去る三月に始まった備蓄米の放出は、3回の一般競争入札で約31万トンが落札され(落札価格は消費税込みで22,477円/60キログラム)、うち約21万トンが落札者に引き渡されたという。
約21万トンのうち、落札者から卸売業者へ引き渡されたのは三割未満、卸売業者から小売業者へ引き渡されたのは一割未満という。
落札者に引き渡されたの備蓄米の一割未満しか小売業者に届かないのは、なぜだろうか。誰かが倉庫に溜め込んでいるのか。それとも、小売業者以外の需要家へ売却済みなのか。
農林水産大臣は、せっかく放出した備蓄米を誰かが倉庫に溜め込んでいる、と考えているように思われる。それゆえ、次回の備蓄米の放出は、スーパーの店頭で2,000円/5キログラムで販売されるように、30万トンを小売業者に随意契約で売り渡すと発言したのだろう。そうすれば、"誰か"が慌てて倉庫の備蓄米を売るので、結果的にコメの価格が下がる、と。
郵政民営化ならぬ、農政民営化を実現するつもりですかね。信念を持つのは良いことだ。
2,000円/5キログラムは、24,000円/60キログラム。精米して袋詰めして運んで売るコストを差し引くと、次回の放出価格は幾らになるのか。過去3回の落札価格に比べてはるかに安値なら、過去の落札者に事後的に補填する必要があるかもしれない(少なくとも恨みは買うだろう)。
それにしても、備蓄米を3か月で60万トン超も放出して良いのかしら。毎年約20万トンを買い入れて備蓄しているというから、約3年分だ。備蓄米って何のための備蓄だっけ。
さて、どうなることやら。短期的にも長期的にも、どうなるか予測不可能。
「農政はノー政」って最近は言わないのかしら。言う気も失せたのか。牛乳が余った!バターが足りない!とか、どうせまた起きるだろう。
コメ離れは、長期的に明らかな傾向。人の命を脅かすレベルの猛暑や大雨が続いているのは、ご存知の通り。コロナ禍は、緊急事態宣言の当時に比べれば落ち着いた。円安でどこもかしこも外国からの観光客が押し寄せる。
コメは、高いんじゃなくて、足りないのだと思う。農水省は認めたくないようだが、不作が続いたはず。食べる口は増えた。結果は自明。
大口需要家は、おそらく長期契約でコメを確保しているのだろう。小売業者がスポット市場で買えるコメは無い。それが現状ではないか。
最近の物価高がコメの生産コストを引き上げているのは、疑いない。長過ぎたデフレ不況と、直近のコロナ禍で、コメの価格は下がり過ぎた。
やっと適正価格が実現するかという時に、農水大臣が「異常な価格高騰」と発言するの、もう諦めるしかない。世論が大臣発言を支持するのなら、もう絶望するしかない。
4回目の備蓄米放出がどうなるのか、注目している。日本の未来が決まる時。