現代の店舗は、単に商品を並べて売る場所ではありません。
来店者に「その企業やブランドが何者であるか」を伝える、最もリアルで強力なブランディングの場となっています。
経営者であり空間デザイナーでもある大原拓弥さんは、ブランド価値の本質を「空間の持つメッセージ性」と捉えています。
高卒から努力を積み起業した彼の視点には、多くの企業経営者が見落としがちな“空間が語る価値”の本質が詰まっています。
ブランド価値は「体験」として空間に宿る
「ブランディングとは、企業が顧客に伝えたい『約束』を一貫して示すこと」-これは大原さんの基本的な考え方です。
その「約束」を最も直接的に、五感を通じて伝えられるのが店舗空間です。
・視覚:ブランドカラーやロゴ、内装の質感
・触覚:素材の手触りや商品の陳列方法
・聴覚:BGMや空間の響き
・嗅覚:香りの演出
・動線:顧客の店舗内での動きやすさ
これらが総合的に組み合わさって、顧客の「ブランド体験」として記憶に刻まれるのです。
大原さんはこう言います。
「良いブランディングは、言葉ではなく“空間”で感じ取れるもの。顧客が店に入った瞬間、言葉を交わさなくても『ここは〇〇なブランドだ』と理解できる空間設計こそが、最も強いブランディングです。」
空間が「語る」ブランディングの3つの柱
- ブランド理念の「視覚化」
まずは経営者の価値観や企業理念を、目に見える形にすること。
大原さんは、設計段階で経営者と対話を重ね、理念や目指す姿を丁寧に掘り下げます。そこから、
・色彩や素材の選定
・空間のレイアウトや照明計画
・ディスプレイの配置
などに反映し、ブランドの“本質”を視覚的に表現します。
たとえば、環境配慮を掲げるブランドなら自然素材を多用し、清潔感を重視するならモノトーンとガラスを基調に。
こうした空間が顧客の無意識に「信頼」や「共感」を生み出します。
- 一貫性の担保による信頼醸成
ブランディングの最重要ポイントは「一貫性」。
大原さんは、店舗デザインが広告やSNS、商品パッケージとズレないように整合性を持たせることを徹底しています。
「ブランドメッセージが店舗の空間で矛盾なく表現されていること。それは顧客の安心感に繋がり、信頼を築く最短ルートです。」
例えば、カジュアル路線のブランドが店舗で過度に高級感を出してしまうと、顧客の期待とズレてしまう。
逆もまた然りです。空間を通じたブランディングは、“言葉の裏付け”としての役割も果たします。
- 「顧客体験」のデザインとしての空間
ブランディングは「記憶に残る体験作り」が重要です。
大原さんは、「商品だけでなく、そこで過ごす時間や感情こそがブランド価値を決める」と話します。
たとえば、
・店舗の入り口から商品を見て手に取るまでの動線の心地よさ
・スタッフとの自然なコミュニケーションが生まれやすい空間設計
・ブランドの歴史や世界観が伝わる仕掛け
これらすべてが、訪れる人の「ブランド体験」を形成します。
「空間全体がブランドの“語り部”になり、顧客との感情的な繋がりを築く」-これこそが大原さんが考える、最先端のブランディングのかたちです。
経営者にこそ知ってほしい、「空間のブランディング力」
企業が長く愛されるためには、「何を売るか」だけでなく「どんな存在でありたいか」を明確にし、それを顧客に伝えることが不可欠です。
そして、その最もリアルで説得力のある伝達手段が「店舗空間」というメディア。
大原拓弥さんは、経営者が自らのブランド哲学を空間で表現し、その空間が企業の“無言の代弁者”となることを強く推奨しています。
これにより、顧客は言葉以上に深くブランドを理解し、心から共感し、ファンになるのです。
大原拓弥さんの言葉を借りるなら、
「空間は企業の価値を語る、最もパワフルなメディア。そこに込められた想いが、企業の未来を切り拓く。」
これからの時代、ブランドを育てる経営者にとって、空間デザインへの理解と投資は不可欠と言えるでしょう。