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さくらと旅とつーくんと

日々成長していくものたちと、出来事たちの記録

ある部長の優雅なひと時

2010-09-26 10:58:11 | 小話

これは、ある会社の夕方の出来事。

 

「携帯を出しなさい」

いつも通りの面倒な作業に没頭していた時に、いきなり背後から声を掛けてきたのは滅多に会話なんてしない部長。

内心「げっ!やばい!」と思ったのは、この部署が携帯の持ち込みを禁止したフロアにあるため。
規則では、決められたロッカーに携帯を預けないといけない。

そんな面倒な規則をいちいち守っている社員なんてほとんど居ない事は暗黙の了解なのだが、まさか部長相手にそんな事は言えない。
携帯がカバンの中に入っているのは明白なのに、「持ってません」なんて白々しいことも、言えない。

・・・・どうしよう・・・

声を掛けられた瞬間に、無表情を装った顔のまま何通りもの言い訳を頭の中で考えていた。

が、これが抜き打ちのチェックだろうと、携帯を持っているのはみんな一緒だし、それでペナルティがついても仕方ないと腹を括り、部長に見えないように溜息をつきながらカバンから愛用の「iPhone」を出した。

そのとたん、待ち構えていた部長から一言。

「何だ、iPhoneか」

・・・部長、何ですか?そのがっかり感たっぷりな一言はーーー!

と思ったのは内緒。
携帯を持っているか、ちゃんとロッカーに仕舞っているかの抜き打ちチェックじゃないのかよ?!
と思ったのも、内緒。

出された携帯がiPhoneだと分かった瞬間に興味を失った部長は、次に隣の席で仕事をしている同僚にも同じ質問をしていた。

やっぱり一瞬、頭の中で葛藤をした同僚が、でも仕方なしに携帯を出している。
彼の携帯は、二つ折りの、某キノコのキャラをマスコットにしているメーカーの物。

その携帯を見るなり、部長が一言。

「おい、パケ放題入っているか?」
「はい、入っていますけど・・・」

彼もまた、何のことだ?という表情をしながら、部長を見上げている。
たぶん、他の面々も同じ思いで聴き耳を立てているんだろう。

そんな事は気にもかけていない様子の部長はうれしそうな声でのたまった。

「アドレス教えろ。怪○ロワ○ヤル、やるぞ♪」

きっと、「えっ???なんですか??」と思ったのは、一人や二人ではないだろう。

その後、部長はこのフロアの全員の携帯をチェックし、アドレスをゲットしながら「怪○ロワ○ヤル」を広めまわっていた。

そして、隣の席の同僚が困惑しながら見せてくれた携帯の画面には怪○ロワ○ヤルのサイトを経由して部長から送られてきたであろう「お友達になってね♪」なんてメッセージ。

一通りアドレスをゲットした部長は「みんな、早くレベル上げろ」と言い残し、意気揚々と家路についたのであった。

みんなが残業してまでがんばって作業している時に、定時でさっさと帰る部長にそんな事言われて、ムカッとしたのは一人や二人じゃないだろう。

「そういえばあの部長、怪○ロワ○ヤルにはまっていたっけ・・・」
とか
「あの部長、また怪○ロワ○ヤルの仲間集めしてるんだ・・・」
とか
「いつ、こんなゲームしろと・・・・?」
なんて言葉が聞こえてきたのは、部長が帰った後。

 

くそ忙しいこの部署での、これはそんな優雅なひと時。