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アジア映画巡礼

アジア映画にのめり込んでン十年、まだまだ熱くアジア映画を語ります

『ダバング 大胆不敵』脇役讃歌<2>

2014-07-24 | インド映画

『ダバング 大胆不敵』、公開まであと丸1日を残すのみです。暑い夏がもっと熱くなるまで、もう秒読み段階ですね。さて、前回の美女ご紹介に続いて、今回はおっさんの皆さんです。

インド映画は、ファンの方でもまだまだ顔の区別がつかない脇役が多いことでしょう。ここのところ気になるのが、『マダム・イン・ニューヨーク』の英語学校の同級生、ラマ役の人を、『きっと、うまくいく』のチャトゥル役の人と間違えているツイートがちらほらあること。南インド出身のラマ役をやったのは、『マダム・イン・ニューヨーク』のパンフレットにもある通りラージーヴ・ラヴィンドラナータンという男優(名前からして、自身も南インド出身のようですね)で、チャトゥル役はインド系アメリカ人のオーミ・ヴァイディヤという男優(ルーツはゴアだとか)です。オーミ・ヴァイディヤ、『きっと、うまくいく』のヒット後2、3年はインド映画に出ていましたが、今はどうしているのやら。ジュニア・アーティストと呼ばれる脇役人生はキビシイのです。

その点、『ダバング』の脇役陣はベテランばかり。しかし、それぞれにやはりキビシイ人生も背負っていまして....。では、まずはこの方から。

ヴィノード・カンナー Vinod Khanna


チュルブル・パンデー(サルマーン・カーン)の義理の父であり、マッキー(アルバーズ・カーン)の父親プラジャーパティ・パンデー役です。チュルブルを嫌って、何かというとチュルブルと対立する役なんですが、私のひいき目のせいかあまり悪者には見えず、チュルブルいじめの根っこがようわからん、と思えてしまいます。それというのも、昔のカッコいい姿を見すぎたせいかも知れません。

1946年10月8日生まれのヴィノード・カンナーはもうすぐ68歳になるんですが、30~40年前のカッコよさといったら! 1968年に映画デビューし、70年代に入ると次々と主演作がヒットしていきます。私が好きなのは、『ラクシャー・バンダンの紐(Kuchhe Dhaage)』(1973)、『いけにえ(Qurbani)』(1980)、そしてアミターブ・バッチャンと共演した『アマル・アクバル・アントニー』(1977)や『養育(Parvarish)』(1977)、『運命の帝王(Muqaddar Ka Sikandar)』(1978)など。そう、当時はアミターブ・バッチャンに負けないぐらいの人気スターだったのでした。


でも、80年代に入ると、宗教家ラジニーシュに心酔して彼のアシュラムに入ってしまい、やがて人気は下火に。再び映画の活動を始めたのは90年前後で、以後父親役や警部役など、脇の重要な役で出演を続けています。この間さらには政治家にも転進、先日の選挙では国会議員に選ばれました。息子2人も俳優で、ラーフル・カンナー、アクシャイ・カンナーと言えば名を聞いた人も多いはず。アクシャイ・カンナーは、東京国際映画祭で上映された『ガンジー、わが父』(2007)の主演も務めていました。2人ともまだ独身のようで、パンデーさん同様息子に関する気苦労は絶えないのかも。

 

アヌパム・ケール Anupam Kher


こちらはもう皆さんよくご存じでしょう。今回は州の大臣である政治家ダヤルの役です。とんでもない悪役から、『シャー・ルク・カーンのDDLJラブゲット大作戦』(1995)や『命ある限り』(2012)のよきパパ役まで、幅広い役柄をこなすアヌパム・ケールは、これまでの出演作が何と約370本。アジアフォーカス・福岡国際映画祭で上映された『私はガンディーを殺していない』(2005)など、芸術系の作品にも顔を出しています。『ベッカムに恋して』(2002)や『ラスト、コーション』(2007)等、海外作品でも引っ張りだこです。

妻は『恋する輪廻 オーム・シャンティ・オーム』(2007)のオームのお母さん役を演じたキラン・ケール。息子シカンダル・ケールも俳優なのですが、こちらの知名度はいまひとつ。アヌパム・ケールが主宰する演技学校にでも入り直した方がいいかも知れません。アヌパム・ケールはほかに、映画製作者、映画監督でもあり、ボリウッドで最も忙しい脇役俳優と言えそうです。実はアヌパム・ケールは、昨年もご紹介しているので、こちらもご参照下さい。

 

オーム・プリー Om Puri

Photo by Pradeep Banderkar

『ダバング』では、警部カストゥリラールを演じています。この役もいまいちよくわからない役で、チュルブル・パンデーと敵対するチェディ(ソーヌー・スード)の腰巾着といった風情。カストゥリラールの娘とチェディとの結婚が決まっているらしく、何かというとチェディは「それなら娘との結婚は取りやめるぞ」と脅します。それでカストゥリラールはチュルブル・パンデーのことをいろいろ探ろうとするのですが....。最後はどうなったんだっけ???

実は実は、オーム・プリーも昨年詳しくご紹介したので、こちらをどうぞ。(手抜き、、蹄抜き~)

 

ティーヌー・アーナンド Tinu Anand


この人も『ダバング』のスチールがなかったので、Wikiから写真をいただきました。『ダバング』ではマッキーの恋人ニルマラの父親役です。学校の先生という設定になっているのですが、これは少々ミスキャスト。この人、卑屈な小男とか、小ずるい中年男をやらせると抜群にうまいのです。生年月日が不明ですが、1968年に映画俳優としてデビューしているので、すでに60歳は過ぎているのでは、と思います。

ティーヌー・アーナンドがその名を知られるようになったのは、映画監督としてでした。監督デビューは、リシ・カプール主演の『世界は俺のポケットの中に(Duniya Meri Jeb Mein)』(1979)。続いて、アミターブ・バッチャン主演作『カーリアー(Kaalia)』(1981)を監督するなど、80年前後はちょっとした売れっ子監督だったのです。そのうちに脇役でいろいろ出演することが目立ち始め、監督なのに演技も上手なんだ~、などと思っていたら、すっかり俳優業が板についてしまいました。監督作品は9本あり、これもアミターブ・バッチャン主演の『私は自由だ(Main Azaad Hoon)』(1989)や『少佐殿(Major Saab)』(1989)など、悪くない出来の作品でした。う~ん、俳優業の方がお金になったのかしら?

日本で公開された作品では、『ボンベイ』(1995)ではヒンドゥー教徒指導者役(バール・タークレーとそっくりだ、というので問題になった)、『地獄曼荼羅アシュラ』(1993)ではヒロインの義兄役などで出演しています。特にシャー・ルク・カーン主演の『地獄曼荼羅アシュラ』のワル親父役はうまいです。


マヘーシュ・マーンジュレーカル Mahesh Manjrekar

残念ながら画像がありませんが、ヒロインであるラッジョー(ソーナークシー・シンハー)の父親役です。情けない格好でしか出てこないので、顔もさだかには憶えてもらえないかも。でも実はこの人、優れた監督であり、俳優としてもうまく、おまけに政治活動もやっているのです。憶えておいて損はありません。そうそう、彼の公式サイトがありました。こちらで顔が確認できます。

「~カル」という名前からわかる通り、マハーラシュトラ州の人で、1958年8月16日ムンバイ生まれ。今55歳ですね。監督としてデビューしたのは、1995年のマラーティー語映画『母(Aai)』。そして1999年にはヒンディー語映画に進出し、サンジャイ・ダット主演で撮った『真実(Vastav:The Reality)』で一挙に注目されます。1人のヤクザ者の生き様を描いた『真実』に続いて、タッブー主演の『存在(Astitva)』(2000)も緊張感溢れる作品となり、一躍マヘーシュ・マーンジュレーカル監督は将来を嘱望される監督となったのでした。


ところが、その後は監督としてよりも、脇役俳優として有名になっていきます。そのきっかけは2003年にサンジャイ・グプター監督が撮った『トゲ』でした。この作品は2003年の東京国際映画祭アジアの風で「リメイクと呼ばれる創造:アジアでリメイクする/される」という特集で上映されたのですが、『トゲ』はタランティーノの『レザボア・ドッグス』のリメイクでした。その中でマヘーシュ・マーンジュレーカルは一番クレイジーな役を演じ、主演のサンジャイ・ダットやアミターブ・バッチャンを食ってしまったのです。多分ここから、彼の脇役人生は監督人生を乗り越えて始まってしまったのだと思います。下写真、金髪の男がマヘーシュ・マーンジュレーカルです。


その後たくさんの映画で印象的な役柄を演じていきますが、何と言っても強く印象に残っているのは、『スラムドッグ$ミリオネア』(2008)のギャングのボス、ジャーヴェード役。主人公のジャマールが想い人ラティカと再会するシーンで、ラティカを囲っているボスが出てきます。あれがマヘーシュ・マーンジュレーカルで、貫禄十分な演技でした。


こんな豪華な脇役陣が、大暴れするサルマーン・カーンを支える『ダバング 大胆不敵』。7月26日(土)からシネマート新宿、シネマート心斎橋にていよいよ公開です。公式サイトをご参照の上、劇場にお出かけ下さい。


 


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