ビールケースを手渡しでトラックに積み込み始めた。
酒店から酒がなくなれば今日にも店は潰れてしまう。

 南無三、という気持ちで電話をかけると、週の半分
は地方に出かける村松謙一弁護士は、事務所にいて
くれた。
「ぼくが説明するから、担当者を電話に出して」
 が、税務官はその必要などないとつっぱねる。
「じゃ、ぼくのいうことをそのまま伝えて」
 ここから東京ー大阪間の遠距離で、電話による
口伝えという綱渡り的な法的攻防戦が行われるので
ある。
「先生は条文を確かめたり、税理士に問い合わせたり、
そのたびに電話をかけてくれました。でも税務官は
高圧的で、このまま倒産しても構わないというんです」

 事態が急転したのは、昼を相当回ってから。
譲渡担保権の設定が国税の納付時期よりも前になされて
いるとの証明文書が、中逵さんの手元にあることが
分かったのだ。それが証明されれば、商品は中逵さんの
ものではないことになる。
「今後の差押は劣後することをはっきり言ってください。
強制すれば取り戻しの裁判をやりますよと」
 ここで税務官ははじめて動揺した様子をうかがわせた。
夕刻、いったん商品は戻すとの決定が下ろされる。
8人の国税庁員は、憮然とした表情で黙々と、トラック
に積み込んだ商品を、また元の場所に戻しにかかった
のである。まるで白昼夢のような光景。後日、この一件
は債権回収場面のギリギリの攻防戦として、国税庁
内部でも話題になったという。

 間一発で倒産を免れたこの事件は、03年11月の
こと。が、それまでの8年間、もうだめだと思った
ことが何度あったことか。
 この事件の翌年、中逵さんは祖父母の代から続いた
酒屋の幕を閉じ、第二の人生に向かうことになるのだ。
「地獄を見た経験を活かせば人を勇気付けられるよ」
という村松弁護士の言葉に力づけられ、倒産に怯える
人を助ける側に回っていくのである。

 ある意味で中逵さんは、時代の波ともろにぶつかった
人である。
最先端の並行輸入で得た資金と勢いをもとにして、
西成区に敷地150坪、3階建ての大型店をオープン
させたのは91年、弱冠28歳のときだった。全国的
にも珍しい酒専門の大型ディスカウントショップに、
人々は殺到した。
勢いに乗り、尼崎にもさらに充実の2号店を立ち上げる。
オープンしたのは94年12月2日。銀行からの融資
は、2店あわせて13億円にも及んだが、中逵さんは
強気に構えた。どちらも千客万来で、大量の商品が
あっという間にさばけていく。広い高級マンションに
住み、BMWを乗り回す日々。が、一抹の不安はない
ではなかった。借金の上に建つ砂上の楼閣が、時折
すうっと姿を見せた。

絶望の淵で出会った”一冊の本”

 若き経営者の夢を砕いた一撃は、95年1月17日に
起った大震災だった。棚のすべては倒壊し、床は一面
酒の海に化している。涙も出ないと立ち尽くすなか、
まだ地震保険に入っていなかったことを思い出す。
 大阪の店は無事で、被害の尼崎店も2週間後には再開
となった。が、人々は酒どころではない。客足は遠のき、
少し落ち着き始めたところで競合店が現れて、売上は
一気に4分の1にまで落ち込んでしまう。
 それからはジェットコースターで下るようだったと
いう。月数千万円という、銀行への返済が重くのし
かかる。営業利益が伸びぬなか、手持ちのお金を
かき集めて支払いに充てるような日に追い込まれて
いったのである。
 銀行への返済はどうしてもしなければならない。
従業員の給料も絶対に遅らせることは許されない。
乏しくなる資金は勢い仕入れに影響し、棚はすかすか、
倉庫は空っぽ。店としての体はなさなくなるのだった。

 親戚たちから担保の提供も受けた。が、96年も
半ばになると、自分の給料もだせないくらいになって
くる。公共料金も払えず、短期間だが、自宅の電気も
ガスも止められた。家に戻ると、ろうそくの前で妻が
独り泣いている。胸が潰れる思いだった。
 八方塞がりのなか、中逵さんはしばしば自分の身体が
炎に包まれている夢を見たという。それが自殺の思いに
つながっていることを知り、愕然とする。本当に何度
そう思ったか分からないのだ。
 96年7月、1億円近い手形の決済を控え、弁護士の
ところに相談に行くと、自己破産しかないというのだ。
死刑宣告を受けたように頭の中は真っ白になる。
 ふらつく足どりで、それでも駅前の書店に立ち寄った
のは、今では偶然とは思えない。ぼうっとしたまま
眺めていくと、飛び込んできた本があった。
村松謙一著「こうすればゼッタイ倒産しない(株式・
有限)会社になる」。タイトルに惹かれ、数ページ
めくっているうち、抜け殻の身体に電流が走った。
「会社を再びよみがえらせることこそが”正義”なの
です」とのメッセージに震え、その場に突っ立ったまま
最後まで読み通し、家に戻ってまた3度続けて読み
返した。

「満身創痍の状態で東京の事務所に駆け込んで、先生の
笑顔を見たとき、やっと人心地ついたと思えました。
で、こちらの資料をばーっと見ると、開口一番”今まで
よく頑張ったね”と言っていただいたんです。思わず
涙が溢れました。」
 村松弁護士はさらに続けた。
「この状態なら倒産しないよ。君は若くて、やる気が
みなぎっているじゃないか」

実際は店に行くと、商品はポツポツ、埃は目立つという
痛ましさだ。しかし酒屋という既得権、現金商売の強み
に加え、手形は振り出していない、何より33歳の若さが
村松弁護士に一肌脱がせる気持ちにさせたのだった。
 96年8月、村松弁護士と一緒に金融機関の担当者と
会う中逵さんの心臓は、音が聞こえるほど高鳴っていた。
まるで刑期を聞く囚人の気分だ。銀行の担当者は、硬い
表情を露にしている。
「弁護士さんが?何しに来たんですか?」
警戒する相手に、村松弁護士は中逵さんの会社の窮状を
率直に伝え、「ですからしばらく返済できません。一時
停止をお願いします」と理路整然と訴えた。
「そんなこをするんじゃ、会社を競売にかけますよ」

競売になったら一巻の終わりだ。中逵さんは息が止まる。
間髪入れず、村松弁護士は言ってのける。
「いいですよ。どうぞ競売してください」
うっとつまる担当者。
「ボク、それ聞いていて、オシッコちびりそうになり
ましたわ」

法律に精通した経営者を目指し

外に出て驚嘆する中逵さんに、村松弁護士は諭すのだった。
「競売は銀行にとっても最後の手段だし、決して怖いもの
じゃないですよ。今のあなたのやるべきことは、在庫を
増やすことです。命のお金を今は一円たりとも銀行に
払ってはいけません」
大口の取引先も、弁護士が来たと仰天する。
村松弁護士は事業計画書を差し出すと、滞っている仕入れ
金は銀行より優先して返していくことを確約し、中逵さん
と一緒に頭を下げる。
すると最初は感情的だった相手も、次第に取引再開に
応じる意向を見せてくれるのだった。
返済先を一緒に回りながら、中逵さんは奥から沸き立つ
ものを感じだす。中逵さんは法学部の出身である。
大学時代は無味乾燥の言葉の連なりにしか思えなかった
条文の数々が、こうして自分を守り、人を動かし、現実と
したたかに落としどころを探りあうものとして機能して
いる。
これ以後、中逵さんは法律の勉強を始めるのである。
金融機関側の理屈を知るため、家族や従業員を説得する
ため、時折襲う底知れぬ不安や罪悪感につぶされない
ため・・・。
手元から専門書を離さず、わずかの間隙を縫っては読み、
少しずつ少しずつ理解を深めていった。
その日々は、今の中逵さんの腰骨を作ることになるので
ある。
「ぼくのやり方をよく見ておきなさい。自分の会社を
立て直すこともできるし、他の人の相談に乗ることも
できるようになるから」
村松弁護士も、中逵さんが法律に精通する経営者になる
ことを期待した。

銀行の返済をストップし、支払いも分割にしてもらい、
村松弁護士の協力を得ながら、店は少しずつ立ち直って
きた。空っぽだった倉庫にも、ビールケースがいっぱい
積み込まれる。
が、競合店は増える一方で、売上は全盛期の数分の一と
いうところで伸び悩み続けた。

99年、銀行返済のため自宅を競売。移った先は、4畳半
が三部屋という家賃6万円のささやかな借家だった。
ほとんどの家具はマンションに残してきた。
「引っ越したときはほっとしました」中逵さんはしみじみ
そう言う。
「これが自分の収入にあった本当の暮らしだ。今の自分を
正直に見せている家だと」
奥さんも「やっとこれで落ち着ける。狭くても安心だね」
と、肩の荷を下ろしたようにつぶやいた。
「村松先生にも報告しました。そうしたら、モノはなくても
生きていける。命さえ無事で、事業が残ればいいと言って
くれました」
01年、今度は店の競売を銀行から要求される。
「それでも諦めちゃダメだ」と村松弁護士は叱咤する。
「知ってる人に落札してもらって、人から借りながらやれば
いい」
尼崎の店は完全に手放したが、大阪の店は村松弁護士の指示
どおり、知人に売って、賃貸で店を続けていくことになった。
もうこの時期は、法的な理解も深まって、無闇な不安に襲わ
れたりはしなかった。

03年から売上がまた少しずつ落ち始めた。
酒類販売免許の規制緩和はさらに進み、免許制から届出制
へと変更になる。
とっくに、酒はスーパーでもコンビニでも、手に入るように
なっていた。ディスカウントショップの使命はもう終わった
のかもしれない----。

消費税滞納の騒動が起ったのは、そんな時期だ。中逵さんは
腹を固めた。だましだまし続けるよりも、新天地で頑張った
ほうがいいのではないか。
40歳。まだ切り替えはできるはず。

04年7月。ついに閉店。
そして会社は清算した。十数年に及ぶ長い闘いだった。
ボロボロに打ちひしがれたなか、二人の娘の寝顔を見ている
うち、以前村松弁護士に言われた言葉が甦った。
「君は倒産の淵に立っている人の気持ちが誰より分かるから、
コンサルタントにもなれると思うよ」

倒産回避の専門家として活動を

現在、中逵さんは都内に単身赴任。大手コンサルタント会社
の企業再生コンサルタントとして、不況に苦しむ中小企業の
再建の活動を行っている。
不渡り確実を訴える企業からのSOSがあれば、全国どこに
でも飛んでいく日々。村松弁護士から伝授された人間救済の
流儀にのっとり、金融機関とも対等に渡り合う。
絶望的な気持ちを訴える経営者に、中逵さんは自分を体験を
さらけ出す。
「大丈夫です。そんな目にあった私でも今、ここにいるん
ですよ」
一念発起して今の会社に応募したとき、村松弁護士は
心からの推薦状を提出してくれた。
”企業再生を通じて人のお役に立てることに、彼としての
人生の役割を見出すべく・・・・”。
そして04年11月から倒産回避の専門家として動き始めた
のである。
「泥沼を這いずるような日々の中で、分かったことが
ひとつあります。人間は、失敗するから人間なんだという
ことです」
深夜、ときおりケータイが鳴る。
不安に襲われた経営者が、たまらずかけてくるものだ。
「中逵さん。食も喉を通りません。私は周囲の人たちに、
罪を作っているんじゃないでしょうか」
過去の自分に向き合いながら、中逵さんは答える。
「あなたが今、精いっぱいされていること。それが
あなたにとっての良心なんです、あなたは力の限りに
走っている。私はあなたが精いっぱい走ろうとする限り、
とことんお手伝いするつもりです」

連絡先
consul-n@goo.jp

中逵 努(なかつじ つとむ)









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連鎖倒産回避方法8

2009年01月14日 | 企業再建について
緊急報告
恩師の村松謙一弁護士が出演された
「プロフェッショナル 仕事の流儀」が
1月27日にNHKで再放送決定! 
~どん底の会社よ、よみがえれ~
末期ガン企業をも救う再建弁護士の人間愛溢れるドキュメント


コラムの著作権は村松弁護士本人に帰属します。
このブログ以外での引用等は固くお断りいたします。


日刊帝国ニュース 1999年10月18日
弁護士ウォッチング  弁護士 村松謙一

3)債権譲渡と債務引き受けによる相殺処理
又、取引先の危機を感じたら、売掛金の債権譲渡契約と
「貴社に対する○○月分の売掛金○○○円は、今般、
○○社に譲渡しましたので、今後のお支払いは、
○○社の方にお願いします」旨の内容証明を
書いてもらって受けておくと、万一の場合助かる。

但し、債権譲渡は、上記の債権譲渡の通知を第三
債務者に実際に出しておく必要があり、他面、
この通知を出すと、会社が混乱しているのが
第三債務者に分かってしまい、今後の取引に影響が
生ずるので、何とか出さないでおきたいとの思いが
衝突する。

そこで平成10年(98年)10月より、後述の
「債権譲渡の対抗要件に関する特例法(登記制度)
」が施行されているので、この制度を債権保全の
手段として活用してみてほしい。

4.債権譲渡の登記制度の効果的活用方法
貸し渋り、融資の強制的回収による資金詰まりも
さることながら、せっかく自社は順調に営業し、
売上高も何とか前年比を維持していながら、
取引先の倒産により売掛金が焦げ付いてしまう
いわゆる連鎖型の倒産が急増している。

中には、直接の取引先は順調なのに、更に先の
取引先が倒産したために、順繰りに資金不足と
なり、倒産に至るドミノ倒し型倒産もよく見受け
られるようになった。

こうなると、直接の取引先に対してのみ監視・
チェックをしていても、防ぎようがない。
ただ言えることは、売掛先の倒産、焦げ付きに
対して、あまりにその保全に無防備の会社が
多すぎるということだ。

1)この特例の意義
そもそも、売掛金をガードするための「基本
売買契約書」すら締結せずに、単純な注文書、
納品書で売買形式とする企業が大半である。

ところで、取引先に不動産等のめぼしい資産が
ない場合、或いは、あっても既に根抵当権等が
先順位で設定されていて余剰のない場合等に、
債権譲渡の方策が、債権保全の有効な手立てと
なる。

但し、債権譲渡の対抗要件としての通知、或いは
承諾のみでは、債権の譲渡先が重複して混乱を
生じさせたり、第三債務者に通知を出さなかった
りする弊害が少なからず生じていた。

これらの弊害を改善するために、債権譲渡の
「登記制度」が平成10年10月より施行されて
いるので、この制度を債権保全手段として、
より活用してみてはいかがだろうか。

~ 次回につづく ~

■売掛金担保融資について

日本の金融機関に対して、いわゆるBIS規制
導入を契機として、邦銀は融資判断をそれまでの
不動産担保等にウエイトを置いた融資基準から、
自己資本比率や返済原資に見合った融資基準へと
融資判断を変化し、取引企業の格付け評価に
見合って融資額などを決めるシステムが現在
導入されています。

約束手形による決済の場合であれば、手形割引に
より決済日以前の資金化が可能でありましたが、
かつては現金決済の売掛金を決済日前に資金化
する仕組みはありませんでした。

そのような状況では、運転資金を金融機関から
調達して資金繰りを維持することになり、運転
資金を調達すれば、短期債務が増加してバランス
シート(貸借対照表)が重くなり、金融機関の
格付けに影響するという矛盾が生まれました。

そこで、その矛盾を解消するために、流動債権
である売掛金を担保に融資を受けることで、
自己資本比率を低下させずに、運転資金を確保
する売掛債権担保融資が徐々に浸透し始めています。

倒産回避の場面では、資金繰りを維持するために
売掛金担保融資を活用する機会も多いですが、
万一民事再生などの法的手続きを申し立てることに
なった場合、運転資金の確保に大きな影響が
及ぶ可能性があるので、綿密な事業計画および
資金繰り計画に基づいて売掛金担保融資を活用
する必要があります。






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連鎖倒産回避方法7

2009年01月08日 | 企業再建について
緊急報告
わが恩師の村松謙一弁護士が出演された
「プロフェッショナル 仕事の流儀」が
1月27日にNHKで再放送決定! 
~どん底の会社よ、よみがえれ~
末期ガン企業をも救う再建弁護士の人間愛溢れるドキュメント


コラムの著作権は村松弁護士本人に帰属します。
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日刊帝国ニュース 1999年10月4日
弁護士ウォッチング  弁護士 村松謙一

私が一番着目する箇所は、長期、短期合計借入金の推移と売上高の
比較である。

1)借入金の月商倍率
例えば、売上金に対し、長・短期合計借入金の額が10ヶ月分を
越えているようだと、倒産の可能性が高くなる。

2)過剰返済
税引き後当期利益と、減価償却費の合計額が500万円として、
その年の実返済額が2000万円であったとしたなら(例えば
前年借入残高合計9億円、本年借入残高合計8億8000万円)、
以下の点を推論してみる必要がある。

ア、預貯金を1500万円取り崩しているか、
イ、社長貸付として1500万円が新たに加わったか、
ウ、一部の取引先に対し、未払金1500万円を計上したか、
いずれにせよ、過剰返済のしわ寄せがいずれやってきて、
資金繰り倒産の危険を含んでいるとか、
エ、逆に、その年の実返済額は500万円なのに、新規の
借り入れが増加しているなら、金融機関からの借り換え、
手形の切り替えで返済を調整しており、万一、金融機関との
関係が壊れた場合は、直ちに返済を迫られ、同じく資金ショートに
陥る危険性が高い、等々が分かるはずである。

それにより、見かけ上は、売上高や社歴などで立派に見える会社で
あっても、その内実は相当に苦しいだろうな、火の車ではないかと
いうことを考えて取引に臨めるものである。

3.売掛金などの債権を担保化しておく
例えば、先に納品して、後日売掛金を請求する場合などは、
そのままでは、一般債権の扱いとなり、破産などでは、ほとんど
配当が見込めない。

1)所有権留保
本来なら、取引に入る前に「基本取引契約書」を作成して、万一の
場合の優先弁済や商品の返品を特約として明確に記載しておくことが
肝要であるが、やはり力関係上、契約書の取り交わしができない
場合も多数存在する。

そこで、せめて納品書や注文書などに印刷文字で、「本品の代金が
支払われるまでは、本品の所有権は当社にあるものとします」と
記入し、受取主の署名、捺印をもらって、その承諾の証としておく
のも一つの方法である。
私が関与した再生手続きでは、店頭商品につき、「売上仕入方式」を
とり、仕入商品を確保した経験がある。

2)契約の失効、返品処理
「破産や不渡りの場合は、本契約は当然に失効し、所有権留保の
商品は直ちに返品します(取り戻します)。又、当方も貴社
(破産会社)に対し、当社に商品が返品されるため、当該商品代金の
請求はしません。」などの奥書を記しておくと、万一の場合、現品の
取り戻しに効力を発揮する。

~ 次回に続く ~
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手形の買戻しについて

2009年01月04日 | 企業再建について
明日から仕事始めという会社が多いと思いますが、
不幸にも取引先が倒産してしまったなどの理由により、
手形の買戻しを金融機関から求められた場合は、
まず自社の資金繰り状況を確認した上で、結論を出して
いただくことが連鎖倒産を防ぐための重要ポイントです。

手形買戻し資金を拠出後、倒産防止共済などから
資金手当できる目処が立っているような場合はともかく、
買戻し資金拠出後の資金繰り目処が立っていない状況で
手元資金が流出してしまうと確実に連鎖倒産することに
なってしまいます。
かと言って、金融機関に相談したところで、手形を早急に
買い戻してくださいとキッパリと言われてしまうケースが
多いと思います。

このような場面こそが、元旦に書かせていただいたように
自分の会社は自ら守るという行動が必要になる場面です。
取引先の倒産により突然窮状に陥ってしまったような場合、
「当行は返済を待ちますよ」というような返済条件緩和の
提案が金融機関より持ち出されることはありえません。

このような状況の中でどうすれば良いかというと、
まず手形買戻しを実施し、従来の借入金も約定通り返済
した場合の約定資金繰り予定表を作成します。
約定資金繰り予定表上で資金繰りショートが予見される
場合は、この約定資金繰り予定表をベースに資金繰りを
維持するために必要な改定資金繰り予定表を作成します。

つまり約束通り返済してしまうと資金繰りが破綻してしまう
ので、連鎖倒産を回避するためには、このようなペースで
返済せざるをえないというシュミレーションに基づいて
金融機関に協力を仰ぐというのが最善策です。
金融機関に協力を仰ぐためには、数字の根拠をもって説明
する必要があります。
資金繰りが苦しいとどんなに口頭で説明しても、金融機関の
協力を得ることはできません。逆に言うと、数字の根拠のない
協力要請には、協力したくてもできないというのが金融機関の
立場です。
金融機関に対しては、自社の窮状を数字で訴えて協力を仰ぐ
ことが不可欠です。
金融機関に窮状が知れることを恐れず、むしろ窮状を伝え、
その上で確実性のある計画を説明して金融機関の協力を仰ぐ
ことが大切なのです。





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謹賀新年

2009年01月01日 | 企業再建について
謹賀新年。
新年明けましておめでとうございます。

企業の内部から再建を図るターンアラウンド業務に
集中していたため、昨年はブログの更新ができません
でした。
ターンアラウンド業務がひと段落付く目処が立ちましたので、
本ブログを再開させていただきます。

サブプライム問題に端を発し、リーマンブラザーズの
破綻した2008年9月以降世界経済が急速に失速し、
国内大手企業においても派遣切りなどの雇用不安により
先行きに暗雲が立ち込めた状況での新年となりました。

周囲の金融機関担当者からは1月5日を迎えるのが怖い
というような意見も聞こえる中で、一件でも中小零細企業の
倒産を回避することに役立てればとの思いを込めて、恩師の
村松謙一弁護士のコラムのご紹介や、倒産回避のための
現場の実例などをお伝えさせていただきたく思います。

中小零細企業の実態として、会社の存続と社長様ご家族の
生活が直結しているだけでなく、従業員の方々の生活基盤
をも支えていることから、中小零細企業の倒産回避に役立つ
事例をできるだけご紹介させていただきたいと思います。
また会社が緊急事態にあるような場合は、メールでの相談も
可能な限り受け付けていますので、consul-n@goo.jp まで
お願いします。

会社や自分たちの生活は自らの手で守る時代です。
1件でも多くの会社が倒産回避を実現して、それぞれの家庭に
笑顔が戻ることを願っています。











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連鎖倒産回避方法6

2007年03月20日 | 企業再建について
コラムの著作権は村松弁護士本人に帰属します。
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日刊帝国ニュース 1999年10月4日
弁護士ウォッチング  弁護士 村松謙一

2.取引先から月次決算報告書を入手しておくこと

前述の計数上の関係から、確実に経営危機の兆候は読み
取れる(例えば借入金の月商倍率など)のである
から、取引先の決算書を入手できるなら、入手して
おくことに越したことはない。

しかし、この点、取引の上下関係、力関係から、納入先
販売先・注文主等の決算報告書を入手することが困難
なこともよく分かる。

取引先の倒産で、連鎖倒産の被害に遭うのは、いつも
弱小の零細・中小企業だからである。

仕事をもらっている手前、「毎月、月次決算報告書を
作成して、翌20日までに提出せよ。それが取引継続の
条件である」などとは断じて言えないであろう。

しかし、だからといって、取引先の決済状況が分からずに
注文を受け、出荷を続けることも、経営者として無謀
であろう。

右肩上がりに景気が好調、堅調なときであれば
いざ知らず、大企業、老舗企業、業界の中堅企業ですら
相次いで倒産していく今日では、いかに相手方の
情報を入手するかが生死の分かれ目であると言っても
過言ではない。

そこで直接、取引相手先の月次決算報告書を入手できない
ならば、信用のおける情報収集会社に依頼して、取引先の
経営数字を把握しておくのも一つの方法である。

この点、日本の企業は、情報収集に費用をかけなさ過ぎる
のではないか。とかく、リストラの対象となる「交際費」
についても、仕事をもらうという性質の他に、情報を
入手するという性質も併せゆうすることをよく考え
なければならない。

弁護士・会計士等に支払う顧問料についても然りである。
その際、必ず、2期乃至3期の数字を入手し、その比較を
して取引先会社の数字がどのように変化したかをチェック
しておくことが肝要である。単に1期の数字を見ても、
その効果は現れないからである。

~ 以下次回に続く ~
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連鎖倒産回避方法5

2007年02月12日 | 企業再建について
コラムの著作権は村松弁護士本人に帰属します。
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日刊帝国ニュース 1999年9月27日
弁護士ウォッチング  弁護士 村松謙一

危険な会社の見分け方(実践編)

第2 人的面から読み取れる危険信号

①金融機関の方が会社に頻繁に顔を出すようになる。

②逆に経営者が銀行ほか取引金融機関に頻繁に顔を
出すようになる。

③弁護士、会計士が頻繁に電話連絡を入れるようになる。
(土、日に弁護士が会社に顔を出す)

④社内に特別室が設けられ、束になった書類が置かれ
始める。(夜遅くまで灯りがついている)

⑤不動産登記簿謄本のコピーや取り寄せが多くなる。

⑥会社に普段見慣れない顔の業者が頻繁に出入りする
ようになる。

⑦幹部社員、幹部役員(特に経理関係)の辞職が目立つ
ようになる。

設備面

⑧賞与が大幅に減額された。

⑨在庫が急減している。

⑩本社を新設する。

⑪設備を新設するもリースでなく割賦の買取方式。

⑫当該取引先自身が別の取引先の倒産で売掛金が
焦げ付く。

⑬受取手形の金額が急に大きくなる。
(仕事が急に増える)

連鎖倒産の渦に巻き込まれないための事前予防策

言わずもがな、前述した危険な会社(その予兆を
察知して)との取引を減少していくか、一時的に
取引を停止することが予防策の第一義であるが、
取引の性質上、取引を一気に停止できないような
業種の企業もあることも事実である。

1.「取引依存度」の分散化
そこで、まず普段から「取引依存度」に注意をしておく
必要がある。

自社の売上高を100%とするならば、取引先一社
当たりの売上をせめて30%前後以下にとどめておく
べきである。

逆に、自社の売上100%に対し、50%を超える
ような取引先(依存度50%以上)が倒産した場合には、
そのダメージは相当に激しく、依存度70%前後にまで
取引高が膨らむと、その取引先が倒産(破産)した場合、
連鎖倒産の確率は相当高くなる。

但し、倒産した取引先が会社更生法等の再建型の法的
手続きを選択してくれれば、依存度70%前後の取引先
に対しては、弁済停止の一部解除などにより、棚上げ
した売掛金を資金繰り不足にあわせて支払うといった
救済措置があるので、連鎖倒産の危険は減殺される
ものの、破産等の法的手続きでは、もはや売掛金の
早期弁済という救済措置もなく、将来における今後の
売上も急減し、且つ、既に販売した売掛金の回収も
不可能となり、直ちに資金ショート倒産という事態に
陥ってしまう確率がかなり高い。

然るに、取引依存度が30%程度の取引先会社の倒産
ならば、確かに自社の売上30%減に匹敵するものの、
営業利益率3%前後の会社ならば、営業利益に影響
するものは、売上高のわずか0.9%である。(例えば、
取引高年10億円の会社が、うち、3億円の取引先が
倒産、本来ならば3000万円の営業利益が900万円減の
2100万円の営業利益となる)

確かに、返済原資がそれだけ減少して、資金繰りには
影響するものの、何とか資金繰りをやりくりすれば
立ち直れないほどのダメージではないからである。
従って、もし、あなたの会社が普段からある1社の
取引に頼る「1社依存型」の取引形態であるなら、
時間をかけてでも、各取引先の依存度を分散する
ように心掛けなければならない。

そのためには、与信枠を減少するか、新たな取引先を
開拓するかである。

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連鎖倒産回避方法4

2007年02月05日 | 企業再建について
先週から本格的な寒さが到来し、インフルエンザが流行り
始めているようなので、読者の方々におかれましてはどうぞ
ご自愛ください。

村松先生の語録の中で、特に感銘を受けた言葉があります。
倒産回避という究極の修羅場の中で、最も大切な村松イズムを
これからも心に深く刻み続けたいと思います。

「どんなに法律に詳しくても、法律論の言葉をもっては、
その本質は見えない。声なき声を感ずることだ。
葉を見るだけでは、木は見えない。心で感じれば、
言葉を用いずとも、本質は見えてくるものだ。」


コラムの著作権は村松弁護士本人に帰属します。
このブログ以外での引用等は固くお断りいたします。


日刊帝国ニュース 1999年9月20日
弁護士ウォッチング  弁護士 村松謙一

危険な会社の見分け方(実践編)

自分の会社は、営業利益を出し、黒字体質で営業を続けて
いるのに、ある日突然、取引先企業が倒産し、売掛金の
回収が不能となって、その結果、自分の会社の資金繰りに
行き詰まる、いわゆる「連鎖型倒産」が急増している。

他人のせいで会社がつぶれてしまう無念さ、悔しさ、
残念さは、せっかく、会社は順調に利益を出して活動
していただけに、自己の怠慢による「放漫経営型倒産」と
違って、相当なものがあろう。

「連鎖型倒産」は、表面的には、ある日突然襲ってきて、
防ぎようがないようにも見えるが、倒産事件を多数扱って
いると、必ずその予兆はあるものであり、全く手に
負えないというものでもなく、少なくともいくつかの
予防方法はあると断言できるのである。

本項では、①危険な会社の見分け方、②連鎖倒産の渦に
巻き込まれないための予防策、③仮にその渦に巻き込まれて
しまったとして、その渦からの脱出方法等について、
倒産事件に数多く関与してきた私の体験談から気づいた
ところを説明していくこととする。

「災害は忘れた頃にやってくる」の格言よろしく、これからの
私の説明を頭の片隅にでも記憶しておいてもらいたい。

取引先の経営危機を示す「13の危険信号」
(紙面の都合上、特に注意点を箇条書にします)

第1 計算上の関係から読み取れるもの
①取引先が多く、新規取引銀行が増えている。
②「借入金+割引手形」に対する支払利息の割合が異常に
多い。
③支払手形のジャンプ要請をしている。
④受取手形、支払手形に同一の相手先がある。
⑤借入先の知名度が低く、金融機関以外の借り入れがある。
⑥決算翌月の売上取り消し、返品処理、値引き処理が多い。
⑦決算翌月の仕入れ支払いが多い。
⑧利益に比べて納税割合が少ない。
⑨利益があるのに給与引当金など税法上の引当金が設定
されている。
⑩新しい取引先が急増している。
⑪新しい得意先に対して売り上げが急増している。
⑫関係会社間の取引が急増している。
⑬未清算勘定(仮払金)などが急増している。

(尚、これらについての詳細は、拙著「会社をなんとか
つぶさないですませる本」(オーエス出版)に記して
いるので、興味のある方はご参照ください。)

但し、後述するようにこれらの計数上からの危険の
読み取りは、そもそも相手方取引先の決算書の入手が
困難なことが多いことから、情報が入手できれば大変に
役に立つが、情報が入手できなければあまり実践的でない。

むしろ、取引先社員や社長との人的交流の中で、以下の
人的面や現場面からの危険の読み取りの方が実践向けで
あろう。

~ 以下次回に続く ~
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連鎖倒産回避方法3

2007年01月29日 | 企業再建について
コラムの著作権は村松弁護士本人に帰属します。
このブログ以外での引用等は固くお断りいたします。


日刊帝国ニュース 1999年8月23日
弁護士ウォッチング  弁護士 村松謙一

4.私の体験談
現実問題として、ゼネコンの会社更生保全管理人代理を
していた際、取引先企業の連鎖倒産を極力回避するために、
毎日、取引先の資金繰りの指導をし、この割引手形の
買戻しの苦情を数え切れないほど処理したが、その際、
我々が説明した割引手形の買戻しの分割返済交渉を
粘り強く行った業者は今でも生き残っているが、
残念ながら生真面目で誠実な経営者であるがゆえに、
金融機関の強き要求に素直に従い、乏しい資金を一括
して吐き出してしまった業者が資金繰りに破綻を生じ、
連鎖倒産という被害にあっていることを大変残念に
思うと同時に、なぜ助けられなかったのかという己の
無力さを痛切に感じた苦い教訓があった。

買戻しにそのまま応じたか、粘り強く分割返済に修正
して応じたかで、会社存亡の成否を分けたと言っても
過言ではないのである。

繰り返して言う。

客観的に見て、あるいは、会計士・弁護士の専門家の
目から見てもらって、「再建の見込みが読み取れる
ならば」という条件付きではあるが、再建という
全関係者のための「正義」の目的のために、倒産を
回避し、不公平感を除去する意味からも、一時的に
資金をプールする、即ち支払いを一時停止することに、
決して罪悪感などを持つ必要はないということを
この項では強調したい。

「経営者として、倒産を回避し、債権者に全額を返済
し、もって従業員の幸せを考えること」こそが、
経営者の重要な職務である。

 会社を生かす、なんとしても生かしてみせることが、
経営者となることを選んだ人間に与えられた天からの
使命と私は考えている。

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連鎖倒産回避方法2

2007年01月16日 | 企業再建について
コラムの著作権は村松弁護士本人に帰属します。
このブログ以外での引用等は固くお断りいたします。


日刊帝国ニュース 1999年8月23日
弁護士ウォッチング  弁護士 村松謙一

前回の続き

2)この要求をされた取引先側としては当該倒産企業が
破産ということにでもなれば、将来における取引・売上高
はなくなってしまうのであり、更には仮に受取手形の
支払サイトが3ヶ月であれば遡って3ヶ月分(例えば
3000万円の手形×3ヶ月分=9000万円)の合計額
を直ちに支払え(返せ)と迫られるのである。まさに
泣き面に蜂であり、取引先が消え、将来の売上が無くなり
そのことだけでも経営不安に陥ってしまうのに加えて、
ただでさえ少ない手持現金から手形買戻し金額を一括して
銀行に返済しては、たちどころに資金ショートに陥って
しまうことは、誰の目にも明らかであろう。

割引した資金は、すでにその都度、支払い等に当てて
しまっており、手元に留保しておく余裕などはありは
しないからである。

3)このように会社破産等は、単に破産時点からの将来に
向けての問題だけでなく、重要なことは、その時点から
遡ること数ヶ月に及んで、取引先に影響力を及ぼすもので
あり、私が極力、法的手続き、特に破産手続きを避けうる
ことならば避けたい理由である。

逆のことを言えば、会社の再建、立て直しすることに
ついては、一般取引業者の手形割引の買戻しのことも
視野に入れて、少なくとも資金ショートと目される
3ヵ月前位からは、立て直しの準備に取り掛かる必要が
あろう。

3.そうは言っても、目の前に起こっている現実、
「割引手形の買戻し要求」にどう具体的に対処したら
いいのだろうか。

1)もちろん法律上は買い戻し義務があるのだから、
割引代金の返還をしなければならないことは当然で
あるが、何回も述べているように、会社再建のためには、

a)今この時点で払わなければならない性質の費用と、

b)今この時点では払ってはならない性質の費用とを、

歴然と区別して、目の前の危機に当たらなければならない
ということである。
前者は、手形決済資金、買掛金、加工賃等の材料費や
給料等の労働賃金であり、後者は、この手形買戻し金等
が適例であろう。
 要は、会社の資金繰りに不安を残さないような返済か
否かなのである。

2)この根拠は、例えば再生型の倒産事件たる会社更生、
民事再生等にあっては、法律上は当然支払うべき性質の
費用であっても、裁判所は「弁済禁止の保全処分」と言って
あえて支払ってはならないとの保全命令を出し、支払を
一時的に停止させて、再建の軌道に乗せるような命令を
出してくれるのである。裁判所ですら、再建のためには、
支払を一時停止せよと言っているのである。

この背景には、会社を再建させるためには、まず資金繰りが
何より大事であり、無節操な資金の流出を防ぐことおよび
公平の観点から、ある人には払い、ある人には払わないと
いった偏頗弁済を防ぐということが、再建にとって最も
重要な要素として主張しているのである。
それは、とりも直さず、全債権者の利益に資するからである。

3)とすれば、法的手続きをとらない自主再建という方式で
あっても、再建=正義という目的は同じであり、その目的の
ための手段として、弁済を一時的に停止することは、
かえって全債権者のためにも意義のあることなのである。
弁済を一時的に停止することに、罪悪感を感じる必要は
少しもないのであることがお分かりいただけたでしょうか。

ア)もうお分かりのことと思うが、手形の買戻し要求に
対しても、自社の資金繰りに照らし合わせて、場合に
よっては、10回、20回程度の分割弁済をお願いする
ことだ。
イ)もしくは、手持ちの他の手形を代物弁済としてお預け
することだ。
要は、ただでさえ乏しい資金をできるだけ後ろ向きの
資金でなく、将来の経営・生産のための前向きの費用
(例えば仕入資金、従業員の給料等)に使いたいのだ。

金融機関においても、手形割引に関しては、取引業者は
一種の被害者であり、同情の余地を十分にくんでくれる
ものである。

4)分割返済等のお願いの際に提出すべき資料については、
前述した条件変更時に提出すべき7つの資料(7月26日
号参照)を用意することは、手形の買戻し交渉時に
おいても同様である。

 手形買戻しに応ずることで、直ちに潰れてしまうことの
方が、金融機関にとっても迷惑な話であり、かえって被害が
拡大してしまうことになり、避けたいことなのだ。

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お知らせ

2007年01月13日 | 企業再建について
非常に長期間ブログの更新が出来ず申し訳ありませんでした。

1月11日にNHK総合で放送された「プロフェッショナル
仕事の流儀」に私の恩師である村松謙一弁護士が出演された
直後から、本ブログに対するアクセスが急増し、改めて
村松弁護士の流儀・哲学を必要としている方々が多いことを
痛感しました。

そこで本ブログも来週より再開させていただき、少しでも
多くの方々に村松弁護士のメッセージをお届けしながら、
私の活動報告をすることで、倒産回避のヒントを感じ取って
いただける草の根運動になればと思います。

改めまして今後とも宜しくお願い申し上げます。
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連鎖倒産回避方法

2006年08月01日 | 企業再建について
待ったなしの案件がいくつも重なってしまい
長い間投稿できず申し訳ありませんでした。
東京で感じる好況感とは裏腹に、出張で訪れる
東京など限られた場所以外の都市で感じる景気感には
かなりの温度差があります。さらに今年は例年にない
長い梅雨と豪雨の影響で、7月の売上が低迷して
しまった企業も多いと思います。従来から何度も
お話しているように、天変地異などの不可抗力による
売上低迷に対する最善の防御策は、決して無理をせず
金融機関に協力を仰ぐことです。できれば今後半年間の
簡単な資金繰りを作成して、お金の入りと出の予測を
立ててください。簡単な家計簿を作成する要領でも
効果的です。安易にお金を借りて借入金残高を増やす
前に、元金返済をしばらく猶予してもらう協力を
金融機関に仰ぐことを真っ先に考えてください。

コラムの著作権は村松弁護士本人に帰属します。
このブログ以外での引用等は固くお断りいたします。


99年8月23日 日刊帝国ニュース
弁護士ウオッチング  弁護士 村松謙一

連鎖倒産を回避する方法(その1)
金融機関からの割引手形の買戻し要求対策

第1 自主再建方式のメリット
1.大規模な倒産事件が多発している半面、社歴の古い
地域に密着しているいわゆる老舗企業の倒産も多発
している。業界第3位、第4位といった中堅企業の
倒産も目につく。

批判を承知で言わせてもらえば、個人的には、破産や
会社更生といった法的倒産手続きにもっていくには
もったいないと思われる倒産も散在される。

私が法的倒産手続き(再建型にせよ、清算型にせよ)
を極力回避して、第一義的に、裁判所の関与しない
自主再建型の手続きを目指している理由のひとつ
には、法的手続きでは、関与先の債権者を、その
大小にかかわらず十把ひとかけらに取り込んでしまい
その被害、影響力が自主再建方式に比較し、大き
すぎるという点である。何も全債権者を対象に
しなくても、ある一定の大口債権者の協力だけで、
十分に再建できる企業も多数あるからである。
債権者の側においても、できる限り倒産の渦に
巻き込まれたくはないであろう。

2.そのひとつに、「割引手形の買戻し」という
問題がある。
①大企業、中堅企業、歴史の古い地元企業の倒産の
現場では、特に割引手形の買戻し要求による
連鎖倒産で、一般債権者までその傷口を広げる
傾向が顕著である。

これは、大企業や中堅企業ほど、取引高も多く、
必然その支払方法は、手形決済が多くなるからで
ある。取引先企業側も、受け取った手形をその
期日(サイト)である3~5ヶ月間も、後生
大事に自己の会社の金庫に眠らせておく企業は
少なく、多くは受取手形を直ちに取引先金融
機関に持ち込み、割り引いて現金化して、支払期日
までの数ヶ月を待つ余裕などなく、運転資金化
(現金化)しているはずである。

金融機関側においても、いくら「貸し渋り」と
いっても、大企業や著名企業、地元でのれんのある
老舗企業の手形ならば、割引にも応じていた
はずであろう。にもかかわらず、信用のある
はずの大企業、名門企業、老舗企業等が突然
潰れることは当事者以外、誰も予想だにしなかった
はずである。

そのため金融機関側としては、手形割引を申し込んだ
取引先に、「手形割引を直ちに引き取って、代金を
早急に返還せよ」と、いわゆる割引手形の買戻しを
要求してくるのである。

以下次回に続きます。
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