僕は君を知らない。だけど君は僕を知っている。

いわゆるバックアップだとお思い下さいませな。
しかし、先は不明。

初めての玉置神社 その2

2005-06-24 15:11:46 | 流離道行
玉置神社・初めての玉置神社 その1の続きです。

私とHさん、2人で、その細い山道を歩けども歩けども、神社どころか鳥居の
影すら見えず、周りはそびえ立つ木々と草や苔と岩。

そして、かろうじて二人が歩く1人づつしか通れないケモノ道のような細々
とした登り道がずっと続いています。

山全体にある木々がすっぽりと日光を遮り昼だというのに、薄暗い感じで
聴こえてくる音といえば、風が木々のはっぱと草を揺らす音と遠くで
鳴いている鳥の声だけ。

しかし歩き続けると足元に、後何kmと書いてある、小さな木で出来た
矢印型の案内版が、たまに出現します。

その案内板を信じて2人で、えっさ、えっさと決して山歩き向きとは
いえないヒール靴で登って行きます。

一歩、歩くたびにヒールの踵が湿っぽい土の地面に突き刺さり靴は
ドロドロです。

私は、発熱している事もあってフラフラでした。

その為Hさんに、先に登ってもらっていました。

登り始めて30分を過ぎたぐらいでしょうか。
私より10メートルぐらい前を歩いていたHさんが突然立ち止まりジッと
しているのです。

「Hさん、どうしたの?」と、私が声を掛けると

Hさんは、少し下の方の沢を指差し
「今、あそこの草がザザザーッッと音と一緒に動いていた!」というのです。

少し後ろを歩いていた事もあって、私には何も見えず、音も聴こえません
でした。

それで私は
「風のせいとちがう?」と答えました。

顔を見合わせて、しばらく突っ立ていましたが二人の頭の中で巡り始めた
想像を、どちらも口には出せませんでした。

Hさんには話していなかったのですが、私の近所に十津川から養子に
きたおじさんがいて、そのおじさんが里帰りの際、山に山菜を採りにいくか
釣りをしに行くかした時に、熊に襲われ耳を齧られたという話を聞いた事が
あったので、私の頭の中はクマ・クマ・クマとクマしか想像できませんでした。

しかし、それをHさんに話すと余計に空気が、重くなるのは分かりきったこと
なので、つとめて明るく

「多分風よ。その後音は聞こえないしー」と言って、二人で再び山道を登り
はじめたのです。

さすがに1時間ぐらい山道を歩いて行くと、二人共これは、おかしいと
思い始めました。
(もっと、10分ぐらいで気付けよっ!というもんですけどね。)

私はその年の夏だったか
(玉置に行っているこの時は10月の初旬だったと思います)

一晩かけて、京都の愛宕山を千日詣で知り合いの何人かと、一緒に登って降り
てきたのですが、この山はとにかく登り始めた限りは頑張って最後まで登って
降りないといけないと知人から聞いたので
(その日は、特別な参拝日だった為かもしれませんが…)

その言葉が頭の中をぐるぐるまわりはじめ、違う山なのに

『登り始めた限りは…登り始めた限りは…ぶつぶつ…。』というように

1人で、そのフレーズを繰り返し、自分を叱咤激励しながら登り続けたのです。

そして、又しばらく山道を歩いていくと、前を歩いていたHさんが、後ろの私を
振り返り、何か話しかけようとしました。

その時!

私の少し後ろで、ザッザザザーーーッと、何かが駆け下りる音が!

今度は、私にも聞こえました!

音を聞いた瞬間、二人は一目散に前に向かって走り始めました。

ええ、二人共言葉を出せる余裕すらありませんとも!
ひたすら細い山道を、出せる限りのスピードで走れるだけ走ったんです。

もう、これ以上は走れないという状態まできて、Hさんが止まり
ハァハァ息をあげながら
「なんか…、は…灰色いもんが走り抜けて行った!」と言うのです。

灰色いもん…。

多分、何かの野生の動物だとは思うのですが、一瞬の事で、どんな動物
だったかまでは分かりませんでした。

二人共一目散に後ろを見ずに走ってにげましたしね

とにかく、ここは一刻でも早く神社にたどり着きたい!と、私達は
再び、山道を登り始めたのです。


続く…