CJC Blog 

クールジャパンクリエイト・ブログ
クリエイティブな情報を配信いたします。
クールジャパンクリエイト株式会社

人体通信:電界の揺らぎを応用 機器のコードレス化、個人認証も可能

2010-05-07 | クール・ジャパン
人体通信:電界の揺らぎを応用 機器のコードレス化、個人認証も可能
 「手を近づけるだけで音楽が聴ける」「歩調から個人を識別し、不審者の侵入を防ぐ」--。生体を使ったこんな通信技術の研究が進んでいる。電波やコードの代わりに使うのは、体やモノが帯びている静電気が作る電界。動物はこの揺らぎを感知し、エサなどを捕まえているという。【河内敏康】
 ■人の周囲数メートル
 電流の担い手は電子だ。物質に電子が1個くっつくと、まわりに負の電界が生じる。逆に電子を失えば正の電界になる。
 これが「静電界」。乾燥した日に金属をさわってパチンと来る静電気が、静電界の主だ。私たちが歩いている時、地面と靴底が触れたり離れたりすることで電子は激しく移動し、電界もめまぐるしく変化する。こうした変化を「準静電界」と呼ぶ。体や金属など、電気を通す物質のまわりには常にある。
 人がじっとしている時の準静電界は体の周囲数メートルにも満たないが、歩いたりすると広がり、その影響は周囲20メートル以上に及ぶ。
 ■センサー
 準静電界は目には見えないが、感じることができる。例えばサメの頭の部分には「ロレンチニ瓶」と呼ばれる感覚器がある。海中で獲物が動いて出す準静電界をこの器官がとらえ、エサの位置を正確に割り出す。その能力は、3メートル先の砂底の40センチ下に潜っているヒラメを見つけられるほど高い。サメの仲間のシュモクザメは金づちのようなT形の頭が特徴だが、とがった頭より準静電界を感知しやすいよう、この形に進化したとも推定される。
 この器官を持たない人間も、何かが動く気配を感じることがある。武術の達人は、目を閉じていても気配で人の存在を読み取れるとも言われる。内耳にある「蝸牛(かぎゅう)」の構造がロレンチニ瓶と似ていると指摘する研究者もいる。
 準静電界を研究する滝口清昭・東京大生産技術研究所特任准教授(準静電科学)は「あくまで仮説だが、人の準静電界を内耳でとらえ、気配を感じ取っているのかもしれない」と推測する。
 ■音楽をまとう
 滝口さんは、準静電界を通信技術に応用できないか模索している。研究室でその試作品を体験した。
 ヘッドホンを装着し、机の上の黒い箱に自分の手を近づけると、耳にクラシック音楽が飛び込んできた。この箱は音楽の送信機。ヘッドホンをつけた別の人が隣に立つと、不思議なことにその人にも音楽が聞こえた。
 仕組みはこうだ。送信機のまわりには準静電界が生じている。これに手を近づけた瞬間、自分の準静電界と交わって、電波同様、音楽の情報が準静電界の中を伝わる。滝口さんは「送信機の準静電界に体の一部を入れることで音楽情報を体にまとわせられる。携帯音楽プレーヤーのコードレス化はそれほど難しくはないはず」と話す。準静電界は電波に比べて反射や散乱がなく安定しているうえ、消費電力が少ないという利点もある。
 国も準静電界の可能性に着目。03年に総務省情報通信審議会が出した答申では、「準静電界通信」が長期的に実現を目指すプロジェクトに挙げられた。
 ■改札も素通り
 準静電界は、他にも応用がきく。
 JRの改札などに普及してきた非接触型ICカードは、現時点では改札機の読み取り部分に近づけないとエラーになる。「準静電界を使えば、カバンの中にカードを入れたまま素通りしても、情報のやり取りができる」と滝口さんは言う。
 個人認証技術への応用も可能だ。人が歩くリズムには指紋と同様、個別の特徴がある。歩くことで生まれる変化のパターンを準静電界に置き換えて記憶させておくことで、特定の個人を識別できる。家の防犯システムなどへの応用が期待される。
 実用化に向けて解決すべき課題もある。例えば、情報は準静電界の中を複雑に伝わるため、情報が互いに打ち消し合ってしまう可能性がある。実用化には、こうしたことが起きないような制御の仕組みを作ることが必要だ。
s ■人の周囲数メートル
 電流の担い手は電子だ。物質に電子が1個くっつくと、まわりに負の電界が生じる。逆に電子を失えば正の電界になる。
 これが「静電界」。乾燥した日に金属をさわってパチンと来る静電気が、静電界の主だ。私たちが歩いている時、地面と靴底が触れたり離れたりすることで電子は激しく移動し、電界もめまぐるしく変化する。こうした変化を「準静電界」と呼ぶ。体や金属など、電気を通す物質のまわりには常にある。
 人がじっとしている時の準静電界は体の周囲数メートルにも満たないが、歩いたりすると広がり、その影響は周囲20メートル以上に及ぶ。
 ■センサー
 準静電界は目には見えないが、感じることができる。例えばサメの頭の部分には「ロレンチニ瓶」と呼ばれる感覚器がある。海中で獲物が動いて出す準静電界をこの器官がとらえ、エサの位置を正確に割り出す。その能力は、3メートル先の砂底の40センチ下に潜っているヒラメを見つけられるほど高い。サメの仲間のシュモクザメは金づちのようなT形の頭が特徴だが、とがった頭より準静電界を感知しやすいよう、この形に進化したとも推定される。
 この器官を持たない人間も、何かが動く気配を感じることがある。武術の達人は、目を閉じていても気配で人の存在を読み取れるとも言われる。内耳にある「蝸牛(かぎゅう)」の構造がロレンチニ瓶と似ていると指摘する研究者もいる。
 準静電界を研究する滝口清昭・東京大生産技術研究所特任准教授(準静電科学)は「あくまで仮説だが、人の準静電界を内耳でとらえ、気配を感じ取っているのかもしれない」と推測する。
 ■音楽をまとう
 滝口さんは、準静電界を通信技術に応用できないか模索している。研究室でその試作品を体験した。
 ヘッドホンを装着し、机の上の黒い箱に自分の手を近づけると、耳にクラシック音楽が飛び込んできた。この箱は音楽の送信機。ヘッドホンをつけた別の人が隣に立つと、不思議なことにその人にも音楽が聞こえた。
 仕組みはこうだ。送信機のまわりには準静電界が生じている。これに手を近づけた瞬間、自分の準静電界と交わって、電波同様、音楽の情報が準静電界の中を伝わる。滝口さんは「送信機の準静電界に体の一部を入れることで音楽情報を体にまとわせられる。携帯音楽プレーヤーのコードレス化はそれほど難しくはないはず」と話す。準静電界は電波に比べて反射や散乱がなく安定しているうえ、消費電力が少ないという利点もある。
 国も準静電界の可能性に着目。03年に総務省情報通信審議会が出した答申では、「準静電界通信」が長期的に実現を目指すプロジェクトに挙げられた。
 ■改札も素通り
 準静電界は、他にも応用がきく。
 JRの改札などに普及してきた非接触型ICカードは、現時点では改札機の読み取り部分に近づけないとエラーになる。「準静電界を使えば、カバンの中にカードを入れたまま素通りしても、情報のやり取りができる」と滝口さんは言う。
 個人認証技術への応用も可能だ。人が歩くリズムには指紋と同様、個別の特徴がある。歩くことで生まれる変化のパターンを準静電界に置き換えて記憶させておくことで、特定の個人を識別できる。家の防犯システムなどへの応用が期待される。
 実用化に向けて解決すべき課題もある。例えば、情報は準静電界の中を複雑に伝わるため、情報が互いに打ち消し合ってしまう可能性がある。実用化には、こうしたことが起きないような制御の仕組みを作ることが必要だ。
 企業も目を付けている。玩具メーカー「タカラトミー」(東京都葛飾区)は昨年4月、東京大に2年間で6000万円を寄付し、生産技術研究所内に寄付研究部門を設置、共同研究を始めた。佐藤慶太・副社長は「準静電界には可能性を感じる。今年度中には商品化できるよう開発を進めたい」と語る。


最新の画像もっと見る

コメントを投稿

ブログ作成者から承認されるまでコメントは反映されません。