6月もあと少しで終わりです。7月17日(金)の、『WAR ウォー!!』の公開日が一段と近づいてきました。ここで、主演の2人について、熱く語っておきたいと思います。主演は、リティク・ローシャン(46歳)とタイガー・シュロフ(30歳)。どちらも人気スターの息子として映画界に入り、ダンスのうまさで観客を魅了し、当代随一のアクション・スターとみなされている、という共通点を持っています。そして、もう一つの共通点は、インドでの人気に比べて、日本ではまだまだ知名度が低い、というところでしょうか。というわけで、『WAR ウォー!!』でめざせ、日本での人気沸騰! なのです。
© Yash Raj Films Pvt. Ltd.
まずは、上写真右側の先輩、カビール役のリティク・ローシャン(以下、リティク)からですが、彼は3人のカーンに続くボリウッド映画界のトップスターと言うことが出来ます。3人のカーンはもう皆さんご存じですよね、『きっと、うまくいく』(2009)などのアーミル・カーン、『恋する輪廻 オーム・シャンティ・オーム』(2007)などのシャー・ルク・カーン、そして、『バジュランギおじさんと、小さな迷子』(2017)などのサルマーン・カーンです。3人のカーンがデビューしたのが1990年前後で、リティクが正式デビューした(その前に子役での出演経験あり)のが2000年なので、一世代下になります。1970年代・80年代に二枚目スターとして人気があった父ラーケーシュ・ローシャンは、その頃は監督兼プロデューサーとして活躍しており、すでにシャー・ルク・カーン主演作『カランとアルジュン』(1995)、『コイラ~愛と復讐の炎~』(1997)などのヒット作も世に出していたため、息子のデビュー作を自らがプロデュース&監督したのでした。それが『Kaho Naa...Pyar Hai(カホー・ナー・ピャール・ハィ/言ってくれ、愛していると)』(2000/下写真)で、相手役はやはり新人のアミーシャー・パテールでした。
Photo by Pradeep Bandekar
サスペンス仕立てのこの恋愛映画は大ヒットし、2000年の興収トップ10で第2位にランクインします。それだけではありません、同年に公開されたリティクの主演作は、『アルターフ 復讐の名のもとに』が興収第3位、『Fiza(フィザー)』が興収第8位と、とてもデビューしたばかりの新人俳優とは思えない結果を残すのです。『アルターフ』は原題を『Mission Kashmir(カシミール作戦)』と言い、のちに『きっと、うまくいく』のプロデューサーとなるヴィドゥ・ヴィノード・チョープラー監督が撮った、監督の故郷カシミールが舞台の政治がらみアクション大作でした。この作品は、インドに進出したハリウッド・メジャーであるソニー関連会社が配給に関わったことから、日本のソニーが『ラガーン』(2001)と共にDVD発売を決めます。劇場公開されなかったのは残念ですが、下のように日本版DVDが手に入るのがありがたいですね。『アルターフ』は、ある事情からイスラーム教徒過激派になっていく青年アルターフ(リティク)が主人公なのですが、彼を過激派闘士として育て上げる活動家の役がジャッキー・シュロフ、つまりタイガー・シュロフの父で、そんな所から2人のご縁は始まっていくのでした。
その後もリティクはたくさんのヒット作を世に出していきます。シャー・ルク・カーンの弟役で、アミターブ・バッチャンやカージョル、カリーナー・カプールと共演した大ヒット作『家族の四季 愛すれど遠く離れて』(2001)は、日本でも2008年に「ボリウッド・ベスト」という特集上映で一般公開されたのですが、ちょっと時期尚早だったのかあまり話題にならずじまい。でも、DVDが発売されました。続いて、リティクと父ラーケーシュ・ローシャンとが生み出したヒット作シリーズとして、「クリシュ・シリーズ」と呼んでもいい作品があるのですが、その中の3作目が『クリッシュ』として短期間公開され、DVDになります。このシリーズは原題もちょっとややこしく、次のような続き具合になっています。1作目の主人公は知的障害があるけれど抜群の学者脳を持ったローヒト、2作目以降はローヒトの息子で、超人的な身体能力を持ち、仮面のヒーローとして活躍するクリシュ、となっており、ローヒトもクリシュもリティクが演じています。
① 2003年『Koi...Mil Gaya(誰かに...出会った)』
② 2006年『Krrish(クリシュ)』
③ 2013年『クリッシュ(Krrish 3)』
こういったところが日本版ソフト発売されていますので、『WAR ウォー!!』のリティク事前学習には最適かと思います。ほかにもリティクの代表作はいろいろあり、アクションとダンスが炸裂したのが、『WAR ウォー!!』の製作会社ヤシュ・ラージ・フィルムズが作っている泥警シリーズ『Dhoom(騒ぎ)』の2作目『Dhoom 2』(2006)。見事なダンスが見られるシーンがいくつもあるのですが、オープニング・タイトルのシーンを付けておきます。本当に、リティクのダンスはセクシーで魅力的です。
Dhoom Again - Full Song (with Opening Credits) - Telugu Version - Dhoom:2
リティクの映画はほかにも、日本のいろんな映画祭で結構上映されています。『チャンスをつかめ!(Luck by Chance)』(2009)、『カイト(Kites)』(2010)、『人生は一度だけ(Zindagi Na Milegi Dobara)』(2011)、『火の道(Agneepath)』(2012)、『バンバン!(Bang Bang!)』(2014)などですが、ご覧になった方はラッキーですね。ほかにもカメオ出演している作品等も日本版ソフトが出ていますので、今度の作品でリティクの素晴らしさに目覚めた方は、ぜひ過去作品もご覧になってみて下さい。
さてお待たせしました、もう1人のハーリド役のタイガー・シュロフ(以下、タイガー)ですが、上のチラシでは右側になります。タイガーは本名をジャイ・ヘーマント・シュロフと言い、父は1980年代から90年代にかけて、ワイルドなイメージのスターとして人気を誇ったジャッキー・シュロフです。「ジャッキー・ダーダー(ジャッキー兄貴、ジャッキー親分)」というのがあだ名で、2000年代以降もスマートなナイスミドルとして、父親や大物実業家、マフィアのドン役等々でたくさんの映画に出演しています。最近では、『サーホー』(2019)にも出演していたのはご存じの通りです。プラバースの父親役を演じたジャッキー・シュロフの写真、お借りします、ツイン様。タイガーのファンになった方、なりそうな予感がする方は、『サーホー』もマスト!で見ておいて下さいね。
タイガーは父がトップスターとして活躍している時に生まれ、3歳下の妹と共に、父親に可愛がられて育ちました。なぜこんなことを知っているかというと、タイガーはムンバイのアメリカン・スクールに通っていたのですが、実はそこには、日本人駐在員のお子さんたちも結構通っていたんですね。で、以前、ムンバイで駐在員の奥様方とお目にかかった時に、「うちの子と同じクラスに、ジャッキー・シュロフさんのお子さんがいるんですけど、とても子煩悩なパパでいらしてね、父兄参観などにもご自分でおいでになるんですよ」との話を聞いたことがあるのです。捜せば、「僕、アメリカン・スクールでへーマント君(タイガー)と同じクラスでした」という日本人の方が出てくるかも知れません。
タイガーの出演作品も、日本での劇場公開作は『WAR ウォー!!』が初めてであるものの、ソフト化や映画祭上映、配信等で何本かが日本に紹介されており、すでに日本にはかなりの数のファンがいるようです。今度の公開を機に、ファンはさらに増えるものと思われます。タイガーの主演作一覧は以下の通りです。
2014 『ヒーロー気取り(Heropanti)』
2016 『Baaghi(反逆者)』
『フライング・ジャット(A Flying Jatt)』~ソフト発売
2017 『Munna Michael(ムンナー・マイケル)』
2018 『Welcome to New York(NYへようこそ)』(カメオ出演)
『タイガー・バレット(Baaghi 2)』~ソフト発売
2019 『Student of the Year 2(スチューデント・オブ・ザ・イヤー2)』
『WAR ウォー!!』~劇場公開
2020 『Baaghi 3(反逆者3)』
タイガーは学生時代からテコンドーをやっていたとかで、身体能力の高さはボリウッド随一と言ってもいいかも知れません。もう1人、アクション俳優としてはヴィドユト・ジャームワールがいるのですが、タイガーの方が10歳ほど若い分、身体のキレが冴えわたります。ダンス能力も高く、特にアクロバティックな動きをさせるとリティクよりも上かも、と思わせられるほど。残念ながら、しなやかさやセクシーさではリティクにまだまだ敵いませんが、タイガーは昔からリティクとマイケル・ジャクソンが自分の目標だった、と常々言っているとおり、『WAR ウォー!!』でもリティクと一緒に踊るシーンでは、敬意とライバル意識とを表出させながら踊っている感じが見て取れます。それだけに、2人で踊る「Jai Jai Shiv Shankar(シヴァ神万歳)」は名場面となっています。
Jai Jai Shivshankar - Full Song | War | Hrithik Roshan, Tiger Shroff | Vishal & Shekhar, Benny Dayal
これが大画面で見られると思うと、公開日の7月17日(金)が本当に楽しみですね。リティクの方はもう1曲、ヴァーニー・カプールを相手に軽くダンスを見せてくれる曲「Ghungroo (グングルー=踊りの時の足鈴)」がありますが、タイガーももう1曲踊ってほしかったです....。『WAR ウォー!!』の公式サイトはこちらです。前回の「『WAR ウォー!!』の裏の裏<1>」は、公式ツイッターでご紹介いただき、アクセスがだいぶ増えました。インド映画ファンの皆さん、どんどんツイートをして盛り上げて下さいね!