色レポ

都市・建築・インテリアを、色彩というキーワードからひも解きます。環境色彩計画に特化した企業 クリマのスタッフブログです。

時間が育てる色 その1

2008-06-30 19:05:41 | まち色
以前他スタッフが書いた素材の色むらについて。↓
http://blog.goo.ne.jp/climat-color/m/200804

面白いテーマでしたので、私も気にしながら色々見ていたら、補修にかなり気を配ったと思われる建物を見つけました。
上野にある芸大の資料館です。



これを見た瞬間、手塚治虫さんの『ブラックジャック』を連想してしまいました…。
少々、痛々しい感じもありますね。



角度によって補修の痕跡が目立ちますが、近くで見ると素材感・色むら共にかなり古いタイルに馴染みつつあるのが良くわかります。



新旧が歩み寄るには、お互いを理解し受け入れるための、ある程度の時間が必要なのだなと思いました。
時間の経過が、色を育てる。
普段、素材や色彩を選定するとき、そこまで長い時間の経過を考慮していないかも知れない、ということに気が付きます。
一度決めたら、数十年そこにあり続ける建築・構造物の素材と色彩。
改めて、より総合的な判断力を鍛えなければならないな、と気持ちが引き締まりました。

カトウ

背景ながら表情豊かな舗装の石

2008-06-27 20:01:44 | まち色
今回は2004年に訪れたLille(リール)というまちで見つけた色についてご紹介します。
リールというまちは、駅周辺には、有名な建築家の商業施設等が集まった賑わいのある工業都市です。そんな駅前から少し歩いていくと…



上の写真のような景色が見えてきました。
私が最初にこの景観に出会って最初に目に付いたのが、写真にある防護柵の色です。
日本では、お城などの歴史的建築物の周辺等を中心にこのような低彩度色でグレイッシュな防護柵を見ることができますね。
そして、まちなかでは一般的にはこげ茶色やベージュの防護柵が多いですよね。
白い防護柵もまだまだ見られるでしょう。
「まちなか=茶系」のイメージが強かった私にとって、このグレーはとても印象的でした。おまけに背景には煉瓦色の建物。
煉瓦色といえば、やっぱり茶系!と思ってしまいます。





そこで、煉瓦の建物なのにグレイッシュな防護柵を使用しているその魅力に惹かれてどんどん近づいてみると、
運河のような川のような場所にたどり着きました。
そしてそこで改めて空間全体を見てみると、穏やかなムラがつくり出す表情豊かな舗装の色が目に飛び込んでくるではありませんか。





どうでしょう。非常に豊かな色がちりばめられているではありませんか。
決して「グレー」の一言では言い表してはならない気がしませんか。
これぞ自然の素材が持つ風合いですね。






そしてもう一度視線を上げると今度は煉瓦造りの建物。
確かに普通の赤煉瓦よりは彩度の低い煉瓦ですが、それでもなお暖色系です。
そんな暖色系を基調とした外壁に、寒色系の建具を配色しています。
これがまた、グレイッシュの防護柵、舗装の石と見事に調和して
一体感のある水辺の空間を演出していました。
さすがはフランス。
またフランスが好きになりました。


あ、でも日本でも穏やかながら豊かな表情を持つ調和の取れた空間はあります。
次回はそんな日本のちょっとした空間をお伝えしましょう。
ではでは。


アヤ


裏の装い3 ‐ JAPAN

2008-06-14 17:39:39 | まち色
続いて、日本での裏の装いはどうなのでしょう。



横浜根岸の山の手にある明治時代に建てられた旧邸宅。
日本庭園と蔵がある和館と、塔のような洋館が折衷され、
西洋文化が日本に入ってきた時代背景を、心地よく体感させてくれます。

昔から日本では、木材料が容易く手に入り、高温多湿で雨の多い気候風土であることから、
日本ならではの木造建築が発達しました。

雨を凌ぐための知恵として、大きく張り出した軒。
垂木と野地板と瓦の屋根構造。
木の素材感とその構造がそのまま造形美となり、日本ならではの美しい裏の装いがそこにはあります。



日本家屋は、畳や木や紙などの自然素材で出来ているため、屋外に広がる庭園の緑が美しく映えています。
あたかも外に見える景色と室内が一体化しているかのような感覚に誘われます。

一方、鮮やかな色彩は、床の間の掛け軸や生け花、または人が纏う着物などに求められ、それらを変化あるものとして艶やかに彩ってきました。
四季折々の変化と共に、楽しみ、追及されてきたのだと思います。



こちらは、私の身内により着付けられた着物です。
四季折々の情感を着物に表現する深い世界に、いつも家でコーディネートされた着物を見て関心させられています。

人の動きによって袖元から見える裏地の色や、
裾元がハタハタと翻って覗かせる裏地の色など、表面的な見え方と着用した時の見え方では、印象がかなり違ってきます。
粋な心意気や繊細な心遣いが漂ってきそうです。

 

袷(あわせ)の風呂敷。
表地に縁起のよい鶴の絵、裏地に紋。裏地にも気を抜かない心意気。

日本の「裏の装い」は、過剰な装飾ではない、素材や造形を生かした美があり、
そこには、色彩を操る繊細な精神世界が潜在しているように感じます。


SHINOE

裏の装い2 ‐ CHINA

2008-06-14 14:42:43 | まち色
「裏の装い」といっても国が変われば、建築様式も異なり様々な装いがあるものです。



去年訪れた中国の蘇州にて、そこに散在する世界遺産の古典庭園でのある回廊です。
池や岩や樹木などで美しい小宇宙を創り出している庭園には、
庭を眺めるための回廊が、庭を囲うように廻らされています。



回廊の軒裏は、屋根構造の垂木と野地板の木材ごとに塗り分けられていました。
木材に塗装された赤茶色と白のコントラストは、日本にも西洋にもない情景を創り出し、
軒の構造がそのまま造形美となっています。

リズミカルな色彩の軒裏は、長く連なる回廊に奥行きを与え、歩く人々を美しい庭園へとやさしく誘導してくれる、そんな気がしました。



そして、こちらは、先日仕事で訪れた湖南省の長沙にて、
歴史的な街並みを形成する通りで軒裏を見上げてみました。

建物の構造は、鉄骨造だと思われますが、
軒裏やベランダ上げ裏には木造の造形美が加えられています。

日本でも、このような屋根構造の建築様式は馴染みがありますが、
美しいものは美しいものとして、如何なる西洋の建築様式が入ってきたとしても、
いつの時代においても伝承されていくのだな、と感じます。

SHINOE



裏の装い1 ‐ SPAIN

2008-06-13 21:05:31 | まち色
以前訪れた南スペインのグラナダで見かけた家並み。



白壁の民家が両側に迫る細い路地を歩いていた際、ふっと上を見上げると、
ベランダ上裏に施された色鮮やかなタイルを発見しました。
このようなタイルの扱いは、この地ではよく見られます。
きっと、スペインセラミックが盛んなこの地では、文化として建築様式にまで浸透することは自然なことだったのでしょう。




また、人の目線にある窓の側面壁の小さな面積に、タイルを施している家が多く見られ、なんだか歩いていて楽しくなりました。

街の中を歩くことによって、しっとりとした真白な壁に、色鮮やかで艶やかなタイルが時々見え隠れする様子は、
太陽の光が燦々と降り注ぐこの地ならではの風景だと感じます。

また、人と建物が密接な距離になる細い路地であるからこそ、この装いが生きていると感じます。

遠景での見え方と近景での見え方。
そんな見え方に対して、建物への装いをこの土地の人々は知っているような気がしました。

SHINOE

動く広告

2008-06-03 13:53:56 | まち色


自宅のパソコンから5年程前に撮った写真が出てきました。

場所は大阪 道頓堀の橋の上、
お揃いのユニフォームを着て女性たちが一列に並んでいます。

そうそう、

このあと彼女達は、商店街の雑踏の中をズンズン進んで行ったのでした。


広告が表示されたボックスを抱えて動き回る女の子たち・・・。
今までに見たことのない、斬新なPR方法に意表を突かれて
ついシャッターを押してしまったのです。


<シルバー ・ 黄色 ・ 赤>

この色が、
建物の外壁や看板に使われていたら
目がチカチカしてしまいそうですが、

写真に撮った光景は、
ささっと現われてすぅ~っと消えてしまう、
そんな瞬間的な動きの中にあったためか、

街のにぎわいの一部として一役買っているようでした。


kataoka

季節を感じる色 その5

2008-06-02 17:47:11 | まち色
予想より少し早い梅雨入りでした。
週末の雨にもすっかり慣れて来たところ、いよいよ本格的な雨のシーズンがやってきたか…という感じです。



おなじみ、成城学園前駅の駅ビルのバナーが新しいものに変わりました。
梅雨の鬱陶しさを晴らすような、すがすがしい青空と水に浮かぶ花々。
雨降りなんてなんのその、明るい吹き抜け空間を持つこの空間では、いつも快適にショッピングを楽しむことが出来ます。

土曜日の昼下がり、吹き抜けの広場ではボサノヴァのミニライブが行われていました。
一階の駅コンコースを行き来する人達も、思わず足を止めて聴き入っていました。

このようなまちの、ある場の賑わいは、やはり人の様々な営みがつくり出すもの。
モノや色で過剰な演出をしなくても、色々な営みを“皆が楽しむ場”が整っていれば十分のように思います。

駅上で季節ごとのミニライブやコンサートがあったり。
近くにいる人と楽しい時間や空間を共有することは、とても豊かでちょっと得をしたような気分になります。



画面の下が一階で、駅コンコースと直結しています。スーパーマーケットの正面が改札です。

カトウ