アジア映画巡礼

アジア映画にのめり込んでン十年、まだまだ熱くアジア映画を語ります

48時間で映画を作る

2013-12-10 | 日常

先日、ちょっと面白い体験をしました。タイ料理のランチを食べながら、パソコンでショート・フィルムを見せてもらったのです。映画のタイトルは『ぷりてぃーまじかるらんちぼっくす さかもと』。京都の立命館大学の映画制作サークルNTKSの作品なのですが、何とこの映画、企画から完成まで48時間という制限の中で作られた作品なのです。

見せてくれたのは、柴田クマール・アージュン(Arjun Kumar Shibata)さん。お名前からわかるように、お父さんがインドの方で、お母さんが日本の方というハーフの青年です。現在立命館大学映像学部の3回生で、来年卒論にボリウッドの映画産業を取り上げたい、ということから、私の所に相談にいらしたのでした。はい、笑顔の素敵なこんな方です~。

紹介して下さったのは、かの有名なインド人取材コーディネーターC.M.カプールさん。カプールさんは、周防正行監督がインドに行って取材した関西テレビの番組「踊る! インド映画紀行」(1999)のコーディネーター兼通訳のほか、いろんな番組や取材の手助けをしてきた方です。カプールさんの会社レオナールドインターコミュニケイションズのサイトはこちらです。

カプールさんと柴田さんのお父さんクマールさんは古くからの友人だそうで、お二人とも日本にやって来てン十年、苦労をしながら事業を成功させてきた方々です。クマールさんは現在は貿易業に従事しておられますが、一時期名古屋を中心に「インド料理 クマール」というレストランを展開していたこともあるそうで、憶えておられる方もあるのでは。

柴田さんは立命館大学に入ったあと、映像学部で勉強するかたわら、自主映画を制作したり、映画の上映会の運営などをしたりしています。また、今年春にはインターンシップで、9月に公開された李相日(リ・サンイル)監督作品『許されざる者』に関わり、研修生として勉強したりもしたそうです。李相日監督は『フラガール』 (2006)や『悪人』 (2010)で名前を知られている監督です(私は高校生が主人公のデビュー作『青-chong-』が好き)が、『許されざる者』は西部劇の名作『許されざる者』 (1992/監督・主演クリント・イーストウッド)を明治初期の北海道に移し替えたもので、渡辺謙、佐藤浩市らが主演しています。公式サイトはこちらです。

そんな経験を生かし、今回サークル仲間と共に挑んだのが「The 大阪 48 Hour Film Project」。これは、大阪の会場で映画のジャンルやいくつかの制限条件が決められてから、48時間以内に映画を完成させなければいけない、という過酷なプロジェクト。企画から脚本、キャスティング、ロケ地選定、撮影、ポストプロダクションまで、すべて48時間以内に終わらせないといけないのです。「うそやん!」と思わず大阪弁が出てしまいますが、柴田さんたちは実にユニークな作品を作り上げました。柴田さんたちのサークル、NTKSに与えられた条件は以下の通りです。

【 The 大阪 48 Hour Film Project 】 HP

ジャンル:ロマンス (Romance)
登場キャラクターの名前:男性なら「坂本 士郎」、女性なら「坂本 由樹」
登場させる職業:”教師” (Teacher)
登場させる小道具:弁当箱  (a lunchbox)
登場させる台詞:「そっちじゃない、こっち。」 ("Not that one. This one.")

なぬぬ、教師に弁当箱??? 『スタンリーのお弁当箱』DVD絶賛発売中!)ならピッタリですね。ところが、立命館大映画サークルNTKSが作ったのは、こんな面白い作品でした。まず、作品のクレジットをどうぞ。

チーム名:NTKS

作品タイトル:『ぷりてぃーまじかるらんちぼっくす さかもと』
上映時間:8:00

監督・脚本:宮崎陽平
企画   :遠藤広隆、山本琢也
エグゼクティブプロデューサー:遠藤広隆
プロデューサー:柴田クマールアージュン、新保松風
助監督  :川田直紀、出町健太朗
撮影   :大西辰弥、宮崎陽平、梶原京介
照明   :梶原京介
照明助手:中村紀彦、木村英士郎、今村友也
録音   :松本浩明
録音助手:平木大地
美術   :筒井朝子、安東濃子、今村友也
編集   :宮崎陽平

VFX ディレクター:山本琢也
VFX アシスタント:岡村陸、沢田匡広、筒井朝子、松尾祐海、今村友也、木村英士郎、宮崎陽平

出演:遠藤広隆、今村友也、山本理沙、香月英明、柴田クマールアージュン、坂井耀一郎

どうです、本格的でしょ? 特撮だって、いっぱい使ってあるのです。では、『ぷりてぃーまじかるらんちぼっくす さかもと』こちらでどうぞご覧下さい。

 
「僕も出演しています。どの役だか、わかりましたか?」

いや~~~、なかなかのものですねー。特に、お弁当箱に顔が、というアイディアがユニーク。この特撮の加工も含めて48時間で作ってしまったなんて、ちょっと信じられません。「撮影時間が押してしまって、最後のシーンは一部が夜になってしまってるんですよ。それがちょっとねー」と柴田さんは言いますが、そんなことも気にならないぐらい面白いです~。
 
その面白さが受けて、ベストキャラクター賞&助演男優賞(お弁当役:今村友也)を受賞し、また観客賞でも第3位になったとか。確かに、お弁当箱師匠役の人、お上手でした。皆さん、学生ながらすごいですねー。
 
柴田さんは、将来インドと日本の映画産業界を繋ぐような仕事をしたい、とのこと。日本生まれでずっと日本育ちなので、メンタリティはモロ日本人(も~のすごく礼儀正しくて、メールも敬語使いまくり!)ですが、そのうちインド人の血が騒ぎ出すかも知れません。彼の将来の活躍に期待しましょう。
 
 

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2 コメント

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Unknown (imustah)
2013-12-13 23:43:55
突然こんなところに書きこんでしまってすみません。
R大学4年の者です。(名前、逆から読んでみてください)

先日「スタンリーのお弁当箱」を拝見して
どうしても先生とお話したくなってしまいました。

先生の過去の記事を拝見して、共演の2人が
親子だと知って驚きました。

インドではあのこわ~い先生のような暴君が
たくさんいるのでしょうか?
imustah様 (cinetama)
2013-12-14 09:57:46
コメント、ありがとうございました。

関東にあるR大学の方ですね。お名前を反対に読んですぐ、熱心に授業を聞いて下さった時のお顔が浮かびました。もう4年生で、来春はご卒業なんですねー。

で、『スタンリーのお弁当箱』ですが。こわ~い先生、というと、理科の女性の先生も恐かったですね。スタンリーの工作をひと言のもとに切り捨てたりして。
スタンリー役のパルソー君のお父さんであり、監督でもあるアモール・グプテーが演じた先生も、恐いというか、いやしん坊で理不尽なことを言う人になってましたね。あれは、誰からもお弁当を作ってもらえない孤独な人間なので、性格がゆがんだ、ということのようです。

最後のご質問ですが、私はインドの先生に関する知識が少なくて、ちょっと答えられません。一般的に言って、インド人は教育を重視しており、厳しい先生が多いようですが、親も教師も教育に関するチェック能力が高いので、あんな暴君のような先生はすぐ教師失格とみなされてしまうのでは、という気もします。

そういう厳しい教師の薫陶を受けて、インドの生徒&学生は本当によく勉強します。友人の家にお邪魔して、お子さんの宿題や試験の話を聞くと、日本、負けてるかも...と思います....。

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