偏平足

里山の石神・石仏探訪

石仏571久能山(静岡)宝塔

2015年03月06日 | 登山

久能山(くのうさん) 宝塔(ほうとう)

【データ】久能山 216メートル▼最寄駅 JR東海道本線・清水駅▼登山口 静岡県静岡市駿河区根古屋の久能山下▼石仏 久能山境内の神廟。地図の赤丸印▼地図は国土地理院ホームページより



【案内】家康の墓所がある久能山。ここに登るには海側からの表参道1159の石段か、日本平からロープウェイで行くかの二つあり、石段を登った。1159の石段といっても幅の広い緩やかなスロープなので、老若男女が風景を見ながら楽しそうに石段を登る。一ノ門をくぐり、旧博物館あたりで石段は楽になる。それでも楼門、拝殿と神社特有の石段は続き、神廟で終わる。久能山の神廟は徳川家康が眠る墓所。高さ5.5メートルもある大きな宝塔が立つ。
 宝塔は円筒形の塔身に笠と相輪がついたもの。『日本石仏辞典』(注1)から要約すると、「多宝如来と釈迦如来を本尊とするもので、法華経を説いた釈迦如来を多宝如来が讃嘆して、宝塔に招きいれたのが起こり」となる。五輪塔、宝篋印塔とともに中世より造立されてきたが、その数は少なく、近世に入るとほとんど造られなくなった。山で見ることはなく、このブログでは宝塔の一つとされている大分県国東半島の国東塔を、両子山で案内した。

 久能山の家康墓所は当初木祠だったものを、三代家光が宝塔に立て替えたものだという。その家光の墓所は栃木県日光市の大猷院。そこにも久能山と同じ宝塔が造立されている。
【注1】『日本石仏辞典』昭和50年、庚申懇話会


【独り言】山に埋もれた石造物を案内してきたこのブログですから、文化財などの尺度にかなうものはまったくなく、歴史上の名の知れた人物の登場もあまりありませんでした。ですから久能山の徳川家康墓所は特別です。ところが、これまで山で見た石仏を思い出してみたら、埼玉県の両神山に地元の人がいう徳川家康=写真=がありました。それは以前に出版された『続日本石仏図典』(平成7年、日本石仏協会)で取りあげていただいたので、このブログでは案内していませんが、今になって思うともう少し裏付けがほしい徳川家康でした。しかし山の石仏の裏付けをとるのは、話を聞く人もいないので難しいことで、ときには見当違いのことを書いたりもしていると思います。次に書くこともその一つです。
 中世から造立されてきた五輪塔、宝篋印塔、宝塔のうち、五輪塔や宝篋印塔は近世になっても墓石として造られてきました。それに対して宝塔はまったく造られていません。どうしてなのかわかりませんが、徳川の歴代将軍がこの宝塔を墓石としたことに関係があるのではないでしょうか。思うに、江戸時代になって家康をはじめ歴代将軍の墓石が宝塔になり、それに遠慮して、大名以下庶民にいたるまで、宝塔を造ることを遠慮したためではないでしょうか。


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