
東京都美術館で開催中の「キュッパのびじゅつかん」。
「キュッパ」は、ノルウェーの作家オーシル・カンスタ・ヨンセンさんが描く絵本『キュッパのはくぶつかん』に登場する、”物集めが大好きな丸太の男の子”です。
『キュッパのはくぶつかん』は、主人公の「キュッパ」が森で拾い集めたものを分類して、並べて、おうちで博物館をはじめる物語です。物語を知らなくてもだいじょうぶ。会場ではアニメーションの上映があったり、絵本も数冊置かれていたりと、ゆっくり楽しむ事ができます。
(絵本「キュッパのはくぶつかん」/オーシル・カンスタ・ヨンセン (著, イラスト), ひだにれいこ (翻訳))
葉っぱや木の枝、そして使われなくなったガラクタなどの小物が丁寧に画面いっぱいに描き込まれていて、子どものころに色々なものを集めて”たからばこ”にしまっていたような気分を思い出してわくわくしてしまいます。
(展覧会会場入り口)
展覧会は、
1.キュッパの部屋へようこそ
2. みつめて、あつめて、しらべて、ならべて
3. まなざしの冒険へ!
という3つのパートで構成されています。
「1.キュッパの部屋へようこそ」では、キュッパのように何かを収集して並べているアーティストや、独特な美術館・博物館のコレクションがずらりと並びます。
(岩田とも子《粟島自然観察船‐船になった学校‐》2014年・写真は展覧会HPより)
特に、岩田とも子さんの《粟島自然観察船 -船になった学校-》《山宇宙望遠鏡標本》 は、自然の中で拾い集めた木の実や貝殻を同じサイズのバルサ板に貼付けたものが、小屋のような展示室の壁や引き出しの中いっぱいに展示されていて、その”土地”のミニチュアが部屋の中に再構築されているようで面白かったです。また、そんな部屋全体が宝箱のようにも見えて、わくわくしました。
続いての「2. みつめて、あつめて、しらべて、ならべて」。
この部屋に足を踏み入れると、目の前いっぱいにそびえる木製の棚と、足下いっぱいに広がる小さな「ガラクタ」たちに思わず「わぁ!」と声を上げてしまいます。
(部屋の中は”ガラクタ”でいっぱい!)
日比野克彦さんが構成された、体験型の面白い展示です。
この部屋では、自分がキュッパになったように”自分でテーマを決めて、足下に広がる小物をピックアップし、箱にラベルをつけて、きれいに見えるように並べ、自分のコレクションをつくって”行きます。ネジやバネ、壊れたカメラやガチャガチャのカプセル、木の実に木の枝、そして名前も分からないガラクタなど、無数の何の関連もない小物の中から、どんなテーマで集めていこうか?大人も子どもも真剣に選んでいました。
(子どもだけでなく、大人もひとりひとつずつ作れるところも嬉しいですね。私は展覧会初日に伺いましたが、大人のほうが多いくらい。みんな真剣に自分のコレクションをつくっていました。)
限られたスペースに何を入れようか?
どんなキャプションをつけようか?
どんな風に並べたら、自分の考えたことが伝わるか?
ちょっとだけ美術館のキュレーターさんの仕事を体験しているような気分にもなりました。
(この巨大な木の棚が「bigdatana」!)
完成した箱は、最後に「bigdatana」(ビッグデータ棚?!)に納めます。ここには、他のひとが作った箱がずらりと並んでいるので、自分と似た観点でも全く違う並べ方をしていたり、思いもよらないテーマで集められていたり…と、自分とは違った様々な考え方が見られて面白いです。
(人によって、箱の中に納めるものも、並べ方も全然違っていました。他の人がつくったコレクションを見て行くのもこの作品の楽しみのひとつですね。)
最後は「3. まなざしの冒険へ!」。
こちらにもやはり身近な小物がずらりと並んでいますが、今度は並べられたもののもつ意味を自分で考えていく展示です。
小山田徹さんの展示では、
全く異質の小物を同じ高さに吊るして、普段とは違う角度から眺めてみたり、
個性なんて考えた事もなかったメダカの表情を一匹ずつじっくり観察してみたり、
様々な石の重さや大きさ、手触りをひとつずつ確かめてみたり…
(小山田徹《浮遊博物館2015》2015年・写真は展覧会HPより)
じっくりと見てみると、「これはこういうもの」と自分の頭の中にあったイメージと目の前の実物が違っていたり。
でも、ひょっとしたら子どもの頃には、もっと柔軟に、先入観なくひとつひとつの”もの”を見られていたのかもしれないなぁなんて思ってしまいました。
夏休みの”子ども向けの展示”、と思っていましたが、ひょっとしたら大人の方がわくわくしたり気づきが多くてはっとする展覧会かもしれません。
なお、この展覧会の図録は、こんな風に↑ボックスセットになっていて…
この箱を使って、キュッパのように自分のコレクションが作れるようになっています。(オーシル・カンスタ・ヨンセンさん画の上野公園の地図や、ポストカードも入っています。)家に帰ってからもわくわくできますね!
会期中には、アーティストやアート・コミュニケータさんたちとのワークショップも開催されるそうです。
2015年10月4日(日)までです。
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■ DATA
キュッパのびじゅつかん―みつめて、あつめて、しらべて、ならべて
会場:東京都美術館(access)
会期:2015年7月18日(土)~10月4日(日)
開室時間:9:30〜17:30 (入室は閉室の30分前まで)
(金曜日は9:30〜21:00 (9月11日(金)と9月18日(金)を除く))
休室日:月曜日、7月21日(火) (7月20日(月・祝)、9月21日(月・祝)は開室)
観覧料:一般 800円、65歳以上 500円、学生400円、高校生以下は無料
コメントありがとうございます。
ヘンリー・ムーアの彫刻の複雑で美しい曲線には、そんな自然から受け取ったイメージが隠されていたんですね!
今回の展示は、私も本当に童心にかえって楽しめました。「bigdatana」というタイトルからは情報を集積していくような雰囲気を感じましたが、PineWoodさんの「大きな木のように森のように」というコメントを拝見して、たくさんの人の作り上げたより暖かみのある作品に感じられて、とても素敵だなぁと思いました!ありがとうございます。