Mi Aire

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「江戸の粋とスペインの粋」

2007-05-02 00:21:24 | エッセイ(EMPRE掲載分)
※このエッセイは「EMPRE 2003年 5月号」に掲載されたものです。

今年は「江戸開府400年記念」という旗を街の中でたくさん目にする。
江戸幕府がここに開かれて日本の首都に定められてから東京はこの400年の間にめまぐるしく変化していったのだ。
その間にはたくさんの文化が生まれ、洗練されていった。
江戸には「粋」という美意識がある。それはデザインやモノに限らず、人の所作だったり雰囲気だったり、生き方だったりする。

この「粋」という感覚は言葉で説明するのは難しいけれど、シンプルで余分なものがなく、洗練されていて軽やかで遊び心のスパイスが効いていて、潔くて、それでいて凝縮された濃さが奥に隠されている、そんな感覚。
現代の東京にも確かにそんな「粋」は存在している。
独自の文化を豊かに昇華させていくエネルギーが昔からここにはあった。
ものまねではなく独創的なオリジナルの文化が。

スペインにも、この「粋」を思わせる感覚が存在しているのを発見して興味深かった。
フラメンコの世界に、闘牛の世界に、この「粋」と共通する美意識があるのだ。
「粋」はオリジナルのアイデンティティを大切にする人々がもつものなのだ。
オリジナルの文化を大切にする。自分の文化をおろそかにし、誇れないということは悲しいことだと思う。
自分達の文化を尊重することで相手の文化も尊重することができる。

「江戸の粋」を愛する心で「スペインの粋」を愛する。文化に限らず、相手の存在を尊重できるということはとても大切なことだと思う。民族や言葉の壁をこえて人が仲良くなるということは、その先にあるのだと思う。
私はスペインが好きなので何度も足を運んだ。スペインの文化や芸術や人々に新鮮な感動を覚えながら、同時に外から日本をみつめることにもなる。
そしてあらためて江戸の、日本の文化を再確認してそれを大切にしたいと痛感した。
私が感じた「スペインの粋」を愛しながら、「江戸の粋」を誇りに思うのだ。



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2 Comments

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粋ですね~ (SINSEI)
2007-05-02 21:30:41
またまたおじゃまします。
Carmelitaの文章にはどうもSINSEIの琴線に触れるワードが出てくるのでコメント打たせていただきます。

「江戸の粋とスペインの粋」大変興味深く拝読いたしました。

私はどちらかといえば無粋者なので、だからこそ「粋」というものに結構憧れがあるんです。(でもいつものようにあまり詳しくはないんです``r(^^;)

スペインにもこういった「粋」という感性があるのですね。面白いです。

>自分達の文化を尊重することで相手の文化も尊重することができる。
>文化に限らず、相手の存在を尊重できるということはとても大切なことだと思う。

ほんとにそうですね。なんだか世の中「壁」を壊す方に、壊す方に物事が進んでおりますが(グローバル化
という奴でしょうか)もちろん壊した方が良い壁というのもあるのでしょうが、

でも本当は壁ってあっても良いのではないかなぁ~なんて思ってます。(もちろん差別や戦争はいけないですよ)

壁があって初めて自分達の文化が築けるし、その壁を壊すのではなくて、乗り越えて理解し合おうという努力、そこに相手の文化を尊重しようという芽生えがあるような気がいたします。

>民族や言葉の壁をこえて人が仲良くなるということは、その先にあるのだと思う。

全くおっしゃるとうりだと思います。
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粋は憧れ (Carmelita)
2007-05-02 23:02:32
SINSEIさん
こちらにもコメントありがとうございます!
「粋だね!」というのは江戸っ子には最高のほめ言葉。粋な人になりたいというのは私も憧れです。
闘牛やフラメンコには確かに「粋」という感覚があって面白いなと思いました。

スペインに行く度に思うこと。
彼らと肩を並べるには自分のアイデンティティがしっかりしていないとダメだなと思います。
どんなにスペインが好きでも私は日本人。
自分の文化が誇れなくてどうする!?と強く思いますよね。

最近男女平等もなんだかへんな方向にいってるような気がします。
看護婦さんを看護師と呼ぶことが平等なのではなく、男と女はちがって当たり前なのですから、相手のちがいを認めたうえでお互いに尊重すればよいことなのではないかなぁと思います。

SINSEIさんがおっしゃるような「壁」は必要なものだと私も思います。
本当に壊すのではなくて乗り越えるのですよね。
(ベルリンの壁みたいのはなくていいですけどね。)


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