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300%スパニッシュ

北浦和にある埼玉県立近代美術館に行ってきた。20世紀スペインのデザインを紹介する企画展で、前半はポスター、照明、椅子それぞれ100点ずつの「300%」を、後半はスペインあるいはスペインをモチーフとしたファッションについて紹介している。

ポスターには、観光の宣伝、イベントの告知から政治的なものまで、その鮮やかな色彩だけでなく、まるでスペインの100年を感じるような作品がずらり。ピカソやミロが自分の展覧会のために描いたポスターもあった。1930~40年代には内戦の影響を色濃く反映したものも多いが、同時期その一方でファッションショーや音楽祭の開催を伝えるものもある。

あくまでテーマは「デザイン」だから、そのポスターがどのような状況下で使われ、あるいはどんな場所にどれくらい貼られていたかは分からないけど、少なくとも、その存在そのものを、通りすがりの人々にいかにアピールするかという「意志の強さ」を感じることができる。それはメディアが少なかった20世紀初期のものほど強い。そしてかつ実用的である。

照明のコーナーに行く。大きさによって「どこに置こうかな」といろいろ想像してみる。宿命でもある電源コードを隠さずに、デザインの一部に取りこんでしまっている作品もあって面白い。スペインの気候風土(特に地震がないこと)を考えれば、例えば日本でフレームの細い照明を使うのは実用的でないかもしれないけど、スペインで使う照明なら、どれも使い勝手はよさそう。各作品が狭く区切られていて、もう少し広いスペースで見たい気もするけど…あっそうか、ここは「日本」なんだ(最後までどうか無事で)。

椅子のコーナーは、多くは1人用のもの。構造はシンプルなはずなのに、こうも見え方が違うのかと驚く。見る人によって好みが分かれると思うけど、僕にとっていい椅子は、一目見て、「あっ座りたい」と思える椅子。しかも安定感のあるのが。ちなみに座るギタリストにとっては、人生に関わる問題だしね。前にスタジオの椅子を壊したことがトラウマになってるのかな?

後半の「ファッション」のコーナーにあるドレスは、「スペイン」というイメージで、ヨーロッパ各地のデザイナーたち(その多くは現代のブランドのメーカー)が作ったもの。スペイン女性の着る衣装…特にフラメンコやフェスティバルに通じるもの…をテーマにしている。ファッションに疎い僕なりに感じたことだけど、一見して「わあきれい」というよりも、その衣装を着た女性に会ってみたいと思った。衣装そのものにきらびやかさを求めるのではなく、その服を着た「スペイン的」女性のしぐさや表情をイメージしてデザインしている印象を受けた。だから、すごく素直に見える。

個人的な話で、スペインに1年いれば、いろいろなことに出会う機会は多いけど、知らないことを知るより、知らないことがどんどん増えてくる、というのが実感で、今回見た展示はまさにそうだった。現地に行ってそれが少し見えたときに、自分の知らないことがあまりに多いということに怖くなり、時に目をつぶったりもするけど、「スペイン」という言葉の魔力にとりつかれている人間のひとりとして、スペインについてもっといろいろ知りたいと、今さらだけど、改めて思った。
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