★画像は、愛蔵版「キャンディキャンディ」いがらしゆみこ先生 原作水木杏子先生より
アルバートに駆け落ちすることを告げた日の夜。
屋敷内の執務室で、ジョルジュは書類に目を通していた。
”コン コン”
扉をノックする音が聞こえ、ジョルジュは開けた。ローズマリーが訪れた。
「ジョルジュ、お疲れ様。」
「ローズマリー様。こちらにおかけ下さい。」
部屋にある小さなダイニングセットの椅子に着座するよう勧めた。
「ジョルジュも座って!」
「はい。失礼します。」
「仕事中お邪魔してごめんなさい。お願いがあって…」
「はい。ローズマリー様。終わる所でしたので。ご用件は何でございますか。」
ローズマリーはジョルジュに駆け落ちすることを打ち明けた。あまり時間がない、協力して欲しいとお願いした。ジョルジュは表情を変えず了承した。
「ジョルジュありがとう。また迷惑かけてしまうわね。」
「そのようなことはございません。お役に立てれば。」
「ありがとう。あと私がいなくなった後、アルバートをお願いします。まだ子供で心配なの。支えてあげてね。何かあったら知らせて。」
「かしこまりました。ウィリアム坊っちゃまのことはご心配なさらずに。全力でお守り致します。」
「ありがとう。安心したわ。 あなたは本当に誠実で、信頼してるの。」
「恐れ入ります。」
「そうそう、バートから、ジョルジュにフランス語の勉強をみてもらってると聞いたわ。ありがとう。手こずらせてない?」
「いいえ。ウィリアム坊っちゃまは聡明なお子様ですから、覚えが早くて感心しております。」
「ありがとう。」
「私、ジョルジュが家に来てからお兄さんみたいに思って・・・子供の頃から助けてもらってばかりで、、ごめんなさい。」
「滅相もないことでございます。」
~ 昔 フランスからアメリカのこのお屋敷にウィリアム様に連れて来ていただいた。孤独で不安だった私に、真っ先に屈託のない笑顔で優しく接して下さった、英語や他の勉強も手伝っていただき、助けて下さったのはローズマリー様・・・あなたでした。私の方こそ感謝しきれません。~ ジョルジュは話したかったこの言葉をなぜか言えなかった。
ローズマリーは話が終わるとジョルジュに笑顔を見せてから、背を向け扉に向かって歩いた。ジョルジュのせつなげに揺れた瞳に気付かずに。
ジョルジュは瞬時に動き、扉をローズマリーが開ける前に開けた。出て行く後ろ姿に一礼した。
~ 私はローズマリー様にお願いされれば、何でも致します。たとえ恋のお手伝いでも。お幸せになるのなら 。私はローズマリー様を・・・・・ ・~
続きの言葉を胸の奥底に沈め、ジョルジュは駆け落ちの計画を考えた。
続く