「カルカス」が18年ぶりの来日公演!6月3日(水)の初日、埼玉・越谷でのコンサートに行ってきました。実はこの日昼間に急な仕事があり、最初から見ることができなかったのですが、微妙に道を間違えつつもホールにたどりつき、荷物をカウンターで預かっていただいて第二部の開演にぎりぎりセーフ、間に合いました…。
ところで私がなぜこんなときに、いかにも「カルカスと私」みたいな文章を書きたくなってしまったか…でも今回は特別と思って許していただきたいです。
ロス・カルカス(Los Kjarkas)はボリビア・コチャバンバで結成、リーダーのゴンサーロ・エルモーサ、弟の故・ウリーセス・エルモーサの作品を中心に数々のヒット曲を生み、1980年代のボリビア音楽シーンをまさに牽引した存在です。1984年の世界歌謡祭で初来日。つづく1985年から、87年、89年、91年に日本での公演をおこない、今回は91年以来の来日でした。
1985年6月2日、神奈川県の松田町でのカルカスの公演を見に行きました(当時私は5歳だったのでもちろん連れて行ってもらいました)。幕が上がったときの1曲目はウリーセスの作品「La Ventana(窓)」でした。ガストン・グアルディアのサンポーニャのメロディーに続いて始まったエルメール・エルモーサのボーカル、そのインパクトは24年前からはっきり覚えています。私が座っていたのは最前列、正面から上45度くらいに見上げる位置のエルメール、そしてカルカスの存在は、いまさらいうのもなんですが、「神々しい」以外の何物でもありませんでした。
現在私はギタリストとして活動しているので、自分のプロフィールではギターを始めて以降のことしか書いていないのですが、両親が中南米音楽の愛好家であることと同じく、私が音楽を演奏することを自分の生活の中の営みとしてはじめる、決定的な出来事は、カルカスのこのコンサートでした。
私がギターを始めた1989年以降は音楽的関心がアルゼンチンに移り、92年にウリーセスが亡くなって、「あのカルカス」をもう見られないという直感があったのか、その後はずっと「カルカス」を自分の中にしまいこんでいました。フラメンコをはじめたことをきっかけにスペイン、その後ギタリストとしての縁もあってアルゼンチンに行きましたが、私はまだボリビアへ行ったことがありません。それは子どものころ、私にとってボリビア=カルカスにしてしまった後遺症なのかもしれません。現在はおかげさまでたくさんのご縁でボリビア音楽を演奏していて、ボリビアとストレートに向かい合っているすばらしい方たちと共演できることがうれしくもあり、こんな心境からあまり脱却できてないというのもちょっと申し訳ないです。
さて、内面的な話ばかりで肝心なこの日のコンサートのことをなんにも書けてなくて失礼しました…。実はそんなこともあってちょっとコンサートを見ることがこわくもあったのですが、そんなモノローグな気持ちは一気に吹き飛んでしまいました。第二部の一曲目はまたしても「La Ventana」。現代らしくベース(イバン・バリエントス)とパーカッション(ホルヘ・サンタクルス)のサポートが入ったとはいえ、横一列に白のカルカス・ポンチョのメンバーが並ぶスタイル。エルメールのボーカルのすばらしさと声の高さは20年前と同じ、ガストンのサンポーニャはあの音色です。ゴンサーロの甥にあたるゴンサーロ・エルモーサJr.、リン・アングーロのすごいギタープレイに圧倒され、しかもこんなに踊るとは!チャランゴの宍戸誠さんがカルカスの音楽的かなめとして大活躍。80年代、きっと多くの日本の少年が夢みたことを本当にやってしまった、すごい人です。
プログラムも新しい曲と80年代以来の曲をおりまぜながら。「Llorando se fue(泣きながら)」「WA YA YAY(ワ・ヤ・ヤイ)」「IMILLITAY(イミジタイ)」に思い切り反応してしまうのも、18年の年月なのね…。
終演後、幸運なことにメンバーとあいさつすることができました。宍戸さんはとてもやわらかいオーラの持ち主。エルメールとガストンには、なんとミーハーな行動を。父が持ってきた、昔一緒に撮ってもらった写真(87年)を取り出して「変わったねー(笑)」のやりとり。これからの長い日本ツアーを控えての疲れ、「出待ち」して普通に声をかけてしまっている自分を恥ずかしくも思いつつ、気さくで屈託なく話をしてくれたカルカス、やっぱり私にとってはずっとスーパースターです。
(写真:エルメール・エルモーサさんと。Takao,Yoko, Elmer, Chiei)
おまけリンク:
昔の写真
http://www5.ocn.ne.jp/~fumande/fumande_folklore/fuma01.htm
昔のご縁(小林洋子編)
http://www.chiei.org/fu/yoko_gallery/yoko_illust06.htm