アジア映画巡礼

アジア映画にのめり込んでン十年、まだまだ熱くアジア映画を語ります

インド映画で専修大ゲスト講義&インド映画特別講座準備

2022-06-01 | インド映画

本日は、昔非常勤講師をしていた専修大学でゲスト講義をしてきました。専修大の非常勤講師(半年とか1年とかの契約で雇われる外部講師)を2006年に始める時お声を掛けて下さったN先生の「表象文化研究」という授業で、毎回異なる講師が登壇する、という形の授業です。非常勤講師は70歳で雇い止めになるのですが、こういうゲスト講師(?正式名称が何かあるのかも)は70歳を過ぎてもOKとのことで、毎年お声を掛けて下さいます。今年はN先生のレジュメ見本が最初に添えられていて、「おお、こういうのが表象文化研究か!」と思わず膝を打つ内容だったため、それから学びつつ、自分の回の内容もちょっとそれっぽくしたりして、楽しい授業準備と本番講義をすることができました。

 

今回はインドのカースト問題を描いた2本の映画(↑)を取り上げたのですが、特に『裁き』(2014)は、今回見直してみてカメラをフィックスして撮った長回しが多いことに気づき、あらためて脚本の良さ、映像表現の巧みさ、監督の演出の上手さなどに舌を巻きました。『裁き』は専修大の授業で予告編だけを使ってやったことのある5年前から、折に触れていろんな機会に何度も取り上げているのですが、毎回何かしら発見があります。昨年出した本「新たなるインド映画の世界」(PICK UP PRESS)の執筆者アンケートで、「インド映画オールタイムベスト10」に入れたのは正しかった、とガッツポーズをしたくなりました。

   

今回は、カースト差別との闘いを表象しているもののお話が中心で、上のようなビームラーオ・アンベードカルの市販ステッカー(ムンバイの文具街で12枚組みで売っていた)画像を使い、「アンベードカル・ブルー」と呼ばれる青色についても説明したりしました。その他、インドのいろんな「色」がどんな意味を持っているのかというのも、取り上げた例は少なかったのですが、準備中にあれこれ調べてみたりしたので自分でもとても勉強になりました。ずっと昔、当時国立民族学博物館の教授だった今は亡き江口一久先生(西アフリカ研究者)が、「(京都弁で)あのな、教える、ちゅうことは最大の勉強になるんやで」と言って下さった言葉を思い出します。アフリカ研究プロジェクトを事務職員として担当し、お茶出しや資料のコピー取り等をやっていた私に、どうしてこういう言葉を掛けて下さったのか記憶がないのですが、もしかしたらある大学の先生から、一度映画の授業の講師をしてくれないかと言われ、初めてのことでビビっていたので、ついそんな相談をしたのかも知れません。それから20年余り、いろんな大学の非常勤講師を重ねてきたのですが、いつもこの江口先生の言葉が思い出され、「ほんまに、先生の言わはる通りやったですわ~(こっちは大阪弁)」と天に向かって御礼を言っている私です。

 

この江口先生の至言は、もう7年近く続けてきた「インド映画講座」でも当たっていて、毎回素晴らしい質問が出たり、終了後に伺う参加者の方のお話が目からウロコだったりして、私の「学びの場」になっています。シャー・ルク・カーンの息子が薬物所持の疑いで逮捕された時は、英語のニュースをすべて検証して、「あの逮捕の背景には実は...」というお話をして下さった方があったりとか、本当にすごいんですよ、うちの講座の参加者は。その楽しみなインド映画講座、今週土曜日から、特別講座の新しいテーマ「インドの歴史映画」が始まります。取り上げるのは上の作品2本ですが、まだお席に空きがありますので、概要を下に付けておきますね。(下に両方の現地版ポスターを付けてみたら、何となく構図が似ているような...。一人の男性を巡る恋のさや当てという構図が共通、と言えばそうですね...)

  

スペース・アーナンディ/インド映画特別講座②
インドの歴史映画
 ~『バジラーオとマスターニー』&『ラガーン』~

スペース・アーナンディの「インド映画特別講座」、2回目は「インドの歴史映画」を取り上げます。
インド亜大陸は、インダス文明の頃から数えると約5,000年の歴史を持つ地域です。日本と同じように歴史上の事件を映像化した作品も多く、日本で上映・公開・配信されたものだけを見ても、テレビドラマの『ポロス 古代インド英雄伝』(2017)に描かれたポロスとアレキサンダー大王の戦いは紀元前326年の事件、『アショーカ王』(2001)は紀元前3世紀の物語、『パドマーワト 女神の誕生』(2018)は13世紀のイスラーム勢力侵入時、インド映画中最も有名な歴史映画と言える『偉大なるムガル帝国』(1960)はムガル帝国第3代アクバル大帝の時代(1556-1605)の末期、さらに『マニカルニカ ジャーンシーの女王』(2019)は1857年のインド大反乱が舞台、というように、古代から近代直前の19世紀末までに材を取った歴史映画が数多く作られています。
その中で今回は、18世紀のマラーター王国の宰相バジラーオ(バージーラーオ)とその2人の妻との関係を描いた『バジラーオとマスターニー』(2015)と、イギリス統治時代の1893年を舞台にした『ラガーン』(2001)を取り上げます。どちらも皆さんすでにご覧になっていると思いますが、『バジラーオとマスターニー』はサンジャイ・リーラー・バンサーリー監督、『ラガーン』はアーシュトーシュ・ゴーワーリーカル監督と、どちらも実力派の著名監督による作品であり、映画としても非常に見応えがあります。
さらには、『バジラーオとマスターニー』は歴史的事実に基づき、バジラーオ役のランヴィール・シン、妻カーシーバーイー役のプリヤンカー・チョープラー、マスターニー役のディーピカー・パードゥコーンという三大俳優が演技の火花を散らす作品ですし、一方『ラガーン』はいわば架空の物語ですが、アーミル・カーンという主役に多数の個性的な脇役が力を合わせて作られた群像歴史劇という作品になっています。また、『ラガーン』は後半の約1時間がクリケットの試合に当てられているように、スポーツ映画、クリケット映画と言ってもいい側面も持っています。個性の違う歴史映画を比べて見ることで、インドにおける歴史映画の製作テクニックにも触れてみたいと思います。

 日時:2022年 6月4日(土)  15:00~17:30  
                  6月18日(土) 15:00~17:30 
                 7月2日(土)  15:00~17:30 
                           (お好きな日をお選び下さい)
 場所:スペース・アーナンディ(東急田園都市線高津駅<渋谷から各停18分>下車1分)
 定員:11名                                                
 講座料:¥2,500(含む資料&テキスト代)
 講師:松岡 環(まつおか たまき)

※お申し込みはこちら、スペース・アーナンディのHP「受講申し込み」からどうぞ。

これから未完成のレジュメを仕上げないといけません。最後に付ける「歌で憶えるヒンディー語」の歌は何にするかなあ...。『ラガーン』も『バジラーオとマスターニー』も、いい歌が複数あって決めかねます。歌詞を歌って憶えると、言葉はすごくよく身につきます(ただし広東語はダメ。なぜなら歌の歌詞が基本、普通話=標準中国語だから)。ま、準備がんばりますので、ぜひいらして下さいね~。最後に、『バジラーオとマスターニー』のソング&ダンスシーンを一つ付けておきます。うーむ、しかしこれは歌詞が一部マラーティー語じゃないの、私、マラーティー語はわからないし、「歌で憶えるヒンディー語」とは言えないし、ダメかぁ...と、悩みはまだまだ続くのでした。

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