1999年に「Parade」でトニー賞作曲賞を受賞し、日本にも一部熱烈ファンを持つジェイソン・ロバート・ブラウン(JRB)。彼の台本・作詞・作曲による日本初演のツゥ(2)・キャラクター・ミュージカルである。キャストは作家志望の青年ジェイミーに山本耕史、その恋人で女優志願のキャシーにNao(rhythm zone)。
公演前から、この作品の特殊性(後で述べるが)に関するおおよその情報は入っていて、これを成功させるには二人の出演者の魅力と余程の演出力が不可欠だなと、ある程度の予測はついていた。そして、結果は懸念したほうに当たった。
先ずは出演者。
山本耕史は数々のミュージカルで若いながらも経験豊富であり、歌唱力、演技力どちらも穴がない。男の狡さまでは未だ表現できておらず、軽い印象は否めないが一応標準の出来。
問題はご想像通り、相手役のNaoである。彼女は歌手らしいが、二人ミュージカルの片棒を担うには少々どころか、大いに荷が重すぎた。単に歌が上手いだけでは済まない作品の中で、何とか精いっぱい歌っているだけで感情がこもらない。更には、これは演出家の問題でもあるが、山本耕史とのバランスにおいて、舞台上で動きがぎこちない。もっと言えば、女優役なのに華がない。選ばれた彼女の責任ではないが、大いに気の毒であった。
次に演出(鈴木勝秀)。
彼の演出は青山円形劇場での『欲望という名の電車』しか観ていない。篠井英介(ブランチ)と久世星佳(ステラ)は大いに気に入ったが、この時も加勢大周(スタンレー)という大ミスキャスティングがあって、ぶち壊しであった。という訳で余り良い印象は持っていない。
さて、本題の『Last 5 Years』はジェイミーは時系列順に5年前の二人の出会いから、結婚、作家としての成功、浮気、別離までを、一部短いセリフはあるが、ほとんど歌だけで綴ってゆく。
一方のキャシーは別離から始まり、ジェイミーとは逆の時間を遡って行くわけで、意識の流れが逆行する難しさがある。
これを如何に演出したかと言えば、最初から大したことは殆どしていない。
室内と思しき窓がふたつある壁に時計が映し出されており、開演の午後7時からスタートして、最後は上演時間の1時間30分後の実時間を映し出して終わる。
途中、針を逆回しして時代が遡ることを表わしているようにも見せているが、それにも余り拘っておらず効果は薄い。
時計の針以外に、衣装、照明などで時の変化を表現したり、敢えて場所の違いを表わす工夫は一切無い。
唯一やけに強調されるのが薔薇の花で、色々な形で壁に映し出されるが、歌詞にそれらしき言葉は無かった気がする。あれは一体何だったのだろう?壁紙だとしたら随分趣味が悪い(笑)。
悪趣味ついでにもうひとつ。ジェイミーの浮気相手の女性をわざわざ窓越しに映さなくても、観ていれば解ることだ。これは説明過多の余計な演出である。
一方が歌っているときのもう一方の所作と表情も、えらく中途半端でどっちつかずだった。
この作品を先に観た某JRB研究家(?)は、「あのセットは最初から一つの部屋で、二人は室内で5年間をRPGのようになぞっていただけではないのか」との感想を漏らした。
なるほど!そう考えれば、衣装も変わらず、場所移動を暗示させる仕掛けも無いことに納得できる。
演出家の腕の見せ所とも言える二人の意識の流れが、上流からと下流から合流する「結婚式」の場面では高揚感もなく、まるで交差せずに素通りしてしまったみたいな空虚な感じも、もしかして演出家の目論見だったのだろうか。だとしたら、これはこれで成功したことになるのだろうか。
最初から余計な演出無しで、二人の経緯を時系列通りでコンサート形式でストレートにやってもらった方がいくらかドラマ性は高まったかもしれない。
(2005-7-15、シアターXにて、butler)
公演前から、この作品の特殊性(後で述べるが)に関するおおよその情報は入っていて、これを成功させるには二人の出演者の魅力と余程の演出力が不可欠だなと、ある程度の予測はついていた。そして、結果は懸念したほうに当たった。
先ずは出演者。
山本耕史は数々のミュージカルで若いながらも経験豊富であり、歌唱力、演技力どちらも穴がない。男の狡さまでは未だ表現できておらず、軽い印象は否めないが一応標準の出来。
問題はご想像通り、相手役のNaoである。彼女は歌手らしいが、二人ミュージカルの片棒を担うには少々どころか、大いに荷が重すぎた。単に歌が上手いだけでは済まない作品の中で、何とか精いっぱい歌っているだけで感情がこもらない。更には、これは演出家の問題でもあるが、山本耕史とのバランスにおいて、舞台上で動きがぎこちない。もっと言えば、女優役なのに華がない。選ばれた彼女の責任ではないが、大いに気の毒であった。
次に演出(鈴木勝秀)。
彼の演出は青山円形劇場での『欲望という名の電車』しか観ていない。篠井英介(ブランチ)と久世星佳(ステラ)は大いに気に入ったが、この時も加勢大周(スタンレー)という大ミスキャスティングがあって、ぶち壊しであった。という訳で余り良い印象は持っていない。
さて、本題の『Last 5 Years』はジェイミーは時系列順に5年前の二人の出会いから、結婚、作家としての成功、浮気、別離までを、一部短いセリフはあるが、ほとんど歌だけで綴ってゆく。
一方のキャシーは別離から始まり、ジェイミーとは逆の時間を遡って行くわけで、意識の流れが逆行する難しさがある。
これを如何に演出したかと言えば、最初から大したことは殆どしていない。
室内と思しき窓がふたつある壁に時計が映し出されており、開演の午後7時からスタートして、最後は上演時間の1時間30分後の実時間を映し出して終わる。
途中、針を逆回しして時代が遡ることを表わしているようにも見せているが、それにも余り拘っておらず効果は薄い。
時計の針以外に、衣装、照明などで時の変化を表現したり、敢えて場所の違いを表わす工夫は一切無い。
唯一やけに強調されるのが薔薇の花で、色々な形で壁に映し出されるが、歌詞にそれらしき言葉は無かった気がする。あれは一体何だったのだろう?壁紙だとしたら随分趣味が悪い(笑)。
悪趣味ついでにもうひとつ。ジェイミーの浮気相手の女性をわざわざ窓越しに映さなくても、観ていれば解ることだ。これは説明過多の余計な演出である。
一方が歌っているときのもう一方の所作と表情も、えらく中途半端でどっちつかずだった。
この作品を先に観た某JRB研究家(?)は、「あのセットは最初から一つの部屋で、二人は室内で5年間をRPGのようになぞっていただけではないのか」との感想を漏らした。
なるほど!そう考えれば、衣装も変わらず、場所移動を暗示させる仕掛けも無いことに納得できる。
演出家の腕の見せ所とも言える二人の意識の流れが、上流からと下流から合流する「結婚式」の場面では高揚感もなく、まるで交差せずに素通りしてしまったみたいな空虚な感じも、もしかして演出家の目論見だったのだろうか。だとしたら、これはこれで成功したことになるのだろうか。
最初から余計な演出無しで、二人の経緯を時系列通りでコンサート形式でストレートにやってもらった方がいくらかドラマ性は高まったかもしれない。
(2005-7-15、シアターXにて、butler)
ところでRPGって意味を教えていただけます?5年間を同じ部屋の中で演じている、という解釈ですがSummer in OhioやI'm Still Smilingはオハイオで、、Miracle Will Happenはバーの中で歌われているという設定のはずですが、演出で変えちゃったのかしら。でもそうなると歌詞がマッチしないしね。あと薔薇ですが、チラシやポスターで使われたときから不安でした(笑)。まさか舞台上でもでてくるとは。
チケットの入手が困難で素晴らしい作品を見逃すのでは、、、という懸念は見事に裏切られ、やはり日本はまだまだ「ミュージカル後進国」だなあ、と実感させられる公演でしたね。私も、どこかにレポートしようとは思っていますが、アキさんのこの的確なレポート以上のことは書けそうにありません。
それでも、自分の言葉で「本当はもっともっと素敵な作品なのですよ!」ということを訴えてみたいと思います。(あまり敵を作りたくないので言葉を選ばなければ、、、)
>クワストさん、
RPGはRoll Playing Gameだと思いますよ。。。
RPG(Roll Playing Game)云々は、クワストさんもよくご存知のかたのご意見です。
山本耕史とNaoがJRBの台本を同じ室内でなぞっているって感じでしょうか。
ですから、オハイオやバーの場を演出で変えたというよりは、むしろ無視したというほうが適切だと思います(笑)。
>Emilyさん、
この作品は演出とキャストを代えて、是非もう一度見てみたいと思っています。
Emilyさんの感想も楽しみに待っています。
こちらこそどうもありがとうございます。
本当に演出とキャストを変えて甦って欲しいですね。
その日を気長に待ちましょう!
拙文でお恥ずかしいですが、リンクしていただきありがとうございます。
Emilyさんの長文はなかなか読みごたえがありましたね。
映画大好き演劇好き・・・スマップ好き。
長年拒んできた苦手なミュージカルの作品ととして最初にこれを選んだのはまずかった。
期待していただけに・・です。
ファンになって1年・・・・・
すべて平均点より上だけど・・何だろう何かが足りない。熱演しているんだけど・・・
「リンダ・リンダ」を見た時にも感じたんだよ。これが私の耕史くんの作品を追っかける理由かも。
作品的には時が感じられなかった。
疲れが心地よくなかった。
装置・衣装ももう少し考えてほしい。
初演の彼女より演出家の力のなさに唖然としました
大阪行くのですが・・・大きな舞台なんですよ。
耕史くんというだけで買った私の責任。
キャスト・演出を変えて見てみたい・・・わかるわかる。
いい曲たくさんありましたよねぇ~
もしかして・・・コメント場違いかもしれません。
これからも楽しみにしてます。
駄文の上長々と失礼しました
コメントどうもありがとうございます。
折角ですから、大阪の夏を楽しんできてください。
驚くなかれ、梅田芸術劇場はシアターXの10倍はおおげさかもしれませんが、それくらい大きな3階まである大劇場です。
皆さんがおっしゃられるように素晴らしい楽曲ですから、眼を閉じて想像力を最大限に発揮して、心でじっくりと聴くのもひとつの手かも知れませんよ。
これからもどうぞよろしくお願いいたします。