アジア映画巡礼

アジア映画にのめり込んでン十年、まだまだ熱くアジア映画を語ります

TIFF2023-DAY6:中国語圏の学校生活・天と地の2作品

2023-10-28 | 香港映画+台湾映画

本日は、ヒューリックホール東京で初めて作品を見てきました。元はTOHOシネマズ日劇があった場所で、東京フィルメックス会場にいつも使われている有楽町朝日ホールの向かいにあたる、有楽町センタービルの11Fにあります。今回のTIFFでは初日から明日まで、いろんな作品が上映されていますが、香港映画『年少日記』ではプレスの席が前方部分の両翼に確保されていて、ゆったりと見られて助かりました。上映終了後はQ&Aがあり、これに参加するのも今回初めて。通訳にサミュエル周先生が出ていらしたので、それも嬉しかったのですが、映画はなかなかにシリアスな作品でした。

『年少日記』

ALL RIGHTS RESERVED © 2023 ROUNDTABLE PICTURES LIMITED

 2023/香港/広東語/原題:年少日記
 監督:ニック・チェク [卓亦謙]
 出演:ロー・ジャンイップ(盧鎮業)、ロナルド・チェン(鄭中基)、ショーン・ウォン(黄梓樂)
 今後の上映日時:11/01(水) 10:20- 

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ある中学(日本で言えば高校)で教える鄭先生(ロー・ジャンイップ)の教室で、放課後清掃した用務員が生徒が書いた遺書をゴミ箱から発見します。鄭先生は同僚の先生と共に、誰が書いたのか秘かに調べていきますが、なかなかその生徒を特定できません。ヴィンセントという名前からゴッホを連想させる男子生徒はイジメに遭っていますが、彼でもなく、また別の女子生徒も違うと判明。この事件は鄭先生に、自分の家族に起こった過去の出来事を思い出させます。幼い頃、兄の傑仔(ショーン・ウォン)は常に出来のいい弟と比べられ、実業家である父から「成績が悪い、ピアノが上達しない」と言っては折檻されていました。傑仔の逃げ場はマンガ「パイレーツ」とぬいぐるみとの会話のみ。ビルの屋上に行っては「僕は香港大学に入るんだ!」と叫んで自分を鼓舞する傑仔でしたが、成績は上がらず、ついには留年して弟と同じクラスになる羽目に。父は母のせいだと言って母にも暴力を振るい、母は家を出て行きます。傑仔は絶体絶命の窮地に立たされてしまい...。

ALL RIGHTS RESERVED © 2023 ROUNDTABLE PICTURES LIMITED

そんな幼児期体験があったせいか、鄭先生は中学時代のクラスメートの妹で、紆余曲折を経て結婚した最愛の妻リナにも、妊娠がわかると「父親になる自信がないんだ」と中絶を懇願、それが元でリナは家を出て行ってしまいます。それでも結婚指輪をはずさずに、教師の仕事を誠実に続ける鄭先生。そんな時、父が倒れたという連絡が、父の秘書から入ってきます...。

胸がつぶれるような作品でしたが、それでも現在のパートでは少しは救いが見られるシーンもあり、最後は謎も解けて少しホッとしたものの、子役の2人がよくがんばったこと、と涙が出そうになりました。終了後はニック・チェク (卓亦謙)監督と、主演のロー・ジャンイップ(盧鎮業)が登壇し、Q&Aがあったのですが、本日はまずはその時の写真だけをどうぞ。お二人とも最初に日本語できちんと挨拶するなど、なかなかのサービス精神でしたが、ニック・チェク監督はもちろんのこと、ロー・ジャンイップもなかなか雄弁で、難しいこの作品について解説してくれました。

 

 

 

 


『成功補習班』

©2023 Drama Draft Dragon Film Production Co., Ltd.

 2023/台湾/中国語/原題:
 監督:ラン・ジェンロン [藍正龍]
 出演:ジャン・ホァイユン、チウ・イータイ、ジャーリーズ・ラム
 今後の上映日時:11/01(水) 13:10- 

©2023 Drama Draft Dragon Film Production Co., Ltd.

こちらは[ワールド・フォーカス:台湾電影ルネッサンス2023]の1本として上映された作品で、『年少日記』とは真逆の学園コメディというか、塾コメディになっています。「成功補習班」という塾で学ぶ、主任の息子である”和尚”こと王尚禾(巫建和)に、しょっちゅう何か食べている食堂の息子張正恆(懐雲)、その家に居候している程翔(邱以太)は、塾の問題児たち。クラスメートの憧れの的陳思(林奕嵐)にいいところを見せたいと思えば思うほど、墓穴を掘ってしまう張正恆でしたが、新しく採用された陳俊志先生(侯彦西)は英語の授業にかこつけてみんなに正しい性知識を教えてくれたりして、補習班は結束を固めていきます。やがて陳先生はゲイだとわかり、主任は彼をクビにしますが、その後もみんなと先生の交流は続くのでした...。

©2023 Drama Draft Dragon Film Production Co., Ltd.

監督は人気俳優でもあるラン・ジェンロン(藍正龍)で、彼自身の体験が元になっているとか。陳先生の影響でみんながLGBTQに目覚めたり、中でも和尚はあららの結果になったりと、ちょっと羽目を外しすぎの面がなきにしもあらずですが、笑わせながら人として大事なことを教えてくれる映画とでも言いましょうか。1994年からお話が始まるので、2003年のSARS騒動が出てきたり、エンドロールの音楽は張國榮(レスリー・チャン)の「♫モニカ」だったり、3人がギャアギャア騒いで見るエロ本が飯島愛の写真集だったりと、ノスタルジーを感じさせるシーンもたっぷり盛り込まれています。当時のまだ大型のビデオカメラを手にして、張正恆がいろんな映像を撮るのもご愛敬で、ラン・ジェンロンもあんなことやっていたのか~と下の顔が二重写しになります。

ネットで見つけたポスターがなかなかいいので、サイズを小さくして5人分付けておきますね。台湾映画って、1980年代から同じような学園ものを撮っていた気がしますが、皆さん結構、学校や塾にはいい思い出が多いのかも知れません。学歴社会の香港と学園天国の台湾、対照的な2本の作品でした。

  

 


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