★画像は、愛蔵版「キャンディキャンディ」いがらしゆみこ先生 原作水木杏子先生より
ヴィンセントと駆け落ちすることを決めた翌日。パーティーまであと6日。
レモン色の光が射し込むテラス。
15時のティータイムにローズマリーはアルバートを誘った。駆け落ちすることをアルバートには隠さず話さなくてはいけないと思っていた。
家庭教師の授業の合間にアルバートはテラスに来た。
テーブルにはローズマリー特製のベイクドチーズケーキを用意していた。きつね色に焼かれたチーズケーキの表面には、杏ジャムが塗られていた。
「わあ! チーズケーキだ。これロージーが作ったんだよね?」
「正解! バートはチーズケーキが大好きだものね。どうぞ召し上がれ!」
「いただきます。」
ローズマリーはハーブティーを入れた。
「バート、最近心配なこととか困ったことはない?」夢中で食べているアルバートに話しかけた。
「んー?あるよ。ドイツ語が難しいんだ。さっき家庭教師が顔をへの字にしてたよ。」への字の顔を作って見せた。
「ふふふふ。後でわからない所を教えてあげる。フランス語の方はどうなの?」
「それは大丈夫。わからない所はジョルジュに聞いてるから。」
「そう。良かった。」
「あともう一つあるよ。」
「何?」
「ロージーの結婚。あれからどうなったの?」
「・・・その事でお話があるの」
「うん。」
「実はこの家を出ていくことにしたの。ヴィニーと結婚するためよ。大おばさまはついに結婚を認めてくれなかった・・。だから黙って出て行くの。」
「・・・黙って出ていく?」
「ええ。今度のパーティーで結婚相手を無理矢理決められてしまう。だからその前に出て行くの。アードレーの名を捨てるの。」
「・・・・・」
「気がかりなのはあなたのこと。私がいないとあなたは1人になってしまう。会えなくなるし・・・ごめんなさい。」ローズマリーは目に涙を溜めてうつむいた。
「僕は平気だよ!1人じゃない。ジョルジュも大おばさまも森の動物の友達もたくさんいるから寂しくないし!そんなことロージー心配してたの?アハハハ。」
アルバートは明るく笑った。
「・・・バート。」
「ずっと会えなくなるんじゃないでしょう?」
「会えないかもしれない・・いいえ・・いつか会える日が来るわよ。」
「良かった! ヴィニーって優しくていい人だね。大好きだ。」
「そう言ってくれるのはアードレーの中でバートだけね。嬉しいわ。結婚って家柄や名誉とか関係ないのよ。愛や人柄が大事なの。バートも大人になったらこの意味がわかる時が来るわよ。きっと。」
「うん。 ロージー、ヴィニーと幸せになって!」
「ありがとう。ちっちゃなバート。」
ローズマリーはアルバートの傍らに立ち抱きしめた。
アルバートは目を閉じた。
~ 姉さんの結婚は嬉しいのに泣きたくなっちゃった。本当は行って欲しくないんだ。でも泣いちゃダメだ。泣いたら姉さんが悲しむ。笑うんだ。笑って姉さんを見送るんだ ~
続く