以前にもちょっとご紹介したアニメーション映画『手塚治虫のブッダ -赤い砂漠よ!美しく-』が、来週土曜日、5月28日からいよいよ公開となります。全国一斉ロードショーなので、お近くの劇場でぜひご覧下さい。上映劇場がわかる公式サイトはこちらです。なお、「手塚治虫」の「塚」は本当は旧字の方なのですが、うまく探し出せないのでこのままでごめんなさい。コピペしても文字化けするため、すべて新字体になっています。
<c>2011「手塚治虫のブッダ」製作委員会
先週舞台挨拶付きの試写を見せていただいたのですが、その日は全国の公開予定劇場のいくつかで同時試写が行われているとかで、吉永小百合、堺雅人、吉岡秀隆さんら声優さんたちが、被災地東日本の劇場で見ている皆さんに熱いエールを送っていたのが印象的でした。余談ながら、ブッダ、つまりシッダルタの声を吹き替えた吉岡秀隆さんは、この日舞台の袖で出を待っている時にスタッフと間違えられ、「ちょっとマイク持ってて」と言われたとかで苦笑い。そういう控え目な雰囲気の声が、シッダルタにはよく似合っています。
声と言えば、途中シッダルタの宮殿で美女たちが踊るシーンがあるのですが、そこで流れる歌はインド古典声楽の専門家井上貴子さんの声だとか。また、踊りの振り付けは、フィルミー・ダンスで有名な野火杏子さんによるものだそうです。そのほか、インド古典音楽の日本人演奏者もいっぱい協力しているという話を聞きました。このシーン、原作漫画では第2巻のP.170あたりに登場します。
実は原作漫画では、このシーンの踊り子たちはほとんど衣服をまとっていません。手塚治虫は「ブッダ」も大人向けの漫画として描いていて、子供でも読めなくはないものの、”お子様には毒”のシーンも結構出てきます。今回のアニメーション映画『手塚治虫のブッダ -赤い砂漠よ!美しく-』も原作にかなり忠実に描かれているため、お子様よりも大人の観客向け作品になっているのですが、それは亡き手塚治虫の望むところでしょう。
手塚治虫のアニメーション作品に、『千夜一夜物語』 (1969)があります。下はその映画の公開時のパンフレットです(スキャナーが小さくて、一部画像が切れています)。このパンフレットの冒頭に、手塚治虫はこう書いています。
「アニメーションは子供のためのものだけではない。おとなのためのアニメーションがあってしかるべきだ。というのが私の持論であり、かねてから、”大人のためのアニメーション”を作るのが念願でした(以下略)」
その言葉どおり、『千夜一夜物語』は大人の鑑賞に堪える美しい映像に加え、エロティックな表現が満載で、公開当時見に行った私は仰天しました。この作品は制作・総指揮が手塚治虫、脚本・構成が深沢一夫と手塚治虫、そして美術監督がやなせ・たかしで、キャラクター・デザインを担当したのはやなせ・たかしです。今にして思えば、「アンパンマン」風味の「アラビアン・ナイト」だったわけですが、あまりにも女性のヌードがたくさん登場するので、私は、小島功の漫画みたい....と思ったりしました。それはさておき、子供向けだと思われていたアニメに大人向けの作品が登場した、しかもかの手塚治虫の作品だ、というので、当時大いに話題になったのでした。
あれから40年、大人向けのアニメなんて、もう当たり前ですね。そう言えば手塚治虫はいつ亡くなったんだっけ、と手塚治虫のオフィシャルサイトを見たら、何と「ブッダ」の原作第1巻が期間限定ながら無料配信中だそうです。原作を読んでから『手塚治虫のブッダ -赤い砂漠よ!美しく-』を見ると面白さが倍加しますので、こちらで予習をどうぞ。
手塚治虫の没年は1989年。まだ60歳だったんですね。あのヒョウタンツギが懐かしい.....。