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第9回 全日本横笛コンクール

2024年6月22日と23日の2日間、青森県弘前市の「ヒロロ」弘前市民文化交流館で「第9回 全日本横笛コンクール」が開かれました。

横笛(主に篠笛)を始めて6年以内の「エントリークラス」20名と「一般クラス」30名の2部門合わせ50名が出場。初日はエントリークラスの審査と一般クラスの予選が行われ、一般クラスは審査の上位10名と、オンライン視聴者の投票で1位を獲得した合計11名が翌日の決勝に進みます。

基本は独奏ですが、共演者、またはカラオケをつけることが可能。課題曲は「弘前ねぷた囃子」、自由曲は課題曲と合わせ8分以内の規定です(予選は6分までで終了) 。


セッティング中

課題曲の「弘前ねぷた囃子」は、一般的に知られている「青森ねぶた囃子」とメロディーや掛け声が異なり、城下町らしい厳かな響きを持っていて、開催地が弘前であること、横笛の基本的な技術や囃子方としての表現力が比較的分かりやすいこと、6つの短いメロディーで一回り30秒程度であること、などから採用されているそうです。

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さて、私は今回一般クラスの7名の出場者の方の共演を担当しました。私はこれまでにも別のコンクールでのサポート経験はありますが、一曲にかけるみなさんの想いをお預かりする立場、通常の公演とはまったく違う緊張感です。これもギタリスト冥利につきます。

予選の前日に1人ずつみっちりリハーサル。すでに緊張感と高揚感につつまれています。夜には懇親会も開いていただき、本番に向けて気持ちも上がりました。


前日のリハ会場は弘前れんが倉庫美術館内のスタジオ

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当日の会場は弘前駅にほど近い「ヒロロ」内にあるホール。実はこの会場、津軽笛奏者の佐藤ぶん太さんと2008年に初共演したホールでした。もう16年になるんですね…

コンクールの実行委員長として携わるぶん太さんはもちろん、運営スタッフの方々もこれまでお世話になってきた方々ばかり。機材等の搬入と撤収も少しだけお手伝いしつつ、モードを切り替えて演奏に備えます。

本番中は主に舞台裏の通路で待機。出演者としてうれしかったことの1つが、楽屋裏の通路での様子を見られたこと。

緊張をほぐしたり、(大きな声はNGなので)小さく声をかけあったり笑わせ合ったり、演奏から戻った際の表情は、力を出し切れたり、思うようにいかなかったり、それでも楽屋に戻って行くと中からあたたかい拍手が聞こえてきて、いい瞬間だなと心から思いました。

私も舞台に上がってからは、とにかく出場者の方のパフォーマンスを最大化できるように心がけます。つい熱くなりがちですが、決して追い越さず、でもしっかり後押しできていたらうれしいです。




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初日の予選終演後は合宿施設もある「ロマントピアそうま」へ移動、全体での打ち上げがありました。アトラクションとして、これまで運営スタッフだったみなさんが青森各地のねぷた囃子やねぶた囃子、そして岩木山に捧げる登山囃子を披露。かっこよすぎます。



 

さらに「弘前ねぷた囃子」の特別運航。「お神輿サイズ」のねぷたとともにロマントピアの敷地内を練り歩き、本館前で記念撮影。



ここまで盛りだくさんの打ち上げの最後にして、決勝に進むメンバーが発表。緊張感が走ってもそれは一瞬のことで、すぐに舞台上に呼ばれるメンバーに祝福と応援の拍手が。こんなに酒がまわって盛り上がった後でのコンクールの予選結果発表ってあったでしょうか。でもここにコンクールの趣旨が集約されていたような気がします。

ぶん太さんからステージ上だけでなくいろいろな場所で「コンクールはあくまで通過点。出場して経験を積んだみなさんが地元に戻って笛の素晴らしさを周囲や地域の方々に伝えて全体を盛り上げてほしい」という思いを聞きました。

実際に青森以外から出場されている方も含め、初参加だけでなく複数回エントリーの方も多いそうです。コンクールへの再挑戦の意味もありますが、それ以上に津軽にまた来たい、中にはこれをきっかけにねぷた祭り(8月初旬)や登山囃子(今年は9月初旬)に参加するという方もいらっしゃるようです。そしてこれまで入賞した方々はすでに各方面で活躍されています。

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ここまでですでに密度の濃い毎日ですが、決勝はこの翌日のことでした。すでにスペシャルステージのような雰囲気になっています

決勝に先立って、前日のエントリークラスの1位の菊池虎太朗さん(中学1年生)が自由曲をオープニングで披露。彼はあの「博士ちゃん」でねぷた博士ちゃんとして出演していて、ねぷた絵だけでなく、横笛を始めて1年ほどで1位とは…おそるべしです。前日の全体打ち上げでも普通に舞台に呼ばれて各地のお囃子を吹いていました。

決勝に進んだ11名のうち、私は4名の出場者、演奏順に原麿美子さん(愛知)、鈴木亜樹さん(神奈川)、百瀬弥生さん(長野)、松村寧さん(山口)をサポートしました。予選でご一緒した田中恵美子さん(群馬)、新井美保子さん(長野)、鹿詩永さと女さん(東京)、担当させていただいた7人全員が全力で取り組んだ「1曲」は、どれも本当に心のこもった演奏で、私も力が入りました。

「ファイナリスト」の楽屋は競い合いの緊張感もありながら、一緒に何かを乗り越えつつある、横笛を愛する「仲間たち」の雰囲気で、すごくうらやましかったです。

全員の演奏が終わった後、審査員もつとめた小泉なおみさんがスペシャルステージを披露。私は最初の曲では(時間の都合で)自分の荷物や機材を片付けていたのでスピーカーから聞こえる音のみでしたが、この会場、というかまるで建物全体がゆっくり癒されていくようでした。そして最後の曲はなんとか客席の後ろで、一転してしっかり締めくくる20分のステージが素晴らしかったです。コンクールに出場した田中さんと百瀬さんが太鼓でサポートする光景もすてきでした。

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閉会式では審査員の方が全体の講評を述べられました。前日の打ち上げのあいさつも含め、異口同音に「これまでで一番審査がむずかしかった」そうです。それだけ拮抗、またはそれぞれの持ち味が高いレベルで発揮されたステージだった、私も舞台袖で聞いていて本当にそう思いました。

優勝は、大会ポスターの「顔」でもあった今力也さん(青森県/26歳)。第2位は棟方麻衣さん(東京都/まいける)。第3位は松村寧さんでした。

優勝に向け勝負をかけた、まいけるさんの力強い音色と、チャンピオンとしてすでに慈しみさえ感じる、力也さんの音色が好対照。大会の日程が決まった半年前に依頼を受けて、ともに曲を仕上げていった寧さんとのステージは忘れられない時間となりました。あらためておめでとうございます!

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(おまけ)
大会の後、もう1泊するメンバーを中心に打ち上げ。「あいや」で渋谷和生さんのデュオで津軽三味線を満喫しました。そして翌日は津軽のディープなスポットを巡るその名も「ミステリーツアー」に同行。本当にディープでした。

「あいや」にて

ぶん太さん、佐藤家のみなさんに大変お世話になりました。コンクール関係者の皆さん全員と素晴らしい日々をご一緒することができて幸せです。




全日本横笛コンクール



配信動画をご購入いただくと、2025年の次回大会までご覧いただけるそうです(合計約8時間?)



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