アジア映画巡礼

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マヘーシュ・バーブの”声”に浸った『Guntur Kaaram』

2024-01-16 | インド映画

インド映画三昧の1月上半期の〆は、テルグ語映画『Guntur Kaaram(グントゥールの辛味)』。マヘーシュ・バーブの新作で、NTR Jr.主演作『アラヴィンダとヴィーラ』(2018)や、アッル・アルジュン主演作『Ala Vaikunthapurramuloo(ヴァイクンタプラムにて)』(2020)等のヒット作を放っているトリヴィクラム・シュリーニヴァース監督の最新作です。マヘーシュ・バーブの魅力的な声には2時間半たっぷり浸れたのですが、ちょっと弱いところもある作品で少々残念でした。簡単にですが、ご紹介しておこうと思います。

『Guntur Kaaram(グントゥールの辛味)』

 2024年/テルグ語/162分/英語字幕
 監督:トリヴィクラム・シュリーニヴァース
 出演:マヘーシュ・バーブ、シュリーリーラ、ミーナークシー・チャウダリー、ラムヤ・クリシュナ、プラカーシュ・ラージ、ジャガパティ・バーブ
ほか

舞台となるのは、アーンドラ・プラデーシュ州のグントゥール地方。ちょうど州の中間部で、海岸線からちょっと内陸に入った場所にある地域です。唐辛子が有名なようで、プラバース主演作『ミルチ(唐辛子)』(2013)もグントゥール地方が舞台になっていたと思います。1998年、そのグントゥールで、唐辛子生産と流通を受け持つサティヤム(ジャヤラーム)の屋敷を襲い、倉庫を焼いたのはならず者マルクス(ジャガパティ・バーブ)とレーニン(スニール)兄弟とその手下たち。ところが、レーニンが争いで殺されてしまい、サティヤムは自分がやったと言って12年の刑で服役することに。サティヤムには妻ヴァスンダラ(ラムヤ・クリシュナ)と息子ラマナがいたのですが、高名な政治家ヴェンカタ・スワーミ(プラカーシュ・ラージ)の娘であるヴァスンダラは、ラマナを婚家に置いて実家に帰ることになります。

成長したラマナ(マヘーシュ・バーブ)は、叔母(父の妹)のブジや従妹のラジー(ミーナークシ・チョウドリー)、そして刑を終えて戻ってきた父らと共に昔ながらの屋敷に住んで唐辛子業を継いでいましたが、ある日、祖父の意を受けた弁護士パニ(ムルリー・シャルマー)から呼び出しを受けます。パニとその助手のバトゥ(ヴェンネラ・キショール)がラマナにサインを迫った書類は、「自分、ラマナはヴァスンダラとは無関係である」という内容の書類で、祖父が命じたものでした。というのも、ヴァスンダラは祖父の後継者として政界に進出しており、その前に再婚もしていたので、ラマナの存在はスキャンダルの元、と祖父が考えたためでした。母の冷たい仕打ちにラマナは傷つき、あの手この手でサインを拒みます。その過程で、ラマナはパニ弁護士の娘アムー(シュリーリーラ)と知り合い、いつしか二人は恋仲に。そして最後には、母の冷たい仕打ちの謎も解けるのでした...。

自主上映会に来ていたのは、ほぼ9割がインド人の皆さん。日曜日ということもあってか、お子さん連れがとても多かったです。面白かったのはマヘーシュ・バーブの登場シーンで、タメが非常に長く、後ろ姿をさんざん映してから自動車を降りるシーンで初めて正面の姿が登場するのですが、そこでの客席の反応がインドの映画館そのもので、歓声と指笛が飛び交い、拍手も出て盛り上がりました。いいなあ、こういうの。でも映画自体は残念ながら極上の出来とは言えず、マヘーシュ・バーブを輝かせるだけのプロットができていない、という感じ。その他細部でも、「マルクスとレーニン兄弟って、ケーララ州じゃあるまいし」と白けたり、職場である唐辛子倉庫の真ん中に簡易ミニバーみたいな酒瓶林立テーブルが置いてあるとか、主人公にビーリー(インドで一番安い葉巻タバコ)を吸わせまくったりとか、笑いを取ろうとしているのだか何だかわからない描写も多く、主人公のキャラの削り上げ方が今ひとつでした。トリヴィクラム・シュリーニヴァース監督、ちょっと手を抜いてしまったんでしょうか。予告編はこちらです。

Guntur Kaaram Theatrical Trailer | Mahesh Babu, Sreeleela | Trivikram | Thaman

 

そのため、興収がひまひとつ伸びていないようです。今日現在で108カロール~127カロール・ルピー(10億8千万ルピー~12億7千万ルピー)で、製作費の20億ルピーの元が取れるかどうかちょっと心配です。映画を見終わった後、よくお目にかかるインド映画ファンの方から教えてもらったのですが、インドではこの作品よりも、同日に公開された『Hanu Man(ハヌ・マーン)』という映画がヒットしていて、公開されている劇場数も『Guntur Kaaram』を抜きそうだ、とのこと。確かに『Hanu Man』は、20カロール・ルピー(2億ルピー)の製作費なのに、もう100カロール・ルピー(10億ルピー)という興収になっていますね。プラシャーント・ヴァルマーという若い監督の作品のようですが、予告編を見てみると、CGとVFXが巧みなニューヒーローもの、という感じです。お、タイトル文字が中国語や日本語でも出てきます。日本にも売る気満々か? 製作会社もあまり有名ではないところみたいなので、お安いかも知れませんよ、上映権。配給会社様、いかがですか? 予告編を付けておきますので、どうぞご検討下さい。

HanuMan Official Trailer - Telugu | Prasanth Varma | Teja Sajja | Primeshow Entertainment

 


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