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熟年オジサンの映画・観劇・読書の感想です。タイトルは『イヴの総て』のミュージカル化『アプローズ』の中の挿入歌です。

アルバート・ヘリング

2007-03-10 | Miscellaneous(オペラ等)
『戦争レクイエム』『ピーターグライムズ』『ねじの回転』『ヴェニスに死す』などで有名な、イギリスの作曲家ベンジャミン・ブリテン(1913~1976)の1947年初演の作品である。

舞台は英国の小さな村。恒例の五月祭で選出される”メイ・クイーン(五月の女王)”に相応しい、貞節のお手本となる純潔女性の該当者が今年は見当たらず、八百屋の息子のアルバート・ヘリング(中川正崇)が苦肉の策で”メイ・キング(五月の王)”として選ばれてしまう。
彼は母親(増田弥生)に束縛された仕事一辺倒の男で、風采は上がらないが真面目で純朴な青年である。
このアルバートが”五月の王”に選出されて巻き起こる騒動と、それを機に新しい窓を開けて自己を回復してゆく様が、保守的な社会を風刺して描かれている。
観劇中幾度となく、最近観たばかりのスティーヴン・ソンドハイム作曲のミュージカル『スウィーニー・トッド』のメロディーが頭を掠めていった。雰囲気は全く真逆の作品であるが、メロディーに乗せた日常会話の遣り取りが、英国的な風刺を接点にして、ミュージカル的なオペラと、オペラ的なミュージカルをリンクさせたのだろうか?

アルバートを変化させる触媒役を果たすデュエット(近藤圭、マーサ・ブレディン)、近所の腕白子供トリオ(山口清子、鷲尾麻衣、前嶋のぞみ)や、町の実力者である上流夫人レイディ・ビロウズ(エレン・ファン・ハーレン)を取り巻くクインテット ― メイド(小林紗季子)、教師(田島千愛)、牧師(青山貢)、市長(河野知久)、警察署長(森雅史)― らの重唱が楽しく、第1幕よりは「五月祭り」が始まる第2幕以降のほうが盛り上がってくる。
お盆を回して場面転換するシンプルな舞台装置だが、アルバートが酔いの助けを借りて新しい世界へ飛び出す場面では、背景の家々は回り舞台で、前面には自転車に乗ったアルバートを配して効果的であった。

研修生の成果を発表する場だから、演出の注文は場違いを承知の上で言えば、第1幕の第1場から第2場へ、および第2幕の第1場から第2場への間奏曲の際のセットを動かしながらの場面転換が間延びして面白くないし、アルバートの変化も視覚的にひと工夫して見せて欲しいところだ。

管弦楽:東京シティ・フィルハーモニック管弦楽団
ピアノ:大藤玲子
指 揮:アンドリュー・グリーンウッド
(2007-3-9、新国立劇場中劇場にて、butler)



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