雪害の記録 2006 Apocalypse

君死にたもうことなかれ

(広島)水路転落訴訟、福山市と遺族和解

2005年10月06日 | 防災一般
二〇〇〇年十二月、福山市の市道脇の水路に自転車ごと転落して死亡した同市の会社員男性=当時(34)=の遺族が、水路を管理する市に約一億一千万円の損害賠償を求めた訴訟の控訴審は五日、広島高裁で、市が遺族に賠償金四千五百万円を支払うことで和解した。

 訴えによると、男性は五年前の十二月二十八日未明、同市沖野上町一丁目の市道を自転車で帰宅中、ふたの切れ目から水路に落ちて死亡した。

 広島地裁福山支部は今年二月、「ふたが途切れていた上、転落防止の措置が取られておらず、設置管理の瑕疵(かし)があった」と市の責任を認定。約五千九百万円の支払いを命じる判決を言い渡した。市は六割の過失を不服として控訴していた。

 原告代理人は「ようやく市が過失を認めた。時間がかかったが、行政の水路対策が一歩前進し、意義ある裁判となった」と話した。羽田皓市長は「あらためて亡くなられた方に哀悼の意を表する。本件を教訓とし、より安全性の高い道路、水路になるよう整備を進め、再発防止に努めたい」としている。

 福山市内では、市街地の水路に転落して死傷する事故が絶えず、男性の事故後も水路転落による交通死亡事故が十三件に上っている。市の管理責任を問う初の訴訟で、市側は過失を認めて損害賠償に応じた。

 ■市街化急速 防止策は後手

 市街地の水路に転落して死亡する交通事故が相次ぐ福山市で、管理する市の責任を初めて問うた訴訟は五日、市が損害賠償金を支払うことで和解した。高度経済成長期、周辺の田園地帯に急速に押し寄せた市街化の波。後手に回った福山の市街地整備の象徴が、農業用水路でもあった。和解は長年、転落防止策を怠ってきた責任と、今後の損害賠償の可能性を、市自らが認めたことになる。(山本和明)

 事故は五年前、JR福山駅の南方約二・五キロの沖野上町で発生。未明に自転車で帰宅中の会社員=当時(34)=が水路に転落し、亡くなった。「夫のためにできることはすべてやった。裁判は、安全な水路の整備に向けた第一歩になったと思う」。今は防府市に住む会社員の妻(39)は和解成立を受け、こう語った。

 福山市に記録が残る二〇〇〇年以降、この六年弱の間に、和解した事故を含め十六人が水路転落で命を落とした。年齢も三十四―八十二歳と特定の世代には集中していない。負傷者となると市は全く把握しておらず、水路が引き起こす事故の実態は不明のままだ。

 福山市では一九六五年、日本鋼管福山製鉄所(現・JFEスチール西日本製鉄所福山地区)が操業を始めた。これと前後して人口は急激に増え、集合住宅や家屋が水田の間に虫食い状態となって続々と建った。都市計画や市街化に応じた基盤整備が追いつかず、多くの水路も放置されたまま今に至る。

 こうした都市発展のプロセスが持つひずみが、不幸な事故を引き起こしてきたとも言える。ただ、和解した事故がその典型であるように、水路のふたが突然、柵や車止めもないまま途切れて、水路だけがむき出しになった個所が少なくない。これまでの市による転落防止策が不十分であったという批判は、免れようがない。

 事後の市の対応も遅かった。相次ぐ転落死を受け、市が具体的な対策に乗り出したのは〇三年度になってからだ。今も交通量が多い市道沿いの水路に、ふたやガードレールを設ける工事を進めている。〇五年度までに計六億二千万円をかける。

 市は今後、同様の事故で損害賠償責任を問われる可能性もある。市土木部の野田幸男部長は「事故によって状況が異なるため、すべての事故で賠償責任を負うわけではない」とする。しかし、市が事故防止策と賠償という二つの責任を負うことを、和解が鮮明に浮かび上がらせた。

中国新聞
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