ロートル技術屋の日記

都会の照明の影響を減らす光害カットフィルターは役に立たなくなりそう

地球温暖化対策の一つとしてカーボンニュートラル(炭酸ガス排出量実質ゼロ)の実現に一部の発展途上国を除いた世界中が取り組んでいます。
また、EUのRoHS(特定有害物質使用制限)指令のように環境から有害物質を排除する取り組みも行われています。

街灯や道路照明、野球場、体育館などの大型の照明にこれまでは超高圧水銀ランプ(白色)や高圧ナトリウムランプ(オレンジ色)が使われていました。
しかし、効率の良い白色LEDが安価に生産できるようになり、有害な水銀を使う蛍光灯や水銀ランプは規制され白色LEDへの置き換えが進んでいます。
また、ナトリウムランプも白色LEDへの置き換えが進んでいます。
自動車のヘッドライトもハロゲンランプやHIDランプ(超高圧水銀ランプ)から白色LEDに置き換わりつつあります。

これまで都市部の夜空が明るいのは街灯に使われている超高圧水銀ランプ(白色)や高圧ナトリウムランプの光が主な原因でした。
超高圧水銀ランプ(白色)や高圧ナトリウムランプは特定の波長の光しか出しません。
例えば超高圧水銀ランプでは436nm(青)、546nm(緑)、578nm(黄)などの波長に強い光が出ています。
ナトリウムランプの場合は550nm(緑色)~650nm(赤色)の光が出ているためオレンジ色の光に見えます。
これらの光をカットすれば光害の影響を減らすことが出来ます。
そこで都市部での天体観測や天体写真撮影に使える光害カットフィルターが販売されていました。

照明の白色LED化が進むとこれらの光害カットフィルターは意味をなさなくなります。
それは白色LEDが青色LEDの光を使って蛍光物質を励起して蛍光で緑~赤色の光を出しており、連続したスペクトルになっているからです。

ネットで検索してみたところ、東京の夜空のスペクトルと光害カットフィルターの分光特性をDVDディスクを使って自作された分光器で測定された方がいらっしゃいました。


記事が書かれたのが2016年と7年前ですのでまだLED化がそれほど進んでいない時期ではないかと思われます。

1番最初のグラフが東京の夜空のスペクトルです。
2番目のグラフを3番目のグラフで割り算したものが光害カットフィルターの透過率スペクトルになります。
光害カットフィルターの透過率スペクトルのグラフが無いので解りづらいと思いますが、530~550nm、570~600nm、610~630nmの光が大きく減衰するので東京の夜空を明るくしている波長の光がほぼカットされることになります。
光害カットフィルターの効果はあったと思われます。

照明の白色LED化が進むと夜空のスペクトルが連続的になります。
セッピーナさんが光害カットフィルターの透過率を測定している2番目のグラフがまさしく光害カットフィルターを通過する白色LEDのスペクトルになります。(白色LEDを光源に使って測定されています)
透過している波長が多く光害カットフィルターとして役に立たなくなることがわかります。

街灯などに使われる効率の良い白色LEDのスペクトルはこちらのサイトのスペクトルの一番上の「BLUE+YAG蛍光体」のグラフのようになります。(リンクフリーにしていただいているところを探しました)


430~450nmの青色LEDを光らせてその一部の光で蛍光体を光らせて緑~赤の光を出して白色にしています。
480~500nm付近に光の弱いところがありますが、それ以外は広い範囲で光が出ています。
700nmを超えた赤外光はあまり出ていません。

街灯の白色LED化が進むと480~500nm付近ぐらいしか光害の影響を受けにくいところがありません。
しかも480~500nmでもゼロでは無いので影響があります。

カーボンニュートラルを実現するためにも無駄な照明はなくして、街灯はできる限り地面だけを照らして暗い夜空にしたいところです。
最近、自宅近くに設置された街灯は直接見ることが出来ないくらい「まぶしい」白色LED光源になっていました。
はっきり言って必要のない明るさです。
地面の照り返しが空を明るくするので必要最小限の照明にしてほしいものです。

都会でもせめて星座の形がわかる位の夜空にしたいと思うのは私だけでしょうか。

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