南部町本郷の若宮・山王神社の丸石
南部町は奥州南部氏の発祥の地、身延山参詣の道の地でした。
山王神社の入口に石祠、馬頭観音、「馬頭観世音」銘石塔2基が並んでいました。どこにでもある風景ですが、どんな祀神にも丸石が置かれているのが山梨風です。南部は静岡県に接する町ですから、丸石文化がここまできているのかという印象でした。
丸石を道祖神として祀ることは山梨ではごく普通に見られ、他の地方にもないわけではありませんが、甲府を中心とした地域では極めて多くの丸石が道祖神として祀られています。また丸石が必ずしも道祖神でなく、屋敷神はじめいろいろな祀神にも置かれているのも山梨なのです。
山梨の道祖神を研究した中沢厚氏は『山梨県の道祖神』(注1)で石祠・木祠・文字碑・双神・単神・丸石・石棒などを取りあげるなかで、丸石信仰について「現代人の思考を越えた、古代人の或る種の考えが秘められた信仰」と、石棒と同じ石器時代の生産具がなんらかのきっかけで信仰物になったものと捉えています。したがって中沢氏は丸石を即道祖神とすることに非常に慎重でした。
(注)中沢厚著『山梨県の道祖神』昭和48年、有峰書店
(地図は国土地理院ホームページより)