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熟年オジサンの映画・観劇・読書の感想です。タイトルは『イヴの総て』のミュージカル化『アプローズ』の中の挿入歌です。

エディット・ピアフ 愛の讃歌

2007-10-02 | 映画
生前の越路吹雪が演じた「ドラマチィックリサイタル~愛の讃歌・エディット・ピアフの生涯~」も印象的な舞台だったが、今回の映画でマリオン・コティヤールのピアフが憑依したような凄まじい演技を観ると、美化されたショーに過ぎなかったと思ってしまう。
愛する時と失意の時、こころ穏やかな時と孤独な時、演技のコントラストと映像のコントラストが強烈である。

既に成功を収めたピアフが、ニューヨーク公演で娼婦の歌♪ミロール♪を唄う冒頭から、ピアフの悲惨な少女時代へと遡ってゆく。
その後も時制が行きつ戻りして、最初はJRブラウンのミュージカル『ラスト5イヤーズ』みたいに、順流と逆流の二つの時制で描くのかと思ったが、そうでもない。
どれだけ悲惨だったかはいちいち触れないが、預けられた娼館での生活などは、その後たて続けに襲ってくる不幸に比べると、優しい娼婦に囲まれて幸せに見えるくらいだ。
愛した人たちとの別離の連続で、孤独に怯え、ステージに立つ前は楽屋で震えていたエピソードは、繊細な神経の持ち主だったことをよく表わしてるが、越路吹雪もそうだったと聞いたことがある。
ピアフのシャンソンの魅力は、彼女の意志の強さと、歌唱の力強さが、寂しさと優しさと共存していることから来るのであろう。

シャンソンは「語り」だとよく言われるが、ピアフの歌は叙情的な語りではなく、言葉のひとつひとつが力強く、圧倒されてしまう。
映画の中で歌われる歌は、殆どがピアフ自身の録音だが、どれももっと聴いていたいくらい聴き入ってしまう。
残念だったのは、冒頭の♪ミロール♪が途中までだったこと。また、♪愛の讃歌♪は歌唱が無く、テーマ曲として流れる。
♪アコーディオン弾き♪♪パダン・パダン♪の挿入場面も効果的だが、圧巻はなんと言っても、♪私の神様♪♪水に流して♪だ。
プロボクサーのマルセル・セルダンのミドル級タイトルマッチで流れる、祈りに満ちた♪私の神様♪の効果的な盛り上がりや、晩年の(とても40代には見えないボロボロの老婆のような)ピアフが選んだ曲でラストの回想シーンで使われる、♪水に流して♪は涙無しには聴けない。

「私は何ひとつ後悔していない 良いことも悪いことも・・・」
すべてを「水に流して」、そこから出直そうと自分の人生を総括したエディット・ピアフの人生は、まさに♪La Vie en Rose♪である。


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4 コメント

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ありがとうございます! (butler)
2007-10-20 11:02:52
>なつさん、

参考になって嬉しいです。
ピアフの歌は、映画で歌った以外にも
たくさんいい曲がありますので
是非CDで聴いてくださいね。

コメントありがとうございます!
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ここを見て見てきました (なつ)
2007-10-18 19:04:18
本当に素晴らしかったです。
主演女優のすばらしさ・・哀しくて哀しくて・・
こんなに泣ける自分がいることにびっくりしました。
愛の賛歌聞きたかったですが、水に流してはほんと良かったです。
ほんとありがとうございました。
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TB&コメントに感謝! (butler)
2007-10-08 20:37:18
>miyukichiさん、

フランス語でシャンソンは、英語のソングと同じように
単なる歌ですが、日本語でシャンソンって言うと
なんだか、人生を唄う大人の歌って感じがします。

同じテンプレートのデザインだったので驚きました。
感性が似てるのかな?(笑)
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こんばんは♪ (miyukichi)
2007-10-08 18:06:31
 TBどうもありがとうございました。

 ピアフの人生も、歌も、
 とにかく迫力があって、
 強烈な印象でした。

 シャンソンには縁遠かった私ですが、
 これをきっかけにじっくり聴いてみようと思います^^
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