アジア映画巡礼

アジア映画にのめり込んでン十年、まだまだ熱くアジア映画を語ります

『ムトゥ 踊るマハラジャ』の見どころ・聴きどころ

2018-11-17 | インド映画

リニューアル版『ムトゥ 踊るマハラジャ』、いよいよ23日(金)から公開です。公式サイトはこちらです。私も初日、新宿ピカデリーの大画面で見たいのですが、まだスケジュールが出ません。早く予約したいです、新ピカさん。ラーナー・ダッグバーティー舞台挨拶付き『バーフバリ 王の凱旋』絶叫上映は、瞬殺でチケットが取れなかったため(涙)、『ムトゥ』はそこまでではないとは思いつつも、あせっています。20年前に『ムトゥ』を見た方も、一度もスクリーンで見たことがない方も、一緒に盛り上がりましょう!

その『ムトゥ』ですが、見どころ、聴きどころをちょっとお教えしておきましょう。

1.ソング&ダンスシーンのゴージャスさ

歌は全部で6曲使われています。作曲はもち、A.R.ラフマーン、そして作詞は詩人でもあるヴァイラムットゥと鉄板のコンビです。曲の中で、豪華なダンスが付いているのが次の4曲です。
①主(あるじ)はただ一人
②菜食の鶴
③グルヴァーリ村で
④ティッラーナー、ティッラーナー
それぞれ簡単に解説しておきます。

©1995/2018 KAVITHALAYAA PRODUCTIONS PVT LTD. & EDEN ENTERTAINMENT INC. 

①主(あるじ)はただ一人
”スーパースター”ラジニカーントの作品には、冒頭に必ずと言っていいほど、主人公を紹介する歌が出て来ます。私はこれを”お名乗りソング”と呼んでいるのですが、主人公がどういう人物か、外見を説明するというよりも、彼の信条、主義主張を歌いあげるソングなのです。『ムトゥ』のこの歌でも、主人公ムトゥの忠誠心(主は主人であり、時には神にも通じる表現です)や「運命に打ち克て」という人生観、そして金銭感覚なども歌い込まれて、「このおっさん、何者?」と思わせてくれます。ムトゥはこの時、馬車を駆っているのですが、途中でいろんな人が間奏部分に登場し、群舞シーンを繰り広げてくれます。


©1995/2018 KAVITHALAYAA PRODUCTIONS PVT LTD. & EDEN ENTERTAINMENT INC.  

②菜食の鶴
ムトゥの主人、ラージャが「結婚を決めた」と言うので屋敷中が大騒ぎになり、ラージャの嫁は私、と信じている従妹のパドミニがしゃっくりをし始める....。彼女は嬉しいことがあると、すぐにしゃっくりが出る体質なのです。その「ヒック、ヒック」から始まるという意表をついた歌で、タイトルの意味は「菜食の鶴がいたのに、おいしそうな鯉を見て菜食の誓いを破り、その鯉をパクリ=独身主義と言っていた旦那様ラージャも、好きな女性ができたら結婚する、とすぐに誓いを破った」というもの。ラージャの恋のお相手は、旅回りの劇団でヒロインを張るランガナーヤキ(ランガ)なのですが、そんなこととはつゆ知らず、パドミニは舞い上がります。前のご紹介でも書きましたように、ものすごいカット数のソング&ダンスシーンとなっており、屋敷の召使い全員+αの群舞に加えて、あひるやらくじゃくやらも踊るというトンデモなミュージカル・シーンです。おまけに、恋愛指南役の老女が出て来て、これまた強烈なキャラクターのおばあさん、という、何度見ても飽きないソング&ダンスシーンです。

©1995/2018 KAVITHALAYAA PRODUCTIONS PVT LTD. & EDEN ENTERTAINMENT INC.

③グルヴァーリ村で
ムトゥが旦那様ラージャとランガの芝居を見ていると、地方のヤクザの親分が彼女を自分のものにしようと乱入、その場からムトゥの馬車で逃げたムトゥとランガは、彼らの馬車軍団の猛追から逃れ、タミル・ナードゥ州の隣の州、ケーララ州に逃げ込みます。旅回りの一座であちこち行っているランガは、ケーララ州の言葉マラヤーラム語もお手のもの。言葉のわからないムトゥをからかって、さんざんな目に遭わせます。それがわかったムトゥは怒り沸騰、水浴びをしようとしていたランガを見つけ、彼女に突進しますが、その勢いで二人は川縁の岩場を転がり、川の中へ。そして、互いの愛情に気づき”濡れ場”となるのですが、この川へどぶん!までのシーンがまた見もの。二人が転がるだけでなく、ビーズ玉などもころがる、全編で一番美しいシーンとなっています。こうして恋を自覚した二人が、トライブ、その地方の先住民の人たちとおぼしき男女と歌い踊るのが「グルヴァーリ村で」です。先住民っぽい衣装から始まって、ケーララ州の名物と言える舞踊カタカリやモーヒニー・アーッタム、象祭りなどが登場し、二人の恋が熟成していきます。この中で、ムトゥがランガを楽器ヴィーナのように横抱きにして、それに「サファイアのヴィーナが...」という歌詞が重なるのですが、そこのパートを歌っているのは、何と!先日東京国際映画祭で上映された『世界はリズムで満ちている』のラージーヴ・メーナン監督のお母様なのだとか。秘話を聞かせてもらって、唖然としました。


©1995/2018 KAVITHALAYAA PRODUCTIONS PVT LTD. & EDEN ENTERTAINMENT INC.

④ティッラーナー、ティッラーナー
これはもう、想像を絶するデザインのソング&ダンスシーンです。空想の中で、恋愛感情の高まったムトゥとランガが舞い踊る、というシーンなのですが、6回も衣装とセットの色が変わるのです。オレンジ、緑、青、黄、黒、赤とメインカラーが変わり、細部のいろんなカラーリングも見事。よく見ると、登場するオブジェのあれこれもよく考えてあり、こういうコンセプトを考える美術監督ってすごいなあ、と思ってしまいます。誰だったんでしょう? 4K&ステレオでしかも大画面、すごいインパクトですよ~。


©1995/2018 KAVITHALAYAA PRODUCTIONS PVT LTD. & EDEN ENTERTAINMENT INC.

2.お話&キャラの荒唐無稽さ

お屋敷の御者ムトゥが、本当は...という貴種流離譚なのですが、細部が荒唐無稽で、一筋縄ではいかない物語です。ラジニカーント作品は、すごい強烈なキャラクターが出て来たり、本筋とは関係ないキャラが異彩を放ったりと、「映画の文法とは違ってるんじゃない?」的作品が多いのですが、『ムトゥ』は一段とトンデモ度が高いです。脚本も監督のK.S.ラヴィクマールなのですが、ご本人もケーララの農園主役でカメオ出演しているので、「喰えないおっさん」(失礼!)ぶりがちらと見られます。さて、どんなトンデモ・キャラがいたっけ?というのは、ご覧になってのお楽しみ。また、歌の歌詞には「なんちゃってマラヤーラム語(ケーララ州の言葉)」が使ってあるところもあります(↑)。ヴァイラムットゥ、それでいいのか?


©1995/2018 KAVITHALAYAA PRODUCTIONS PVT LTD. & EDEN ENTERTAINMENT INC.

3.名脇役総出演

主人公はムトゥ(ラジニカーント)で、ヒロインはランガ(ミーナ)なのですが、脇も壮壮たるスターたちが固めています。まず、ワルの方ではラージャの屋敷を乗っ取ろうとする叔父役にラーダー・ラヴィ。同じ頃日本で公開された『インディラ』(1996)でも悪役でしたが、最近も『サルカール』(2018)などで活躍中。そしてもう1人、お屋敷の奥様の夫役のラグヴァランも、最初はハンサムなヒーロー役として、やがて悪役としても活躍していましたが、残念ながら2008年に亡くなりました。
さらに、コメディアンがすごい。この頃、タミル語映画のコメディアンと言えばこの人、だったセンディルに、この作品ではまだ駆け出しに近かったのに、今や押しも押されぬコメディアンのトップの1人となったヴァディヴェール。この前も、ヴィジャイ主演の『マジック』(2017)でその馬面(失礼!)を見たばかりです。いやもう、最強の布陣です。このあたりも、ぜひ楽しんで下さいね。

では、23日(金)、新宿ピカデリーでお目にかかりましょう!



コメント    この記事についてブログを書く
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする
« 意外なところにボリウッド・... | トップ | 第19回東京フィルメックス:... »
最新の画像もっと見る

コメントを投稿

ブログ作成者から承認されるまでコメントは反映されません。

インド映画」カテゴリの最新記事