アジア映画巡礼

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『PS-Ⅰ:黄金の河』に溺れる幸せ③人々を繋ぐトリックスター

2024-05-14 | インド映画

うかうかしているうちに、『PS-Ⅰ:黄金の河』(2022)の公開週となってしまいました。このブログでもこちらこちらでご紹介したように、『ボンベイ』(1995)等の名監督マニラトナムが指揮を執った、実に壮大で華麗な歴史劇作品が今週金曜日、5月17日から皆様の前に姿を現します。この作品、特に第一部の出来が見事で、当初インドではアイシュワリヤー・ラーイ演じるナンディニと、トリシャー演じるクンダヴァイ王女の豪華な衣装やアクセサリー姿が話題となっていたのですが、そこに込められた強靱な女性たちの実像が明確化するにつれ、歴史を現代に蘇らせていくマニラトナム監督の手腕に賞賛の声が上がりました。かたや男性主人公は、チョーラ朝の第一王子アーディタ(ヴィクラム)と第二王子アルンモリ(ジェヤム・ラヴィ)なのですが、『PS-Ⅰ』で彼らを押さえて目立っているのが、アーディタ王子の友人である剣士デーヴァンです。演じるのは、『囚人ディリ』(2019)で日本でも人気が沸騰したカールティ、というわけで、ちょっとカールティ演ずるデーヴァンの雄姿と活躍をご紹介しましょう。

© Madras Talkies ©Lyca Productions

『PS-Ⅰ 黄金の河』 公式サイト  
 2022年/インド/タミル語/167分/原題:Ponniyin Selvan Part One பொன்னியின் செல்வன் 1 /字幕:大西美保・監修:小尾淳・協力:安宅直子
 監督:マニラトナム
 出演:ヴィクラム、アイシワリヤー・ラーイ、ジェヤム・ラヴィ、カールティ、トリシャー・クリシュナン
 配給:SPACEBOX
5月17日(金)全国順次公開ロードショー/6月14日(金)より続編『PS-Ⅱ 大いなる船出』公開予定!

© Madras Talkies ©Lyca Productions

デーヴァンは最初、兄王子アーディタと共に戦いに身を投じています。戦いが一区切りついた時、アーディタはデーヴァンに、「カダンブル城へ行け。密談が行われるから、内容を父上と王女に知らせろ」と命じて送り出します。前にも書いたように、このカダンブル城へ行く途中でデーヴァンが会うのが、輿に乗って進む美女ナンディニなのですが、その後デーヴァンは、ナンディニの侍女から「魔法使いの弟子」と誤解されたのをいいことに、大胆にもナンディニの館に入り込んで彼女の前にあらわれるは、スパイと間違えられて(いや、見破られて、と言うべきか)捉えられたのにまんまと逃げ出すは、等々、本当にもうやりたい放題をして見せます。映画の開始から1時間ほどの間、観客はすっかりカールティ演じるデーヴァンに翻弄され、大笑いしながら彼の魅力に絡め取られてしまうのです。この魅力を以前の紹介では、「『囚人ディリ』(2019)のキャラを裏返しにしたような、陽気でおっちょこちょい、でも凄腕の剣士を演じるカールティは、画面を縦横無尽に暴れ回り、最高に魅力的」と書いたのですが、まさにトリックスターとでも言うべきキャラになっていて、王権にからんでくるから本物のトリックスターだわ、などと思ったのでした。

© Madras Talkies ©Lyca Productions

カールティはもう皆さんご存じだと思いますが、タミル語映画の大スターであるスーリヤの弟で、2004年にチョイ役で映画に出た後、2007年に『Parthiveeran(パルティ村の英雄)』で正式デビューしています。このデビュー作でも、フィルムフェア賞の南インド映画カテゴリーでタミル語映画の最優秀男優賞を始め、いろんな賞を獲得しているのですから、元々俳優に向いた人だった、と言うことができるでしょう。その後も、2010年封切りの3作品ではまたまた賞にノミネート、2014年の『マドラス 我らが街』や、前出の『囚人ディリ』でも賞を獲得と、この人ほど受賞&ノミネート・リストが長いスターも珍しいのではないかと思います。本作でもいろいろ賞にノミネートか、と思いきや、これが無冠とはちょっと納得できませんが、まあ他の出演者も名優揃いなので仕方がなかったのかも。マニラトナム監督との仕事は初めてですが、マニSir、撮りながら何度も吹き出したのではないかと思います。ヴィクラム演じるアーディタ王子は、苦悩するシーンが出てきてどちらかと言うと暗ーいイメージですし、ジェヤム・ラヴィ演じるアルンモリ王子の方は、あまりにもできすぎの感があり、一番人間くさくて面白いのがカールティ演じるデーヴァンなので、私にとっての人気投票第一位というわけです。

© Madras Talkies ©Lyca Productions

上のシーンは、トリシャー演じるクンダヴァイ王女に近づくために、クリシュナ劇の敵役であるカンサ・マーマー(カンサ伯父)の役を出演者から奪って舞台に登場したデーヴァンが、まんまと王女に会えたところなのですが、あまりのおかしさにクンダヴァイ王女も苦笑を禁じ得ず、という顔ですね、これは。彼のやりたい放題はまだまだあり、皆さんもこのトリシャーみたいな顔をしながら楽しまれることと思います。デーヴァンは後半でもまたアクションで大活躍するのですが、それも楽しみにしていて下さい。では、そんなアクションシーンもちらと見られる、本作の予告編をどうぞ。17日(金)は、ぜひ大スクリーンで見て下さいね!

映画『PS1 黄金の河』予告編

 


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