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熟年オジサンの映画・観劇・読書の感想です。タイトルは『イヴの総て』のミュージカル化『アプローズ』の中の挿入歌です。

ヒロシマナガサキ

2007-07-30 | 映画
現在、世界各国で保有されている核兵器は、広島に投下された原子爆弾の、ナント40万個に相当すると言われている。恐ろしい数字だが、我々は核兵器に対して鈍感になっているのではないだろうか?
この映画は、そんな風潮に警告を発し、我々の目を覚ませてくれる絶好の作品だと言える。

日系3世のアメリカ人、スティーヴン・オカザキが、広島・長崎の14人の被爆者と、原子爆弾の開発と投下に関与した4人のアメリカ人の証言と、記録フィルムで綴ったドキュメンタリー映画だが、進駐軍が原爆投下数日後の惨状を撮影したフィルムは、特に悲惨な状況を写し取って生々しい。
アメリカ人の証言と日本人の証言が、乖離してゆく歯痒さはどうしても残るし、現在の平和日本の渋谷、原宿の描写が浮いてしまっているのも残念だ。しかし、それを差し引いても観る者全ての心を怒りと無念さで揺さぶるのは、60年経っても未だに癒えないケロイドではなく、被爆者の心の痛手の大きさに対してである。
戦時中とは言え、アメリカ人の日本人観の無知、トルーマン大統領の発言、いずれも驚くばかりだが、これなら罪悪感無く日本に原爆を落とせるだろうと、危うく納得してしまうところだ。
このアメリカ人以外の外国人に対する観点は、朝鮮半島、ベトナムを経て、中東をはじめ世界各地の紛争地に、未だに引き継がれているのである。

この映画を観て、僕たちは核兵器の恐ろしさを再認識し、唯一の被爆国の権利として、全世界に啓蒙してゆくべきだと素直に思う。また、そうすることが「しょうがなかった」では済まされない義務でもあり、今からでも決して遅すぎることは無い。
”One hopes it is not too late for the world to listen and learn.”

消費税率上げと共に、選挙の争点から目隠しされてしまったが、「戦争放棄」「非核3原則」の拠り所である「憲法9条」を考える上で、参議院選挙の投票日に観た最適の映画であった。
(2007-7-29、岩波ホールにて、butler)


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4 コメント

コメント日が  古い順  |   新しい順
はじめまして (hitomi)
2007-08-10 20:23:25
ぴかちゅうさんにご紹介いただきました。よろしくおねがいします。私も昨日「ヒロシマナガサキ」観ました。TBさせてください。
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御礼 (butler)
2007-09-06 10:36:33
>hitomiさん、

こちらこそ、どうぞよろしくお願いします。
TB&コメントに感謝!
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アメリカ (kimion20002000)
2008-05-01 18:05:48
TBありがとう。
ああいう、ルーズベルトやトルーマンの発言を聞いていると、パールハーバーも、開戦の口実に仕向けられ、原爆も終戦の口実にされたんだという、陰謀論に組したくもなります。
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戦争 (butler)
2008-05-04 11:01:00
>kimionさん、

良い戦争がある訳ないのと同様に、武器にも良い武器なんてあり得ませんよね。

地雷が悪魔の武器だとすれば、原爆は魔王の武器と言えるかも。人間が人間に対して使うなんて…。

TB&コメントに感謝!
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