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鼓曲萬来

悠久の時の流れに翻弄された男

帰省ラッシュで高速は渋滞だろう
疲れも有るだろうし、田舎に戻ってた人も、
慎重に運転して事故無く無事に
家に戻って来て欲しいと思うよ
 
まあ、そういった時期だけに 
昔、婆ちゃん達からは「お盆に水に入らない方が良い」とか
「梅干と鰻は一緒に食べちゃ駄目」とか
いわゆる霊的な指導も沢山して貰ったけれど
 
そんなのさ、迷信だし、暑いから集中力の問題だろ、なんて聞く耳も持たなかったが
和太鼓を演奏するようになってから
いわゆる神社仏閣等という聖域で演奏する機会も増えて
案外霊的事象という経験も多々あった訳で
 
夏だからね、少しそういった話も良いかも
でも、まあ今回はよくある怨霊怪談話とか、ゾッとするような話じゃないんだけどね
 
それは、伊勢神宮の内宮で和太鼓を演奏するという話が持ち上がった時の事なんだ
 
伊勢神宮、知ってるだろう
つまり、日本の八百万の神の総本山
日本の神社の総元締め
ある意味権威の象徴というか
しかもその内宮で天照大御神の御前にて演奏という事だよ
 
凄い名誉ある事だけれど
僕は其のときはスケジュールの都合で行けなかったので
メンバーは西野と舞台監督の久保そして
助法(じょほう)という意味で大太鼓に岡井大二の3人で行く事になったんだ
 
岡井大二は四人囃子のドラマー
其の当時、和太鼓も演奏してみたいという事で
鼓絆のメンバーになったばかりで
まだ和太鼓というものにはそう認識も深くなかった頃だ
 
で、その話が決まった時に
僕はちょっと「うーん」という気持ちになった
正直、僕でなくて、大二で大丈夫かなって心が頭をよぎった
 
というのも、伊勢神宮とは浅からぬ縁がある訳で
歴史に詳しい方なら「天孫降臨」の話は知っているだろうけど
大国主の命が日本をそれまで統治していたのだけれど
天照大御神が国譲りを迫り
大国主はこれを受け出雲大社に祀られ
以後日本は天照の「天孫降臨」によって悠久の歴史が刻まれていくという話
 
でね一見何事もないような流れなんだけど
実はそうでもなく
大国主の二人の息子、特に次男の健御名方神(たてむなかたのかみ)は
「今まで父が統治してきた此の国を天照といえども承服致しかねる」と
天照の天軍に三度刃向い
最後には諏訪湖にまで追い詰められて蟄居を命じられたという次第
 
で、ここでお解かりになるだろうけど
我々のルーツは諏訪太鼓、それは、つまり諏訪大社の神楽であって
祀られる神は荒い風と太鼓の神、すなわち健御名方神な訳で...
 
 
当然、その事は天照大御神を祭祀する伊勢神宮側も解っていらっしゃっての話
つまりある意味、悠久の時を越えての
伊勢神宮から送って貰った、霊的和解、霊的和合という
実は遥かなる時を越えた
千載一遇の意味合いを持つ、一大イヴェントな訳です
 
西野や久保は当然そういった認識もしっかり持っておりましたから
まあ....しっかりと務めてくれるだろうとは思いましたが
問題は.....大二ww
当然様子は「伊勢には美味いものあるかな~」てな感じで
行く前から宴会方面への認識だけが深まっておりましたww。
 
で、結論から申しますと演奏は問題なく執り行われたようで
巫女の振鈴が頭上で荘厳に鳴ったとか
内宮の雰囲気はこの世では無いようだったとか
感動も多々あったようで、それはそれでよかったのですが
 
僕は西野にこう聞いたわけです
「本当に良かった、けど..別に問題はなかったか?」と
 
西野の答えはこうでした
「イや~演奏自体は良かったんだけどね
実は帰りに大二がね~ww」
 
詳細は以下の通りでした
 
1 演奏後美味しいものを食べて、楽器を積んで一路伊勢から東京へ向かう
  運転席に西野久保、後部座席に大二
 
2 大二、疲れたのか後部座席にて熟睡に入る
 
3 数時間後運転も疲れたので、トイレ休憩並びにアイスクリームを求め
  某PAに入り停車する
 
4 後部座席を見ると大二が熟睡しているので、起こすのも可哀想と
  西野久保、車両から降りてトイレ方面へ向かう
 
5 数分後、何故か大二、目が覚めて、二人がいない事に気付く
  車も止まっているので、多分何か買いに行ったのかなと思い
  自分もアイスクリームが食べたくなって車両から出る
 
6 数分後、用を足し、アイスクリームを食べながら二人が車両に戻り
  大二は後ろで熟睡してるだろうという推測の元、車を発車させる
 
7 大二アイスクリームを買って車両の場所に戻るが車は見当たらない
  携帯は車の中、財布だけ持って出たので小銭はある
 
8 携帯は変えたばかりで番号を覚えていなかったので
  あせって奥さんに公衆電話から自宅に電話を掛ける
  「あのさ~俺、パーキングエリアに置いてかれちゃったみたいてさ~」
 
9 奥さんあせって車の中の携帯に電話する
 
10 突如として後部座席の携帯が鳴り、二人は慌てる
  あた~!大二がいね~!
  奥さんからの電話
  「あの~主人がパーキングエリアに置いてかれたみたいで」
 
11 西野久保とりあえず一番近いインターチェンジを捜して一旦高速を出る
  「近くの高速の入り口はどこですか?」
   理由を説明すると思いっきり笑われる
 
12 入り口を捜して逆方向に戻り、パーキングエリアに入り
   これも反対車線のパーキングエリアに渡り大二を捜す
 
13 大二発見
 
14 車に乗せて再び目的地とは逆に進む
 
15 インターを降り、再び近くのインター入り口はどこかと尋ねる
  理由を説明して再度大笑いされる
 
16 正常な帰宅車線に戻り、車中全員無言の中、一路東京方面へ車を走らせる
 

以上

 
 
うむ、悠久の遥かなる時の霊的因縁の中でその位の事で良かった
確かに渋滞の高速の往復は大変な労力と時間が掛かったろうけど
悠久の時から比べればほんの一瞬だわ
それに、一つ間違えば
慌てふためいて前後の見境も無くなって
高速をひたすら逆走なんて
大惨事があってもおかしくないほどのスケールの
意義深い演奏だったからね
本当によかったす
 
で、やはりこれはまぎれも無く霊的事象と思える事が
多々あったので此処に記しておきますが
帰って来て大二がおかしな事を言い始めた訳で
 
お前さ~なんで確認もせずに車から離れちゃったのさ~という質問に
「何言ってるんだよ~!
目が覚めて車から出て少し行ったらさ
そこに二人がいたんだよ
そんでアイス買って来るから~って言ったらさ
二人が解ったって答えたんだよ~!
だから安心してアイス買いに行ったんだよ~!」
 
聞いてみると、当然二人はそんな記憶は無い訳で....
大二、一体、誰に会ったのよ
それに二人も、後部座席の気配とか解るだろうに
なんでいると思っちゃったのよ....
 
いや、.....いや......いや
もう事の次第、責任の所在は問うことはやめにする事に致しました
もうこれは、とても理解不能
多分、悠久の時の流れの中で翻弄された只それだけの事ですので
 
と、いう事で、かくも不思議な悠久の時の流れ
思儀するべからずと書いて不思議というww
 
根はとてつもなく深い訳でありまして
形だけいかに整えて
お互いに歩み寄ってとか
仲良くする振りをしたところで
真の霊的和解の道というのはそんなに
我々が思うほど簡単なものではございませんな
 
という事で
真夏の夜のよく考えれば怖い話ではございました。
水分しっかり取るんだよ~。

 


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