栄光夢見て地を這う営業物語

神戸の小さなベンチャー企業の営業部長で日々奮闘しています。
将来の上場を夢見る喜怒哀楽の物語です。

上を向いて歩こうよ

2011-03-31 21:27:19 | 日記

「上を向いて歩こうよ。涙がこぼれないように」

今の僕の心境である泣きたい時はあるけど泣けない。男として。長男として。

遡ること昨年の1月に父親が会社の検診でレントゲンでひっかかった。神戸の神鋼病院でレントゲンやCTをとっても右の肺に影があるようなないような・・・。PET検診の結果,初期の肺がんでこんだけ早期発見できるのは奇跡と言われた。迷わず外科手術で右の肺を1/2摘出したのが昨年の3月。

昨年の年末ぐらいから変な咳をしだした。心配した僕達家族は神鋼病院に行って検査をしてもらったのが今年の1月20日。レントゲンやCTの結果異常なし術後,咳が出ることはあるよと言われひとまず安心。2月になっても咳が治まらない。むしろ酷くなってる感があったので病院へ行く。2月16日の時点で咳止めの薬の種類が変わった。2月24日にまだ治まらないので病院へ。1月に撮影したレントゲンを見る限り異常はないし,肺がんの初期で完全に摘出したので転移は考えられないと言われた。がん患者は年1回PET検診でがんの再発をチェックするので今月半ばにPET検診を受けた。昨晩仕事でしてると自宅から電話。夜21時半に病院から電話があり,明日すぐに来てくれといわれたらしい・・・。4月6日にPET検診の結果発表だから良くない結果だろうと容易に推測できた。

今日病院へ父親と僕達家族で行った。最初に血液検査とレントゲンを撮影するように指示された。僕は新入社員研修中だったので,電話で指示をしながら,イライラしながら待った。主治医によばれて診療室へ。

「派手な所見になっています・・・。最近しんどくないですか?」

結果さっき撮影したレントゲンを見せられて驚いた。右の肺が真っ白何も写っていない。手術で半分摘出したが半分はどこに行った?のこり半分に6センチを超える癌が再発していたらしい・・・。1月20日には何もなかったのに・・・。執刀医師も完全に摘出して,超早期発見なので,再発する可能性は20%でほぼ治るとの見解で,医師自身が驚いている・・・。

何もしないでいるともって2ヶ月の余命・・・。抗がん剤治療いわゆる化学療法を提案された。父親は僕の結婚・独立なども加味して「あと2年生きたいです。」と懇願した。抗がん剤が効けば数年延命できるとのこと。肺がんに有効であると言われている抗がん剤イレッサの投与を希望したが,父親の遺伝子では適用できないらしく,シスプラチンタキソテールの併用になるらしい・・・。コンサル時代病院を担当し,医師と共にかって癌の書籍を企画した。化学療法も取り上げたので抗がん剤の有害事象が恐ろしい・・・。

何で咳が止まらないのに2月にレントゲン撮らなかったんだ神鋼病院に対する怒りもあった。お前ふざけるなよ父親を待合室に移動するのを見計らって主治医に詰め寄った。

「初期症状でこれだけ酷くなる例はないので,予測できなかった。レントゲンも毎月撮影することは通常ないので,1月の末からここまで酷くなるとは・・・。申し訳ございません。」

と落ち度を認めた・・・。マジか・・・。

父親と母親を自宅に送りとどけ,会社に出勤した。現実逃避のため仕事に逃げたのだ・・・。新入社員は「私達頑張るので部長無理しないで下さい」と言われた。僕の部下に人材は居ない。僕の部下は人財なのだ。社長に状況を報告。僕宛に来客予定があったので対応したいと申し入れたが,

「かける言葉はない・・・。でも親御さんについて今日は仕事を忘れてくれ」

と言われた。ハンドルを握って会社の駐車場を出たとき涙がこぼれそうになって。車内は僕一人だが,バックミラーを見る振りして涙を堪えた。家では母親と父親が話しをしているだろう・・・。あえて夫婦二人の時間を作ってあげたいのもあった。家に帰るといつもの両親だった。母親はパッチワークをして,父親はTV見ながら寝転んでいた。母親が買い物でおコメを買いたいと言い出したので車で近所のスーパーへ。

夕方の町並みを車を走らせていると。母親が西日がまぶしいと言いサングラスを掛ける。

「そんな眩しいことないやろ(笑)?」

明るく突っ込んだが,母親のサングラスから涙が流れていた。もらい泣きしそうになったが,堪えた。僕は男であり,長男だ。母親と言っても女だ。父親からも男は泣くな,女の前で泣く奴は三流と言われている。

上を向いて歩こう。なんとかなるさ・・・。