まだ僕が船会社のサラリーマンになる前、 もうじき就職…という時期に知り合った
5歳年上の 看護師・Yさん。 AB型・28歳。
彼女は、東京・要町のアパートで一人暮らし。 有名な大病院に勤務していました。
23歳の新社会人と、 28歳の看護師さん。
まるで、オトナと子供です。
彼女の行動、 彼女の話し方、
何を見ても、 何を聞いても、 憧れの気持ちが強くなるばかりでした。
新入社員である、僕の配属先は三重県。 大都会・東京は遥か彼方です。
年の差…、 遠距離……、 僕の恋心が、成就する条件は何ひとつありませんでした。
学生時代、 僕はいつも恋愛の主導権を取っていました。
(年上相手の恋愛経験がなかったせいもありますが…)
ところが、Yさんの前では 尻尾を激しく左右に振る、小型犬のようになってしまうのです。
働き始めた僕は、 お金が貯まる度、東京へ行き、Yさんとデートしてもらいました。
場所は、 TDLだったり、 池袋だったり、 鎌倉だったり。
「付き合ってもらってる」感が否めない、 オトナの女性と青二才のデート。
そして、 いつもYさんの口癖を聞いては、 敗北感一杯で帰路の新幹線に乗り込むのです。
「MICKくんは、若いんだし、希望に満ちた新社会人なんだから、
こんなおばさんを相手にしてちゃダメよ。
きっと近いうちに、貴方にお似合いの若いお嬢さんが現われるわ。」
しかし、その言葉は僕にとって、恋の炎に油を注ぐような 「魔法の呪文」だったのです。
知り合ってから半年余りが過ぎた頃、 Yさんの誕生日が近づいて来ました。
Yさんが遠距離電話の向こうで僕に対して突然言った言葉は、 実に意外なものでした。
「MICKくん、 私の誕生日、部屋に泊まりに来る?」
つづく
