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💠幸せ時間💠

想像作話 自由の羽(6)

★画像は、愛蔵版「キャンディキャンディ」いがらしゆみこ先生 原作水木杏子先生より



翌朝。

ジョルジュはローズマリーに駆け落ちの計画を話した。駆け落ちは4日後に決行する、ヴィンセントにこの事を知らせに行く、追っ手から逃れるための一時的な避難先を探す、など秘密裏に動くと。
ローズマリーは了承した。


朝から雨が降っていた。
父ウィリアムの使っていた書斎にアルバートはいた。
家庭教師の授業は午後からだ。
亡くなった父を身近に感じられるこの書斎に、一人でよく入室する。
先祖代々受け継がれている革表紙の書籍などが数えきれないほどあった。英語、ドイツ語、フランス語、スペイン語、イタリア語、ラテン語など世界中の言語の様々な分野の書籍があった。
アルバートは世界が広いことを本をとおして知った。

~ 僕は隠れていなきゃならない。子供が当主だということがバレないために。アードレー家の当主だけど子供だから何も知らないし何もできない。
大人になったら大総長として働くことが決められている。
このまま大人になるのかな?
アメリカもシカゴしか知らないんだ。
世界は広くて色んな国と人と言葉があるんだな。いつか色んな国に行ってみたい。 ~
アルバートは心の中の小さな光を見つけていた。
そして以前姉から言われたある言葉を忘れなかった。

今日はヴィクトル・ユーゴー作「レ・ミゼラブル」の英訳の本の続きを読んでいた。愛や、犠牲、贖罪など子供ながらに懸命に考えていた。
フランス語原書が読める日はもうじきだった。


ローズマリーも書斎に入ってきた。
アルバート同様この父の書斎が大好きだった。
父は多忙でなかなか会えなかったが、会った時はとても優しく一度も叱られたことがなかった。使用人にも優しく皆から好かれていた。博識で、質問すると何でも答えてくれた。さりげなく的確な言葉をくれた。子供達を見つめる慈愛に満ちたまなざしを思い出し、泣きそうになったが、アルバートの前では泣くまいと涙をこらえた。

父が使っていた机に目が止まった。生前使われていたままの形で残されていた。
「この万年筆・・。」
ローズマリーは父が愛用していた万年筆を形見にもらおうと思った。


アルバートはローズマリーに話しかけた。
「聞いてなかったけどさ、ヴィニーとどこで知り合ったの?」
「 去年の夏にビーチに遊びに行った時よ。お花がついた淡いピンク色のつばのある帽子をかぶっていたの。バート見たことあるでしょう? その帽子が 風に飛ばされてしまって、ヴィニーが拾ってくれたのよ。それからなの。」
「ふーん。帽子が飛ばなかったら、知り合ってなかったのか。」
「そう。ふふふ。あなたも大人になったら飛ばしてみたら?」

~何も接点がなかった2つの人生が1つになる。人生に何が起きるかわからないものね 。~

その後、二人は静かにそれぞれ読書に耽った。窓に当たる雨の音も楽しみながら。



続く
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