2000年10月、
ひとりの老人が死出の旅へと旅立ちました。
享年 68歳。
逝くには、多少早すぎた年齢でした。
とうちゃん。
よく殴られたな。
よく泣かされたな。
今でも かすかに鼻の奥のほうで血の臭いがするよ。
とうちゃん。
私とはずいぶん違って真面目な人だった。
でも、 ほんの少し 私も似ている部分がある。
白か黒か きっちりケリをつけるところとか、
きれいな女の人には目も合わせられないところとか。
とうちゃん。
ふたりで 仏通寺までサイクリングしたね。
とうちゃんは 36歳、私は9歳 だったよね。
1日がかりで すごく大変だった。
でも とても楽しい想い出だ。
(なぜ弟は連れて行かなかったのだろう)
とうちゃん。
よく2人で 喫茶店にプリンを食べに行ったね。
どういうわけか「かあちゃんには内緒じゃけえのお」。
とうちゃんと私の秘密の味、、 プリンだったね。
とうちゃん。
最後の2年は入院で大変だったね。
いつも車椅子に乗せられて、 それでも煙草だけは吸い続けて。
とうちゃん。
葬儀のとき、弟は回りもはばからず号泣したんだよ。
あいつ、 とうちゃんと私との「プリン」に気付いてたのかな。
とうちゃん。
とうちゃん。
「ちっぷー」
最期の言葉が忘れられないよ。
私のこと 愛してくれてたんだね。
とうちゃん。
ようやくわかったよ、 13年たって…。
とうちゃん。 ほんとうにありがとう。
とうちゃん