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熟年オジサンの映画・観劇・読書の感想です。タイトルは『イヴの総て』のミュージカル化『アプローズ』の中の挿入歌です。

平成中村座公演『夏祭浪花鑑』

2004-09-04 | 歌舞伎
今年7月、ニューヨークのリンカーン・センター敷地内の仮設テント小屋で上演され、大好評を博した「平成中村座」公演『夏祭浪花鑑』が、NHK-BS2でノーカット放送された。
演出はコクーン歌舞伎でも同作を演出した串田和美。アメリカの観客を意識した自由な発想を加えた舞台で大いに楽しめた。

浪花に生きる庶民の心意気が、堺の魚屋・団七(中村勘九郎)はじめ主だった役のほぼ全員に息づいており、あれほど凄惨な殺しの場があるにも関わらず清々しく感じるのは驚きである。浪花女の心意気を見せる代表は、互いの片袖を交換して団七と義兄弟の契りを結んだ徳兵衛(中村橋之助)の女房・お辰(勘九郎の二役)である。老侠客・釣船の三婦(坂東弥十郎)に恩人の息子の匿い役には色気がありすぎると言われ、顔を傷つけた後の勘九郎は貫禄である。
団七は身体に彫り物をした言ってみればヤクザであるが、上手の悪がいて、その確執が悲劇を生む。とはいっても、世話物と違って陰湿にならないで、スカっと突き抜けたようなところがいい。

小悪の代表、団七の舅役・笹野高史は殺しの長屋裏の場で、勘九郎とともに暗闇の中での壮絶な絡みを見せる。
歌舞伎様式美のオンパレードのこの場は見ごたえ十分で、「本泥」「ザンバラ髪」「刺青」「赤褌」、そしてたっぷりある「見得」などが、ロウソクの手かざし燭台を駆使した原始的な照明の中で分解写真のように繰り広げられる。だんじり囃子のような軽快な鉦と太鼓がグロテスクな殺しの場のBGMとして、不思議な効果を上げていた。

ラストはテント劇場の常套手段、舞台奥を開放して周辺の風景を取り込むが、ニューヨークに出現した異空間へ突入するNYPDがやけに生々しく映ったのは気のせいだろうか。
如何にも勘九郎+串田和美コンビらしい遊び心に溢れた意表をつく幕切れに拍手!
(2004-9-4 NHK-BS2 butler)



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